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38.5話 弌茄と楚のトーク画面②

―――同日、二十三時頃―――




いばら「こんばんは!」


吉井 弌茄「こんばんはー」


いばら「寝てたかな……」


吉井 弌茄「寝てた!」


いばら「私も眠れなくて」


いばら「あ、寝てたんだ!ごめんね!!」


いばら「あまりにも返信早いから起きてたのかと」


吉井 弌茄「10デシベル未満の音でもすぐ起きられるように訓練してるから」


いばら「人生で眠れた事あるの……?」


吉井 弌茄「割となんとかなる」


いばら「え、ジョークじゃない……?」


いばら「そういえば、弌茄君って覆面ライダー好きなの?」


いばら「兄に聞いたんだけど……」


吉井 弌茄「そりゃもう大好きです」


いばら「え」


いばら「誰の話?」


吉井 弌茄「え、覆面ライダーの」


いばら「あ!そうだよね!ごめん。また気絶するとこだった」


吉井 弌茄「大丈夫!?ヒナタさんこそ眠れてないんじゃ……」


いばら「大丈夫大丈夫!!で、私も好きでずっと追ってて、色んな話出来るんじゃないかと」


吉井 弌茄「いいね!周りに語れる人ほとんどいなかったから憧れてたんだ。ライダーについて熱く語れるような盟友……」


いばら「そこまで熱い路線は目指してないけど……」


吉井 弌茄「じゃあ早速語らせてくれ!」


いばら「どうぞ!」


吉井 弌茄「今アグナムのポップアップストア開いててさ。今日、めちゃくちゃ買い漁ってきたんだ」


いばら「サブマリンシティでしょ?いいなぁ~~私も行きたいんだよね」


吉井 弌茄「行こう!」


いばら「え」


いばら「あの、それは」


吉井 弌茄「家族連れも多いけど、一人でじっくり見てる人も結構いたし、ソロ参戦でも全然アウェー感無かったよ!」


いばら「………(※包丁の絵文字三連符)」


吉井 弌茄「何の暗示!?」


いばら「見たままだよ」


吉井 弌茄「一番怖いんだけど……俺何かした!?」


いばら「で、どんなグッズ買ったの?」


吉井 弌茄「Tシャツとアクスタとフィギュアと文鎮と、あとは先週に続いて四冊目のアグナムノートかな」


いばら「やっぱ週単位で買い替えるよねアグナムノート」


いばら「フィギュアは誰の買ったの?Tシャツも気になる!」


吉井 弌茄「ちょっと待ってね」


吉井 弌茄「”吉井 弌茄から写真が送信されました”」


いばら「写真!ありがとう!」


いばら「いや、手ブレ凄すぎて一つも判別出来ない……」


吉井 弌茄「ごめん。写真撮るの下手過ぎていつもこうなるんだ。これでも何枚か撮って、かなり良い一枚選んだんだけど」


いばら「アル中でももう少し落ち着いた写真撮れると思う……。風景とかでもこうなるの?」


吉井 弌茄「うん。修学旅行の時も一枚も撮らずに帰ってきた」


いばら「ただただ不憫……」


いばら「”いばらから写真が送信されました”」


いばら「憐みついでに、こないだオークションで買ったレアグッズを見せてあげよう」


吉井 弌茄「マジだヤベェ!!!超プレミアじゃないか!!」


いばら「でしょ。だから大きいガラスショーケースにこの一体だけ置いて、厳重に保管してるの」


吉井 弌茄「いいなぁ~~~~!!ここまでレアなのは無いよ俺」


いばら「もし手に入れたら見せてね!」


いばら「あ、その前にカメラの練習しないとだめか(笑)」


吉井 弌茄「くっ………」


いばら「じゃあ楽しみにしてるね!夜遅くに付き合ってくれてありがとう!」


吉井 弌茄「こちらこそ。おやすみ」


いばら「おやすみー」







「写真………写真かぁ………」


あの対決の後、しっかりワンピースを購入した私は、聖海ちゃんと別れてそのまま帰宅。早速戦利品に袖を通し、ルンルンで部屋の中をうろうろしていた。姿見が無いので洗面台の小さな鏡に上半身を映しただけだけど、それでも思わずニヤつきが止まらなかった。


そして夜になり、つい先ほどまでのRUINのやり取り。その中で、弌茄君から送られてきたブレまくりの写真を眺める。


やはりグッズは一つも判別出来ない。でも私はそれ以上に、”写真を送ってくれた”という事実にそこはかとなく興奮していた。



「え、どっかに弌茄君の手とか映ってない?足とか、あわよくば顔とか……」



不純極まりない”弌茄君(のパーツをさがせ!”を繰り広げる私。しかしキュビズムの様に歪みまくった写真では、どれがグッズでどれが体のパーツかなど分からず断念。


いや、仮に映っていたとして別にどうするつもりもないけど。どうするつもりもないよ?ないって。しつこい。


「…………はぁ、ダメか」


いや別に残念がってないって。しつこい。

溜息を吐きながらベッドへと倒れ込む。


そして再び写真を表示。

私に見せようとグッズを並べて、少しでも良い写真撮ろうと何テイクもしてたんだ、弌茄君……。


「……ふっ………ふふ………あはは……」


その様子を勝手に想像し、微笑ましさと可笑しさが胸の奥から込み上げてくる。

ふと目の前のガラスショーケースに目を向けると……想い人を笑う不躾な私の笑顔が反射していた。

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