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いゾン日和②

 花瓶の置かれた席に日和が座る。どうやら一緒に授業を受けるようだった。先生はちらちらと日和の様子を伺いながら授業を進めている。すでに年齢も六十に近いおじいちゃん先生だったが、いゾンビに授業をするというのは初めてのようだった。しかもその様子を教頭先生と校長先生が教室の後ろから眺めている。こいつらよっぽど暇なんだなと思った。

 すべての授業が終わり、果林が帰ろうとすると、当然のように日和が後ろをついてきた。

 果林の歩く速度と日和の歩く速度には大きな違いがあった。果林はこのまま日和を置いていこうと思ったが、果林に依存している日和を置いていくことで、日和の活動がもしも停止したら、果林が罪に問われる可能性もある。

 うざったい好奇心の視線を周囲から浴びながらも、果林は日和の歩行速度に合わせて帰宅した。



 結局彼女は、果林の住むマンションまでついてきた。家に入れることはためらわれたが、彼女の行動を阻害するわけにもいかない。

 家には誰もいないが、あと数時間もすれば親も帰ってくる。この状況をどのように説明しようか悩む。しかし悩んでもしょうがないと思ってふっきれた。

 リビングのソファに座ってスマホを眺める。その傍で、日和は大人しく立っていた。猫背で、たまに「あう」とうめき声をあげているぐらいで特になにをするわけでもなかった。


「座ったら?」


 立ちっぱなしにしておくのも悪いと思い、自分の隣をぽんぽんと叩いてソファに誘導してみる。彼女はそれに従ってソファにちょこんと座った。

 果林は彼女の様子を確認する。不健康で青白い肌、口はいつもわずかに開いていている。果林に依存しているにしては大人しすぎる。そんな様子が、生前の彼女を思い出させる。おどおどとして、積極的に会話するところをあまり見たことがない。教室の隅っこの席で次の授業の予習をしている。

 勉強なんて将来のためにするのに、その将来が訪れなかったというのは何とも皮肉だ。

 ピンポーンと家のチャイムがなった。

 モニターで誰が来たのかを確認する。四十代ぐらいの男女が二人いる。たぶん夫婦だろうが、なぜ夫婦が果林の家に来たのかがわからない。

 そして玄関のドアを開けて対応してみると、彼らはどうやら日和の両親のようだった。そういえば葬式で見たような気がする。

 彼らは家に上がって、日和の動いている様子を確認すると涙を流して喜んでいた。どうにも遺体安置所から娘がいゾンビになったことを聞き、それから果林に依存していることを聞いて、両親共々、果林の家まで足を運んだらしい。


「あの子は引っ込み思案ですから、学校で友達ができているか心配で。でもゾンビになってまで会いに来る友達がいて安心しました」


「それにとても美人さんで、私とても驚いちゃって。あの子も友達の紹介ぐらいしてくれたらよかったのに」


「はあ」


 彼らが涙を流している様子を見て、別に友達じゃなかったですけどねと心の中で付け加える。それから、彼らがどれだけ長居するんだろうな、娘と一緒に住まわせてくれなんて言い出されたら面倒だな、と思ったが、彼らは意外にもすんなりと今日は失礼しますと言って帰っていった。今日は平日なので、また休日にでも寄せさせていただきますと付け加えて。

 そのすぐ後に母が帰ってきて、事情を説明したら珍しいこともあるんだねとあっさりと受け入れられた。

 こうして、果林といゾンビになった日和との日々が始まった。

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