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いゾン日和③

 土曜日になったら宣言通りに日和の両親が来た。

 なにやら大きな荷物を抱えている。これなんですか、と聞いたら、ゾンビ用の化粧品や日和が生前に着ていた服を一式持ってきたという。

 彼らは娘に化粧を施した。青白い肌が、ちゃんとした肌色になっていて感心した。ぱっと見なら、普通の人間のように見えないこともない。そしてリボンなどが過剰なぐらい装飾されたワンピースを着ている。生前に着ていたというが、彼女がこんなに派手な服装を好むだろうかと疑問があった。


「これを着て、二人で外で遊んで来てはもらえませんか。できれば、その時の写真なんかも送ってもらえると助かるのですが」


「夜になったら私たちの家で夕食でもどうかしら。お母さんには許可をもらってますから」


 腰が低いわりに、結構ぐいぐい来る。葬式で彼らは声を出して泣いていた。一度失った娘が、ゾンビとはいえ帰ってきたのだから、はしゃぐ気持ちもわかる。


「がう」


 こちらを見つめてくる日和を見て、小さくため息を吐いた。


「それじゃあ行ってきます」


 日和の両親から二万円のお小遣いをもらい、果林は日和と出かけることになった。

 遊ぶとはいっても、あまり注目を浴びたくなかったので、どこか個室で時間を潰そうと思った。女子高生が遊べる個室といったら、カラオケしかないだろうと思った。

 カラオケの使用料はきっちり二人分取られたことを遺憾に思いながらも、そういえばゾンビ料金って聞いたことないなとふと思う。まあ来店するいゾンビなんて数も知れているだろうし、結局世の中は多数のために出来上がっているのだ。

 とりあえず日和にマイクを持たせて写真を撮って、日和の両親に写真を送る。ついでに友達にも送ってみた。それからは果林のワンマンライブが始まる。日和が部屋にあったタンバリンを持ち出し、めちゃくちゃなリズムで合いの手を入れる。マイクを口元に持っていくと、あうーあうーとうめき声を出していた。もしかしたら歌っているつもりなのかもしれない。

 喉も限界に近付いてきたので、どこかでお昼ご飯を食べようと思った。

 適当な喫茶店に入る。いゾンビはものを食べることができないため、果林は日和に見つめられながらカレーを食べた。彼女の視線よりも、いゾンビと昼食をしていることに注目する周囲の視線が不快だった。

 それからは、どこに行っても同じような視線が付きまとう。最初にカラオケを選択したのは間違いではなかったのだ。休日なのにいつもより疲労感が溜まったが、この後さらに疲れるイベントが待っている。

 日和の家族との夕食だ。

 果林は尾を引くようなでっかいため息を吐く。お気楽にあうあう言っている日和を見て、さらにでっかいため息を吐いてから、日和の両親に今から家に向かう旨をメッセージで伝える。

 日和の家は二階建ての一軒家だった。家の様子を見ても、他に兄弟がいるような気配はない。一人っ子の娘を失って、彼らがどれだけ孤独と喪失感に苛まれたのかは想像に難くない。

 ダイニングテーブルにはすでに食事が並んでいた。特別な食事ではなく、ごはんとみそ汁とから揚げとキャベツの千切りなどのごく一般的なメニューだった。日和はいゾンビなのでご飯を食べることはできないが、ちゃんと彼女の分の食事も用意してあった。

 彼らは笑顔で日和との思い出を語り始め、アルバムを持ち出して無理やり果林に内容を見せてくる。適当に相槌を打ち、彼らの話に耳を傾けていると、彼らの声が次第に涙声に変わっていく。日和のことを愛していたことが嫌でも伝わってきて、果林は居心地が悪くなる。

 この人たちは、果林が日和のことをいじめていたことを知ったら、どんな顔をするのだろう。

 そんな思いを胸に秘めて、果林は立花家を後にした。

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