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マリーニ街

 マリーニ街に到着した。川があり、橋を渡る。中世ヨーロッパのような街並みの情景だ。統一された赤茶色の瓦屋根と石造りの家々。舗装された石畳の道。


 俺は周囲を見渡した。エルフやドワーフいろんな種族が街中を歩いている……。本当にファンタジー世界だ。


  俺達はマリーニ街の冒険者ギルドへ向かう。


 冒険者ギルドに到着した。冒険者ギルドに入ると奥のカウンターに並んでいる受付嬢から挨拶を受ける。カウンターの横にはたくさんの貼り紙が貼り付けられた大きな掲示板が立っており、傍らには複数の丸テーブルと椅子が並んでおり、冒険者たちが打ち合わせをしている。


 受付は獣人らしい。猫耳を可愛らしく揺らしながらシオリとマノに声をかけた。



「はい、確かに。ヒーリングマッシュルーム10本採取。クエストの完了を確認しました。ご苦労様でした」


 猫耳獣人の受付はそう言うと手際よく、キノコの数を数えた。


「ヒーリングマッシュルーム20本。依頼より多いですね」


 そう言い、奥の部屋に入って、しばらくしてトレイを持って戻ってきた。


「こちら報酬の二万リーニアフランです」


 リーニアフラン、この国の通貨だ。


「そちらの方は?」


 猫耳獣人の受付は俺を見ながら尋ねた。


「彼女たちのクエストを手伝った通りすがりの人ですよ」


 俺はそう答えた。


「そうですか」

「あ、フレイムウルフの買い取り、お願いできますか?」


 シオリが受付に尋ねた。


「はい、フレイムウルフの買取ですね」



 フレイムウルフの買い取りの手続きを行っている最中だった。


「おい、そこのねーちゃん、そんな弱そうな奴の相手なんかしてないで俺達の相手をしてくれよ」


 そう言いながらチンピラがシオリの横のカウンターにもたれかかり、取り巻きが俺達を囲む。


 猫耳獣人の受付が苦笑いした。


 取り巻きが


「夜まで楽しんでやるぜ」


 とクックックッと笑う。


「「いやです」」


 シオリとマノが即答し、ハモた。


「いい男を見つけられなかったか?」


 室内で笑いが巻き起こる。


「俺は友人たちに会いに来ただけだ」


「なぁ、いいだろう?こんな弱そうな奴より俺の相手をしろよ」


 別のチンピラが俺に近づき


「おい、そこの大して魔力を感じない弱そうな奴!」


 と言いながら俺の胸ぐらを掴む!


  他のチンピラの一人がシオリの腕を掴んだ。同時にマノの背後からもう一人チンピラが現れて、マノの背後から抱きつく。その瞬間、マノは、かかとで相手の足を踏みつけ、頭突き。そして腰で思いっきり突き飛ばした。

  俺は左腕を相手の肘に振り下ろす。相手の体勢が崩れ、左手で相手の顎を掌底打ち。そして両手で相手の頭を掴んで捻り、相手を倒す。

  俺がシオリの方に振り向くとシオリは思いっきりチンピラの股間を蹴り上げた。男はものすごい悲鳴を上げてその場に倒れ、うずくまった。


「あっちに行って!」


  ほぼ同時に起きた出来事だ。

  冒険者ギルド内にどよめきが発生した。


「次、倒されたい奴は!」


 俺は先ほど笑った冒険者たちの方を見て言った。冒険者たちは慌てて目を逸らす。ギルド職員と警官らしき人物が俺達の方へ駆け寄ってきた。



 冒険者ギルドの受付に報告を終え、報酬を受け取った。


 シオリとマノが受けたクエストの報酬(多く採取した分、追加で報酬が出た)を受け取り、そこからクエストを手伝ってくれたお礼として五千リーニアフランを俺に。倒したフレイムウルフの買い取りで四万リーニアフラン、その内の一万五千リーニアフランはシオリとマノで半分。残りは俺が受け取ることになった。


 本当は元の世界から持って来た金を売る予定だったが、臨時収入を得ったので、しばらくはこの世界で暮らしていける。


「本当に受け取っていいのか?」


「ええ、構いません。フレイムウルフのほとんどを倒したのは、あなたですから。私たちが倒したのは三匹だけですし、それに私たちのクエストを手伝ってくれましたしね」


 マノは答えた。


「そうか」


 俺は答えながら冒険者ギルドを後にした。


 背後から


「また会えませんか?」


 とシオリの声。


 振り向くとシオリは嬉しそうな表情だった。どうせ、偽の笑顔だろう。


 俺はフードを被って、街を探索しつつ街を歩いた。市場には屋台が密集しており、様々なものを販売している。


 女性が目の前に現れ、話しかけてきた。


「ねぇ、ねぇ、そこのお兄さん」


 俺はその声を無視して通り過ぎた。しかし、女性はしつこく、つきまとい俺に話しかけてきた。客引きのようだ。


 店や料金の説明を続ける。


「お兄さん、私とイイことしない?いいでしょ?」


 女性は俺を追い越し、俺の目の前に立った。被っていたフードを脱がす。


「へぇー、イイ顔してるじゃないの」

「どんなサービスを提供する店だ?」

「変な店じゃなくてね。時間はたっぷりあるでしょう?」

「いや、ない」

「今ならお得にイイことができるクーポン券を配布するわよ。だからーー」


 俺はわざとらしく、ため息をつきながら女性の言葉を遮った。


「お前はどっちの人間だ?俺を裏切る者、死ぬ者と……。お前の場合は前者だろうな!」


 俺が信頼する(していた)人間は二つに分けられる。俺を裏切る者、死ぬ者と。


「何よ! せっかくイケメンだからイイ思い出を作ってあげようとしたのに……ッ」

「俺がイケメンに見えるのなら、お前の目は腐っている」


 そう告げ、俺は足早にその場を去った。


  五分ほど、経過した時だった。T字路を曲がった先に捜査の現場と盗賊と思われる人たちが連行されていく光景が俺の目に入った。近寄ってはいけない雰囲気を漂っている。


 俺は立ち止まった。


「来い」


 俺の背後から、誰かが言った。振り向くとフードを被った男が横切った。俺は声をかけた男について行くことにした。男は周囲を警戒しながら路地へ。


「何があった?」


 俺は男に尋ねた。


「盗賊だ……。初めての見る顔だな。この辺の住人か?」

「チェルガン帝国に行く途中だ」

「なるほど。別の場所で話したい」

「揉め事は避けたい」


 俺がそう言うと男はマントをめくり、自身の腰のホルスターの収められている拳銃をチラつかせながら


「一緒に来い」


 聞き覚えのある声だった。その男は冒険者のような服装で黒いマント、黒いフレームのメガネを身につけている。年齢は俺と同じぐらい。身長は160センチ前後。茶色の瞳、特徴的で眉毛が濃い。

 相棒の佐藤進に酷似していて、小柄な青年という印象を受ける。俺は確信した。だが、レッドストームのクズが相棒に化けている可能性もある。


「名前は?」


 男が尋ねた。


「ヴァルター。お前は?」

「キール」

読んでいただきありがとうございます。

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