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無能力者の成り上がり前日譚

作者: 貝柱書太郎

 「判定は火属性。能力はファイアボール!」


 司祭がそう告げた瞬間、大聖堂にいた生徒たちは一斉にざわつき始めた。


 「ファイアボールだって!?火属性の中でも特に攻撃性能が高い激レア能力じゃねーか!!」


 「さすが侯爵家の嫡男!とんでもない才能を秘めてやがるぜ!」


 「フッ…。今年の1年には面白そうなやつがいるじゃないか」


 皆が思い思いに驚きの声を上げる。無理もない。なにせ10年に1人出るか出ないかと言われているファイアボールの能力者が現れたんだからな。数々の優秀な異能力者を排出してきた名門ツヨーイ侯爵家の中でも、歴代最高と言われる逸材であるメチャ・ツヨーイ。これから学園では、自らの勢力に彼を引き込むための争奪戦が始まるだろう。…俺とは正反対のまぶしい存在だ。




 「よう無能力者!懲りずに今年も学園に通うのか?せいぜい俺らにその無能力をうつさないように隅っこで大人しくしてろよ!きゃはははは!」


 2年生になり新しくなったクラスに入って早々、嫌な奴に声をかけられてしまった。俺を馬鹿にした後、教室の真ん中で取り巻き共と騒がしくしているあいつの名は、イヌ・カマセ。カマセ伯爵家の息子で、風属性の能力を持つ実力者だ。口も態度も悪い男だが、その実力ゆえに横暴な態度がまかり通ってしまっている。やつは風属性の中でも上級能力である浮遊を、なんと20cmも行使することができるのだ。悔しいが、今の俺の実力では太刀打ちすることなど到底できない。

 自らの不甲斐なさに下唇を噛みしめていると、始業のチャイムが鳴りガラガラと扉が開き先生が教室に入ってきた。


 「諸君、進級おめでとう。今年度の担任を務めるミルメ・オワタだ。早速で悪いが、諸君に1つ重要なお知らせがある」


 教室に入って早々、先生はそう告げてきた。お知らせとは、おそらくあの事だろう。


 「来週の頭にある演舞祭についてだ。諸君らも知っての通り、この王立異能力養成学園は、国中から一握りの異能力の素質がある子供たちが集められて、能力の向上を目的とした教育が行われる機関だ。そして諸君らは王国でも1万人に1人の割合でしか生まれてこない選ばれし能力者たちである。能力に規模の大小はあれど、常人には持ちえないその特別な才能はみな国の宝であり、我が国が列国に比べても強大な力を発揮できている理由でもある。演舞祭は、そんな諸君らの能力を国内外に示すための伝統の場であり、諸君らの今後の進路を決める上でも重要な場となる。発表形式は問わない。戦闘でも何らかのパフォーマンスでもいい。学園で学んだことを存分に発揮し、素晴らしい能力の数々を見せてもらえることを期待している」


 先生がそう告げると、教室内は一気に生徒たちの熱気で溢れかえった。


 「待ってましたぁ!俺の土を一瞬でぬかるませる能力を見せつけてやるぜ!」


 「私の一瞬で物を乾かす能力だって!」


 「僕の雨を降らせる能力こそが最強さ」


 上位の能力を持つ生徒たちは特にやる気に満ちている。演舞祭で優秀な力を見せつければ、騎士団や宮廷からオファーがくることもある。生徒たちにとって演舞祭は、これ以上ないチャンスの舞台なのだ。しかし…


 「一応補足だが、演舞祭では何かしらの能力を見せてもらうことが必須となる。今までの学びの成果を測る場でもあるからな。万が一能力の行使ができない者がいたら退学となってしまうから注意するように。とはいえ、演舞祭で退学になった者などこれまで1人としていないから心配する必要はない。当然だ。能力者が集まった学園なのだからな。間違って無能力者が混じりでもしていない限り、退学者など出ようはずもないから安心するといい」


 先生の嘲るような視線が俺に向けられる。その理由は明白だ。俺は、能力者たちが集まる学園において唯一、能力を使うことができない存在なのだ…。

 王立異能力養成学園に入学した生徒たちはまず初めに大聖堂において能力の判定を受ける。通常異能力は、火・水・風・土の4属性に分類され、それぞれの属性の中で更に個別の能力が発現するのだが、俺が判定で告げられた属性は無属性。そして能力も不明であった。史上初の無属性判定者である俺は当初学園中から好奇の目を向けられ、そして何の能力も発現できないでいると、次第に無能力者と揶揄されるようになり、友達もできず周りから馬鹿にされる日々を送っていた。

 それでも何とか能力に覚醒しないかと1人でこっそり訓練は積んでいたのだが、いまだに能力を使うことはできていない。たまに能力が発動したらしき感覚になることもあるが、それも多少体が温まるような気がするといった程度のもので、目に見える結果を出すことはできずにいる。これまで周りからの侮蔑に耐え、自分の可能性を信じて頑張ってきたが、演舞祭で能力を行使することができなかったら退学となってしまう。もう、これまでなのか…。演舞祭に向けて浮足立つ周囲の喧騒をよそに、俺の心は深く沈んでいった…。




 演舞祭のことについて頭を悩ませながら廊下を歩いていると、向かい側からファイアボールの神童メチャ・ツヨーイが歩いて来るのが目に入った。俺もあいつのようにとんでもない能力を持って生まれてきていれば、もっと輝かしい人生になっていたのだろうか…。新入生相手にそんな情けないことを考えている自分に嫌気がさし、彼の横をさっさと通り過ぎようとすると、


 「ちょっと待ってください!もしかして、マネ・ジツハ先輩ですか?」


 ツヨーイに声を掛けられた。俺が突然のことに驚いているとツヨーイが言葉を続けてくる。


 「初めまして。私は1年生のメチャ・ツヨーイと申します。急に話しかけてしまいすいません。あなたがあの、無属性のマネ先輩だとお見受けしてつい…」


 どうやら俺の噂は新入生にもすでに広まっているらしい。噂の無能力者に興味を持って話しかけてきたというところか。


 「ああ。確かに俺がマネ・ジツハだけど。俺に何か用か?」


 「いえ、用という程のことはないのですが…。ずっと話してみたいと思っていた無属性の方にお会いできて嬉しくなってしまい話しかけてしまいました。ご迷惑だったでしょうか…?」


 「別に、迷惑というわけではないけど…」


 ツヨーイの意外と腰の低い態度に困惑してしまう。


 「今度の演舞祭、ジツハ先輩も出場されるんですよね。無属性の能力、拝見できることをとても楽しみにしています!」


キラキラとした瞳を向けてくるツヨーイ。俺の能力を楽しみにしているだなんて、下手に出ているように見せかけてからかってきているのか?いくら馴れているとはいえ、初対面の後輩からこんなにも面と向かって馬鹿にされると流石に腹が立ってくる。


「お前、俺が何て呼ばれているのか知らないのか?」


侯爵家の息子に対して、つい乱暴な口調で話してしまう。


「『無能力者』ですか…?普段は能力を隠してライバルたちに手の内を知られない様にしているんですよね!」


こいつはどうも煽りスキルが相当に高いらしい。


「でも、演舞祭では必ず能力を披露しなくてはいけません。ついに無属性の能力が披露されると思うとワクワクします!」


いい加減俺も我慢の限界を迎えそうだ。俺だって頑張っている。他の優秀な能力を持つ生徒たちに比べても人一倍の努力をしているはずだ。それなのに、いつもいつもいつもいつも!どうしてこんなにバカにされなきゃならないんだ!クラスメイトからも先生からも嘲笑され、挙句の果てにはエリート新入生にまで煽られる始末。俺が何をしたっていうんだよ…!


「いい加減にしろ!」


気づいたらそう怒鳴っていた。


「無能力者を揶揄して楽しいか!?お前はファイアボールっていう大層立派な能力が発現していい気になっているかもしれないが、それが他人を貶めていい理由になると思っているのか!俺だってな、好きで無能力者でいるわけじゃないんだよ!頑張ってるんだよ!そんな気も知らないで馬鹿にしやがって…。少しは持たざる者の気持ちも考えてみたらどうなんだ!」


今までの溜まりにたまった鬱憤が爆発する。どうせ演舞祭を最後に学園から追い出されるんだ。もうどうにでもなれ!まぁ、こんな必死に訴えかけても弱者の言葉なんて、お前ら強者は負け犬の遠吠えだと言って笑うんだろうな。そう思う俺の予想とは裏腹に、ツヨーイの反応は意外なものであった。


「先輩ほどの才能を持つ人が、何をそんなに取り乱しているのですか…?」


俺の言葉に本気で困惑している様子だ。


「マネ先輩は無能力者ではなく、れっきとした無属性の能力者です。遠い昔の、それも極秘の資料であるため公にはなっていませんが、過去にも1例だけ無属性能力についての記述があります。その内容を見るに、先輩の持つ能力はとんでもないものである可能性が高いのですが、その様子だと、本当に自覚されていなかったようですね」


「え…?」


想像の斜め上すぎるツヨーイの言葉に驚く。彼の眼は真剣そのもので、とても俺のことを馬鹿にするためのでっち上げを言っている様には思えない。


「なるほど。これは、想像以上に面白い展開になりそうですね」


ツヨーイはそうつぶやくと、俺の肩に手を置き、「信じてください。先輩は必ず凄い能力を使うことができますから」と言い残して去っていった。




演舞祭当日。生徒たちの能力披露の舞台は大いに盛り上がっていた。特に学園の四天王であるエレメント4が登場した際は、一際大きな盛り上がりを見せた。


「咲き誇れ、花よ!」


土のエレメント4ハナ・サクヤがそう唱えると、突然地面から花が現れた。


「なんて美しい能力なんだ!」


「流石、エレメント4の紅一点。使用者も能力もとても美しいですわ!」


観客たちからはサクヤの美しい能力をほめたたえる声が挙がる。確かに花を咲かせるという彼女の能力は視覚的に美しいが、その真価は別のところにある。


「ぶぇっくしゅん!」


「目が!目がああああ」


「鼻水が止まらねぇよぉぉぉぉ」


KAHUNである。サクヤの生み出した花からは、特定の相手に絶大なダメージを与えるKAHUNという物質が分泌されているのである。その美しい見た目を隠れ蓑に、とんでもない物質をばらまくのだから、彼女の能力は学園屈指の凶悪性を秘めていると言われている。




「浮遊!」


そう言って、風のエレメント4ウキ・シューイが浮き上がると、会場は大きなどよめきに包まれた。


「なんてことだ!彼は今、空中に浮いているよ!」


「浮遊はかなりレアな能力だぜ!しかも…」


「ああ…!高い!!50cmは浮いているんじゃないか!?」


シューイの浮遊に対して驚嘆の声があがる。そう、なんと彼は浮遊を50cmという驚愕の高さまで発動することができるのだ。高さは強さだ。戦闘において高い位置を取ることは戦いを有利に進めるための定石であり、それが、ただの地面から急に50cmも浮くことができるともなると、そんなのもうチートである。シューイにはどんな攻撃も届くことは無く、高い位置から繰り出される彼の攻撃を避けるのは至難の業だ。卒業後は騎士団への入団が確実視されている。




「あいつ正気か!?服を着たまま水の中に入っていったぞ!」

「そんなことをしてしまったら濡れた服が邪魔になって、まともなパフォーマンスなんてできるはずもない!」


「い、いや!あれを見ろ!水の中なのに、陸地と同じくらいの動きを見せているぞ!」


「なんてやつだ!水中にいても、動きのキレがほとんど落ちてないぜ!」


水のエレメント4ミズキ・ハジケの見せる驚愕のパフォーマンスが観客たちの度肝を抜いていた。彼は水をはじくことができる能力者であり、その能力を利用して水中で自分にのみ陸と同じような動きの自由を与えることができる。こと水中戦においては比類する者がいないほど最強の男だ。彼はその能力のあまりのチート加減さゆえに、100M自由形15秒というとんでもない記録を保持している。




「あれ…?なんだか暑くない?」


「確かに。まだ春も始まったばかりなのにまるで真夏のような暑さだ」


「上着脱ごうかしら」


彼の登場によって文字通り、会場の空気は一変した。火のエレメント4マッチ・アツオの発熱の能力によって、会場の温度が30度と、真夏日並みの気温にまで引き上げられたのである。広範囲にわたって気候にまで影響を与えてしまう彼の能力は周囲に絶大な影響力を及ぼし、急激な気候の変化は生徒たちの体調面や服装面にとても大きな負荷をかけてしまう。そのため普段は学園から能力の行使に制限をかけられているほどの怪物級能力だだ。人一人の力で気候変動までも引き起こしてしまうのだから、この学園のトップたちはスケールが違いすぎる。




エレメント4たちの活躍によって今年の演舞祭も大盛況となっている中、ついに俺の出番が回ってきた。ツヨーイの言葉とは裏腹に、結局俺の能力が発現することはなくこの日を迎えてしまった。しかも、誰の画策かはしらないが、俺の発表方法はクラスメイトであるイヌ・カマセとの戦闘形式に決定していた。大方、将来を有望視される能力者が、無能力者と揶揄される俺をいたぶる様を見て楽しんでやろうという魂胆なのだろう。しかし、俺だってただでやられるつもりはない。能力が発現しない分、体は人一倍鍛えてきたんだ。いつも馬鹿にしてくるカマセの奴に一矢報いてやる…!


「イヌ・カマセ。マネ・ジツハ。両者前へ!」


俺たちの名前が呼ばれると、会場は異様なざわめきに包まれた。


「彼が噂の無能力者か…」


「対戦相手は、カマセ家の息子か。次期風のエレメント4と期待される逸材ではないか」


「そんな2人でまともな試合になるのかね」


「なーに。これはそういうショーだろう」


「あぁ、なるほど…」


どうやら観客の中で俺に期待している人は端からいないみたいだな。いや、1人だけいたな…。どっかの天才君に失望されないよう、やれるだけのことはやらないとな。

しかし、この俺の決意は試合会早々にあっけなく砕かれることになる。


「試合開始!」


審判の掛け声とともにカマセはすでに動き出していた。


「浮遊!」


そう言ってカマセは地面から40cmほど浮き上がった。シューイに迫るレベルのカマセの能力に会場がどよめく。カマセの奴、大幅に能力が進化してやがる…!


「きゃはははは!よう無能力者!ずいぶん気合入ってるみたいだが、この位置にいる俺様までテメーの攻撃は届くかな?きゃはははは!」


カマセの高笑いが響く。以前までの20cmほどの浮遊であれば、何とかギリギリ俺のリーチでも攻撃を届かせること会できた。しかし、これほどの高さで宙に留まられると、もはや為すすべがない…!試合開始30秒もしないうちに、俺の決意は圧倒的な才能の前に無力となってしまった。


それからの展開は一方的なものだった。空中に陣取ったカマセは地の利を生かして投石で攻撃を仕掛け、それに対して俺は逃げ回ることしかできなかった。俺も鍛えた足腰でなんとか石を避けて回るが、それでも全てを避けきることはできずダメージが蓄積していき、ついにぶっ倒れる寸前まで追い込まれてしまう。


「もう逃げ回るのはやめたのか?無能力者ぁ」


カマセがとどめの一撃を与えるため、地面に降りてこちらに向かってくる。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


もう、限界だ…。これ以上はもう無理だ。くそ…!こんな!こんな何もできないまま終わってしまうのか!ずっと無能力者だと馬鹿にされ続けて、ここまで追い込まれても結局何の能力も発現させることができないまま終わってしまうのか…!


「これで止めだぜ!きゃははは!」


「くっそぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


カマセの大きく振りかぶった蹴りが俺を捉えようとした瞬間-!その刹那、俺の体は宙に浮きあがり、カマセの蹴りは空を切っていた!


「な、てめぇ!何をした!?」


突然の出来事に、カマセが驚愕の表情を浮かべる。何が、どうなってるんだ…?俺は今、どうして空中に浮いているんだ?これはまるで…


「俺様の能力をパクりやがったのか!?」


パクる。カマセがそう言った瞬間、俺は何かをつかんだ気がした。パクる…。つまりはマネる…。この不思議な感覚。今まで全く自覚をすることは無かったが、まさか無属性の俺の能力って…!


「何をしたかは知らないが、ちょっと浮けたくらいで調子に乗んじゃねー!てめぇの浮遊は見たとこせいぜい20cm程度。高さの優位はまだまだ俺にあるんだ!俺に勝てるとか勘違いするんじゃねーぞ!」


そう言ってカマセが再び浮き上がる。しかし、


「20cm差なら、ギリギリ届くぜ!!!」


「何っ!?ぐぁぁ!」


ついに初めて俺の攻撃がヒットする。もともとカマセとは20cm差つくことを見越して上段蹴りの特訓をしていたのだ。


「この俺様が…無能力者に一撃食らうだなんて…。くそくそくそくそくそくそくそくそ!!!調子に乗ってんじゃねーぞ雑魚がぁぁぁぁ!!」


俺に一発受けたカマセが激高する。


「遊びは終わりだ。ここからは本気で相手をしてやる!!」


その宣言通り、カマセの攻撃の手数が数倍に膨れ上がった。これまでよりも投石の数が増え、更には俺との位置関係が狭まったことにより、蹴りでも攻撃してくるようになった。浮遊の能力を発現させられたとはいえ、カマセの言う通り、高さの優位はまだ向こうにある。カマセの攻撃を捌ききることができず、俺はじりじりとまた追い詰められていく。

しかし、この確信めいた予感は何だ…?浮遊の能力の他に、もう一つ能力発動の予兆を感じる。これはまさか…。


すると、観客席の中から、あの神童の声が聞こえてくる。


「せんぱーい!私の能力もぜひ使ってくださーい!!」


…やっぱりか。この予感はやはり…。


「おらおら、どうした!?やられっぱなしか?さっきみたいに攻撃して来いよ!それができればの話だがな!きゃはははは!」


 カマセは攻撃の手を緩めることなく、どんどん俺にダメージを与えてくる。この圧倒的不利な状況から逆転するためには、もうこの予感にかけるしかない…!

 俺は両手を合わせ、手の平から何かを打ち出すような構えを作る。


 「な!てめぇまさか!その構えは…!?」


 今までの借りをいまここで、全て返させてもらうぞ…!カマセ!!!


 「うぉぉぉぉぉ!!ファイアボール!!!!」


 「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 俺の手から放たれた火球がカマセを襲う。とっさの事態に反応できずファイアボールが顔面に直撃したカマセは戦闘不能に陥った。俺の発動したファイアボールはオリジナルに比べると威力は控えめだったが、それまでの能力行使の疲労や、俺が与えた蹴りのダメージが重なり、カマセの意識を刈り取るまでに至った。

こうして大多数の予想を裏切り、この戦いは俺の勝利で幕を閉じたのだった。


 「なんだあいつは!無能力者ではなかったのか!?」


 「風と火、二つの能力を行使しただと!?」


 「しかも伝説のファイアボールまで…!何者だ!?」


 予想を裏切るこの結末に会場は驚愕の嵐に包まれていた。無理もない。無能力者だと思っていたやつが突然能力を2つも披露したんだからな…。自分でもまだ実感がわかない。このどよめきの中心に俺がいるなんて、なんだか不思議な気持ちだ。だが、無能力だと思っていた自分の能力にこれでやっと確信を持つことができた。おそらく俺の能力は、他者の能力をまねることができるコピー能力だ。

 これまで無能力者だと馬鹿にされ続けていたが、これからはこの能力で成り上がってやる!これまでずっと鬱屈した現状に希望を見いだせないでいたが、今日をきっかけに未来に一筋の光が差した。これからも様々な壁にぶち当たるとは思うが、このコピー能力でどんな困難でも乗り越えてやる!!俺の戦いは、まだまだ始まったばかりだ!!


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