表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/31

クエストの手伝い

 倒したフレイムウルフをすべて処理し、森の中を歩いていると


「ヴァルターさん」


 シオリが話しかけてきた。


「なんだ」

「マリーニ街には初めての行くのですか?」

「そうだ。友人たちと会うんだ」


 その友人たちが別の世界の時間警察日本支部エージェントなんて口が裂けても言えない。


「そうなんですね」


「その友人たちとはどのような関係で?」


 マノが尋ねた。


「昔のパーティメンバーさ」


 シオリは目を輝かせながら俺の話に耳を傾ける。


「君たちはどうしてマリーニ街に?」

「ある人を探しているのです」


 シオリが答えた。


「クエストの途中でしたが……」

「すまない、俺のために」

「いえ、大きな戦果ができたので」

「でもクエストの内容を完了していないから、クエストの報酬が出ないわ」


 マノがそう指摘した。


「そうでした……。ヴァルターさん、もし、よろしければクエストを手伝ってくれないでしょうか?」


「ああ、かまわない。その代わり、俺がフレイムウルフに襲われていたことは秘密にな」


 俺はクエストを手伝うことに。クエストの内容は回復効果のあるキノコの採取だ。


「ヒーリングマッシュルーム」


 マノは最初、ドイツ語ーーいや、チェルガン語で言ってからムー世界標準語に言い直して答えた。


「今のチェルガン語か?」


「そうよ」


  マノの話によると、回復ポーションの材料になり、回復ポーションはどんな怪我でもすぐに治せるらしい。そのキノコは鮮やかな青色で暗い場所では青白く発光するそうだ。


 マノがバッグから小瓶を取り出し、青く発光する液体が入った小瓶を俺に見せながら


「これが、回復ポーションよ。魔法が使えない時や緊急事態のために常備しているの」


「これ、放射能入ってないよな?」


 俺は二人に尋ねた。


「「ほうしゃのう?」」


 マノ、シオリが頭を傾げた。


 ヤッベ……。


「いや、なんでもない……。もしかして、あれか」


 俺は木に生えたキノコを示して尋ねた。


「そ、それ毒キノコ……」


 シオリが言った。


「……」

「先に言うべきでした。ヒーリングマッシュルームに似た毒キノコがあるのです! くきが細いのが毒キノコ、ペインマッシュルームです!」


 シオリが慌てて言った。


 苦痛キノコか。


「そうか」


 俺は言いながら足元にあった。小石を拾い、毒キノコめがけて投げつけた。


 採取クエストは15分程で完了した。クエストの依頼よりも多く採取できた。後はこれをマリーニ街の冒険者ギルドへ持って行くだけだ。


 森から草原に出た俺達は街道を歩きながらマリーニ街を目指した。マリーニ街に向かっている間、俺は今の状況を考えた。


 ムー世界で通信が途絶えた調査隊の捜索を一人で行うことになった俺はムー世界に転移。通信が切断され、島流しにされた。

 森の中でフレイムウルフに襲われ、負傷。二人の美少女二人ーーいや女神だ。に助けられ、負傷した左腕、右脚を治癒魔法で治療してくれた。ついでにめまいと吐き気も消えた。


 俺の所属する【時間警察】は、時代を管理し、史実をねじ曲げ歴史改変を行う時間犯罪者を取り締まり、大規模な歴史改変の修復を行う機密組織だ……。

 なんで、史実を守る時間警察が異世界の調査なんかをしなければならないんだ……。そうだ、この世界にレッドストームが存在するかも知れないからだ。


 ムー世界に存在していると思われる武装歴史改変組織【レッドストーム】はその名の通り、武装した組織であり、自分たちが理想とするパラダイスみたいな世界を創造するために大規模な歴史改変を行う最低な組織だ。

 主に20世紀から21世紀にかけてのソ連・ロシア系兵器を中心にドイツ、アメリカなどの兵器、【改変世界】(大規模な歴史改変された世界)から盗み出した兵器、例えばドイツのパンテル(ツヴァイ)中戦車などで武装している。彼らの犯罪で多くの仲間、親友も失った。俺に残ったのは憎悪だけだ。


 俺は任務の内容をもう一度思い出す。

 通信が途絶えた調査隊の捜索とムー世界の情報収集の二つだ……。あとレッドストームのクズどもが存在するならば排除する。

 なぜ、一人なのかと言えば、表向きは、これ以上仲間を失いたくないからだったが、実際は仲間を失って一人になるのが怖いからだ。


「ヴァルターさん?」


 俺の思考はシオリの声によって現実に引き戻された。


 二人の美少女の後方を歩いていた俺はシオリに視線を合わせた。


「一人で、ずっと黙っていたから……」

「えっ? いや、考えることに集中していたんだ」


 俺がそう答えた時だった。


 スライムが数匹現れた。ファンタジーに興味がない俺でも分かる定番の雑魚モンスター。全身が青色半透明の不定形モンスター。


 シオリが鞘からナイフを抜いて構えた。マノは杖を構える。俺も鞘からナイフを抜き、構えた。突然、スライムの一匹がシオリの方へ飛び跳ねた。シオリは構えたナイフをスライムに突き刺す。


「スライムの核を刺して」


 シオリが俺に向け、言った。


「了解した」


 俺はスライムにナイフを振り下ろした。


 何匹かのスライムを倒した時、赤いスライムが現れた。亜種だろうか?


「レッドスライムです!」

 マノがそう言いながら杖をレッドスライムに向け、大量の水を放った。

 大量の水を浴びたレッドスライムはその場で静止し、悲鳴のような声が響いたと同時に消滅した。


 五分も経たないうちに戦闘は終わった。予想通り雑魚モンスターだった。


「これで借りは返した」

「借り?」


 シオリが尋ねた。


「なんだ、これじゃ釣り合わないか?」

「もしかして、さっき、助けたのを私たちが借りにしていると思っています? そんなことはしません」


 美少女二人に助けられた自分が情けない。どうせ、後で見返りを求められて、最終的に元カノのように裏切られるんだ。早く調査隊を見つけて、この世界からの脱出方法を見つけなければ!


 俺は自分の部隊の隊員を連れてこなかったというミスを犯した。これ以上仲間を失いたくないからだ。本当に俺は特殊部隊の隊長に相応しいのだろうか……? 自問自答を繰り返すうちに街が見えてきた。


「ヴァルターさん! 歩くのが早いです……!」


 どうやら俺は一人で考えているうちに先に歩きすぎたそうだ。俺は無理やり彼女らのスピードに足を合わせた。

読んでいただきありがとうございます。

面白ければ、ブックマーク、評価お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ