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レッドストーム秘密基地

 俺は村の外に集められた武器や兵器の一つ、撃破されたパンテルⅡを眺めながら考えた。


 基地まで、どうやって向かう? ヘリは持ち込めないし、徒歩かドラゴンーーは無理だな。奴らは、この村を攻撃した時、”テレポート強襲”を使った。テレポートを使うのは、どうだろうか? 


「なんじゃ、ここにいたのか、捜したぞ」


 振り向くと、ゲーレンが銃剣を取り付けられるように改造した魔力小銃のレーナを抱えている。


「代金は?」

「要らんよ、お前さんは、この村を救ったんだ」

「それは違うな、これは陽動だ。見てくれ、このパンツァーカンプフヴァーゲンを」


 ゲーレンがパンテルⅡに目をやると言った。


「チェルガン帝国にそんなーー」

「向こうの世界、ドイツの戦車だ」

「なら、この銃は分かるか?」


 ゲーレンが地面に並べられているドイツ製アサルトライフルを指さした。


「MP47、ドイツ最高の銃の一つだ。これはーー」

「それ以上喋らせるな。こいつに喋らせたら、一時間以上拘束されるぞ」


 聞き覚えのある声が俺の言葉を遮った。顔を向けると黒ずくめのクレ部隊とハリマ部隊の隊員達が近づいてくる。


「やあ、拓馬」


 クレ部隊の隊長、岡野和也が言った。

 彼の曾祖父は戦艦大和の乗組員で、俺の曾祖父と親友同士だった。和也とは時間警察に入る前から面識があり、秘密基地内で偶然、再会した。歳の離れた兄のような存在だ。

 ハリマ部隊とは、すれ違いが多く、あまり面識はない。


「君の装備だ」


 言って、ダッフルバッグを地面に下した。クレ部隊の隊員の一人もガンケースを地面に下した。

 俺は片膝をついて中身を確認した。俺のフル装備にHK416アサルトライフル、9×19ミリパラベラム弾もある。


「装備はすべて揃ったな?」


 和也が尋ねた。


「ああ、ありがとう。見てくれ、これを」


 俺はドイツ製戦車を示した。


「Ⅳ号戦車K型にⅤ号戦車パンテルⅡだぞ。第二次世界大戦が1946年以降も続いている改変世界の戦車だ」

「驚いた。君がミリオタだったとは」


 ハリマ部隊の隊長、前田淳が言った。


「正確にはドイツ軍オタクだ」


 進が近づきながら、訂正した。


「進? 本当に佐藤進か?」


 和也が嬉しさを滲ませた声で聞いた。


「本物さ」


 進が答えると、隊員達が一斉に歓声を上げた。


「進、お前の装備だ」


 言って、クレ部隊の隊員がダッフルバッグを進に渡した。


「奴らの戦車を殴るなら、パンツァーファウスト3を持ってきて正解だな」


 淳が言った。

 和也は周囲を見渡すと言った。


「ムー世界の概要は聞いた。聞けば聞くほど、誰かが元の世界を元に”複製”したようにしか見えない」

「それで、あんたは?」


 淳がドワーフのゲーレンに尋ねた。


「わしはマリーニ街で武器屋を経営しているゲーレンじゃ。あんたらは?」

「この世界に居てはいけない存在、とだけ言っておこう」


 淳が答えた。


「基地を襲撃するそうだな?」


 和也が俺に尋ねた。


「ああ、そうだ」

「進はエージェントで特殊部隊の隊員じゃないが、実力は知っている」

「俺も異論はない」


 淳が同意した。

 ギフ部隊、クレ部隊、ハリマ部隊、シオリ達で簡単な自己紹介を済ませた。

 臨時で進を隊長にマモル、ハンス、マノで協力者の部隊を編成した。便利上”タジミ部隊”とした。


 情報を共有、作戦を立てた。

 移動手段についてリンに相談すると転移魔法陣がある遺跡について教えてくれた。この情報は転移魔法陣で基地に接近してしまい、命からがら逃げ帰った冒険者から得た情報だそうだ。


 計画はこうだ。

 ここから馬車で行けるところまで行き、そこからは徒歩で転移魔法陣がある森の中へ向かう。

 そこから転移してレッドストームの基地へ向かい、基地を魔法で爆撃、襲撃する。



 リンが『爆撃魔法』を使える魔法使いを集めた。

 その中にはシオリとマノ、ベルもいる。


「爆撃できますが、正確に狙うことはできません」


 シオリが言った。


「精密攻撃は期待していない」


 俺が答えると和彦がシオリに尋ねた。


「なぁ、基地に隕石を落下させられないか?」


「一応、可能ではありますが、召喚だけで一度に魔力を大量に消費してしまいます。私のランクでは無理です」

「そうか」

「すべてを消し飛ばすわけにはいかないぞ、和彦」



 俺は特殊部隊の隊員達を集めて、ブリーフィングを始めた。場所は役場の二階の部屋だ。一番広い部屋を選んだが、窮屈だ。

 俺の後ろにある壁には、転移魔法陣の場所が記されている地図が貼り付けられている。左手に持っているタブレットには、時間警察日本支部21世紀局局長である時間管理官が映る。


「それじゃ、始めるぞ」


 俺は言って、戦闘員が描いたレッドストームの基地の図を貼り付けた。


「これから伝える内容は、すべて機密の情報だ。基地を魔法攻撃で爆撃する。その混乱に乗じて、レッドストームの秘密基地を襲撃する。我々の主目標は()()ーーつまりタイムマシンの回収とゲートの確保だ。作戦開始直前までは冒険者を装う」


 タブレットに映る局長が言った。


()()の回収に失敗した場合はーー」


「フッケバインを三回連呼する」


 局長の言葉を遮って俺は言った。


「何か質問は?」


 言って、部屋を見回した。誰も何も言わなかった。


「よし」


 俺は和彦にタブレットを返した。



 隊員達は用意された、いかにも冒険者のような服装と装備を身につけた。


「一度、冒険者になりたかったんだ」


 和彦が楽しげに言った。


「拳銃は持っておけ」

「そんなんじゃーー」

「この世界にはレッドストームの連中がいるんだ」

「これ必要だろ」


 アランが言って、黒いフード付きマントを俺に渡した。それを受け取り、身に着けると彰人が言った。


「完全に悪役だな」

「俺のことなんだと思っているんだよ」

「赤い目をしたガスマスクをつけてMG42を乱射してそう」


 彰人は答えた。


「ついでに()()()()()()も振り回してそう」


 別の隊員が付け加えた。


「他の装備はどうやって持っていく?」


 和彦が聞くとシオリが


「それなら」


 と肩掛けバッグを示して言った。


「マジックバッグか、さすが異世界だ。最高だ」


 和彦が楽しそうに言った。



 冒険者の格好をした俺達は馬車に乗り込み、馬車で行けるところまで行った。そこからは徒歩で森の中をモンスターを撃ちながら、転移魔法陣がある遺跡を目指した。


 その夜の野営があらかた終わった頃、いくつかのグループを作り、焚き火を囲んだ。

 元の世界から持ってきた戦闘糧食(レーション)を全員に配った。簡単に温かい食事を摂れることにシオリたち、異世界の住民は感動した様子だ。


 進はムー世界での出来事を仲間に話していた。

 潜入捜査中にレッドストームにバレてしまい、ムー世界に拉致された。

 こっちの世界でエルフの子供達とマモル達冒険者パーティを助けて、脱出。その後、マリーニ街で雑貨屋を経営しながら情報収集を行った。

 俺と再会した後は行動を共にした。二人の魔法使いとパーティを組み、魔法を教わった。

 悪魔の森でレッドストームと戦い、元の世界へ帰る方法を探して、マリーラ村へ。


「子供達、助けてくれたこと感謝しているわ」


 ベルが進に伝えた。


「僕らも」


 マモルが付け加えた。


「進、あの時、何がったのか聞いてもいいか?」


 俺はマリーラ村の戦闘で首を切られた時のことを聞いた。


「敵を追って、路地に向かったんだ……。迂闊だった。ユーゼフにやられた。マノに助けてもらったんだ」


 進は答えた。


「奴なら拘束した。木戸たちを殺したのは奴だ。頭にパラベラム弾を送り込みたかったが」


 俺はリンを睨んだ。リンは言った。


「復讐は目的じゃないんでしょ?」

「ああ、そうだ。……俺は、この世界に来てからシオリには助けられてばかりだ」

「それで、なぜ、栗原大佐が?」


 彰人が尋ねた。


「直接、俺を拷問したくて仕方なかったんだろう」

「レッドストーム最大の敵って名指しされているのに?」


 英一が聞いた。


「ルーデルかよ」


 和彦が皮肉ぽっく言った。


「私の父はそんな人じゃありません」


 マノが言った。


「「同名の別人だ」」


 俺と進はハモった。


「それだけじゃない、”黒い悪魔”とも言われているぞ」


 英一が言った。


「いや、俺はエーリヒ・ハルトマンじゃない。大勢の仲間を失った。仲間を失った者は戦術的に負けている」


 俺は答えた。



 深夜、俺は眠らず、木にもたれかかって見張りをした。横には、今にも眠ってしまいそうなシオリ。

 立っているおかげで、辛うじて起きているようだ。

 別の場所で見張りをしているクレ部隊の隊員が話しかけてきた。


「問題はないな?」

「コイツ以外で?」


 俺は頭を横に倒してシオリを示した。


「可愛い魔法使いと一緒に見張りなんて最高だな」


 俺が答えようとすると、シオリが俺にもたれかかった。

 その時、何かの物音に気づいた。ほんの微かな音が。


 クレ部隊の隊員が言った。


「聞こえたな?」


 俺はクレ部隊の隊員の一人に顔を向けた。


「ああ、聞こえた」


 俺は体を起こしてホルスターからUSPタクティカルを抜いてセーフティを解除した。


「痛っ!」


 俺は倒れたシオリの声を無視して叫んだ。


「全員、起きろ! 何かいるぞ」


 その声に次々と隊員達が飛び起きて、臨戦態勢をとる。


「どうかしまーー」

「索敵しろ」


 俺は起き上がるシオリを遮って命じた。


「ッ!? ーーモンスターに囲まれています!」


 シオリが叫んだ。


「よし、さっさと片づけるぞ」



 戦闘は三分も経たないうちに終わった。


「ゴブリンか、最高の襲撃イベントだな」


 緑の肌の小人を見下ろしながら、和彦が言った。


「そう思っているのはお前だけだ」


 彰人が冷ややかな声で応じた。



 数時間歩いて、遺跡に辿り着いた。遺跡は朽ち果てた印象を受ける。俺は本部に報告した。


「ギフ(ワン)から本部へ、遺跡に到着。これより探索する。オーバー」


 隊員達は冒険者から特殊部隊の隊員に変わった。

 黒い装備を身につけた俺は、ガンケースからクリスタと名付けたHK416を取り出してチェックした。

 サプレッサー、ホロサイトとマグニファイア。ハンドガード上面にはエイミングデバイス、右側面にフラッシュライトを装着している。

 スリングを肩にかけると和也が高い声でからかうように言った。


「私は完璧よ」

「ああ、彼女は完璧だ」


 俺は答え、HK416を撫でた。

 入口は魔法で巧妙に隠されていた。マノが魔法で解除する。

 俺はギフ部隊とシオリを引き連れて中に侵入した。罠や危険がないかクリアリングしながら、奥へ進むと下へ続く階段。

 その階段を下ると部屋の中央に魔法陣が輝いている。


「ギフ(ワン)から全ユニットへ、遺跡内の安全を確保。これより転移する。オーバー」


 俺は無線で伝えた。


「シオリ、和彦と俺で行く」


 二人に転移魔法陣の上に乗るように指示を出した。三人で転移魔法陣の上に乗ると光に包まれ、立ち眩みが襲った。気がつくと別の部屋に飛ばされていた。


「三人います」


 シオリが警告した。安全を確認しつつ、入口へと向かった。

 入口から外を見ると三人の戦闘員が談笑している光景が見えた。一人は椅子に座っている。

 俺はHK416を構えた。ホロサイトのレティクルを数メートル先にいる戦闘員に合わせ、トリガーを引いた。

 反対側にいる和彦も同時に発砲した。あまり響かない銃声が六発響いた。

 椅子に座っている戦闘員に魔法の矢が貫き、椅子から崩れ落ちた。

 周囲に銃口と視線を向けながら、駆け寄る。戦闘員の死体を確認した。

 周囲を見渡すと、別の森の中だ。テントに木製の机と椅子、土嚢が詰まれ、軽機関銃が置かれている。傍らには弾薬が入った木箱。焚火まである。


「ギフ(ワン)から全ユニットへ、転移先の安全を確保。オーバー」

「ギフ(ツー)からギフ(ワン)へ、了解。これより転移する。アウト」


 隊員達が次々と送られてきた。

 全員が転移した後、部隊は森の中を一時間ほど歩いて基地に辿り着いた。

 俺は森の端、丘から双眼鏡を構えて偵察した。

 二本の滑走路とヘリポート、管制塔。格納庫は北側に二カ所、南側に一ヶ所ある。オストヴァルトゥルムに対空陣地。

 滑走路中央の北側には山の中に築かれた基地のアーチ状の入口をトーチカ、オストヴァルトゥルムが防衛している。南東の端はスクラップ置き場にされていた。


「まるで要塞だな」


 俺の横にいるアランが言った。


「A-10による近接航空支援が欲しい」


 彰人が言った。


「ないものねだりするな、こんなのファンタジーじゃない」


 和彦が彰人に言った。

 俺は双眼鏡を下して振り向いて言った。


「だから、奴らを排除しろ」


 プロペラの風切り音が響いた。俺は曇っている空を見上げた。Mi-28攻撃ヘリが頭上を通り過ぎ、ヘリポートに着陸した。


「よし、爆撃準備しろ」


 俺は命じた。一斉に魔法使い達が攻撃魔法の詠唱を唱え始めた。

 三十秒後、シオリが言った。


「魔法が完成しました。いつでも発動できます」

「よし、爆撃を開始しろ」


 魔法使いたちが一斉に爆撃魔法を発動した。

 曇った空から魔法の槍が基地に降り注ぎ、連続した爆発が発生した。

 俺は斜面を滑り降りて、基地に侵入。スクラップ置き場に向かった。

 警報が鳴り始めた。スクラップ置き場に放置されている破壊されたT-34/85から顔を覗かせ、前方を確認する。

 炎上するMi-28攻撃ヘリ、その周囲にいる戦闘員に銃弾を送り込むとオストヴァルトゥルムーーパンテルの砲塔を旋回させ、砲口がこちらに向いた。機銃掃射した。俺はすぐにT-34/85に隠れたその時、砲声が響いた。爆発、土煙。


「あのオストヴァルトゥルムを破壊しろ!」


 シオリは頷くと攻撃魔法を唱えた。シオリの杖から緑に光る魔法の矢が放たれた。魔法の矢はパンテルの砲塔を貫き、砲塔を沈黙させた。

 戦闘員に銃弾を送り込みながら、基地の入口を目指す。

 基地の入口まであと半分ほどに差し掛かった時、格納庫から戦車が出てくるのが見えた。

 俺は周囲に視線を走らせた。基地の入口左手にある格納庫からT-34中戦車、T-55中戦車、T30重戦車。右手にある格納庫からはT-34中戦車、ヤークトパンテルⅡが。


「マノ、シオリ!」


 俺が叫ぶとシオリとマノは西から突進するT-34とT-55に杖を構えた。攻撃魔法を唱えると杖の先端から緑に光る魔法の矢が飛び出した。魔法の矢はT-34の車体前面、向きを変えたT-55の側面を貫き、爆発、炎上させた。

 魔法の槍がT30重戦車の周囲に降り注いだ。土煙が煙幕のようにT30重戦車を覆い隠す。

 東側に目をやると、クレ部隊を狙っている別のT-34が主砲の85ミリ砲を放った。直後、魔法の矢が貫いた。爆発、砲塔が外れ、車体の横に落ちた。


「敵戦車をやっちまったぞ!」


 進が叫んだ時、ヤークトパンテルⅡ駆逐戦車が車体を旋回させ、俺達を12.8センチ砲の射界に収めた。

 パンテルの車体後部に箱形の戦闘室を載せ、威圧的な太くて長い12.8センチ砲を搭載した豹というよりもサイを思わせる外見の駆逐戦車だ。


「伏せろ!」


 俺は叫びながら地面に伏せると砲声が轟いた。後方で爆発、爆風、破片が降り注いだ。

 前方で別の爆発音が響いた。


「クレ(ワン)からギフ部隊へ、無事か?」


 ヘッドセットから和也の声が尋ねた。

 俺は顔を上げた。炎上するヤークトパンテルⅡが視界に入る。立ち上がりながら、後ろを確認すると、放たれた砲弾は滑走路に穴を開けていた。


「ああ、無事だ」


 俺が答えると格納庫からE-100対空戦車が出てくるのが見えた。砲塔を旋回させた。二門の8.8センチ砲(アハトアハト)をクレ部隊に向けた。


「味方が!」


 シオリが叫んで動く要塞のようなE-100対空戦車に杖を構えた。

 ダメだ。彼女の攻撃力じゃ、奴に勝てない。


「待て、お前じゃ、奴を破壊できない」


 俺がシオリに言った時、クレ部隊がパンツァーファウスト3を放った。放たれた弾頭はE-100対空戦車の車体前面に着弾、炎上させた。

 落雷のような砲声が轟いた。俺から十メートルほど離れた場所に魔法の盾が展開された。砲弾が魔法の盾に直撃、盾を粉々に砕いた。


「うっ……!」


 マノが呻いて倒れかけた。

 少し離れた場所で炸裂、爆風、土煙を発生させた。

 T30重戦車の砲撃だ。基地を守るかのように入口の前に前進した。


「俺達は猛獣じゃないぞ」


 滑走路を横切り、基地の入口を目指しながら、彰人が言った。


「いや、俺達は猛獣だとも」

「これだから、ドイツ軍オタクは嫌いなんだ」


 T30重戦車の砲塔が旋回し、主砲が仰角をとった。その砲口の先にはーー管制塔が!


「ギフ(ワン)からハリマ部隊、T30重戦車が管制塔を狙っている!」


 俺がハリマ部隊に警告を発した時、T30重戦車の155ミリ砲が火を噴いた。管制塔に直撃、崩壊した。


「入口前の戦車に攻撃を集中しろ!」


 俺が無線で言うと

 何本もの魔法の矢がT30重戦車を襲った。

 履帯、砲身を破壊されるとT30重戦車の周囲に煙幕が展開した。

 乗員が脱出する。それを援護するために戦闘員たちが弾幕を張る。

 鉄の塊となった重戦車を飛び降りた乗員達は木箱の裏へ逃げ込み、銃撃戦に加わる。


「こちらハリマ(ワン)、全員無事だ。ーー自分でも何で無事なのか不思議に思う」


 ヘッドセットからハリマ部隊隊長の淳の声が言った。


 基地の入口に近づくと基地の扉が横に開いた。T30重戦車の乗員が中に逃げ込むと十人程の戦闘員とボディアーマーにマスカヘルメットを装着して軽機関銃を持った重装兵が二人、出てきた。


「散開しろ!」


 俺は命じた。爆撃で破壊されたオストヴァルトゥルムに隠れた。オストヴァルトゥルムから顔を覗かせると重装兵が銃弾をばら撒いた。

 俺はHK416のセレクターをセミオートからフルオートに切り替えた。トリガーを引き、5.56×45ミリ弾を浴びせた。

 怯んだ重装兵に魔法の矢が刺さった。

 俺はHK416のマガジンリリースを押し込み、マガジンを抜き、新しいマガジンを差し込んだ。チャージングハンドルを引き、5.56×45ミリ弾を薬室に送り込んだ。

 ボンベを背負った火炎放射兵が叫んだ。


「すべて焼き払ってやる!」


 火炎放射器がドラゴンのように炎を吐き出した。


「奴に攻撃を集中しろ!」


 銃弾を浴びせるとボンベに火がついた。火炎放射兵があたふたする。周囲にいる戦闘員を巻き込んで爆発、火だるまにした。断末魔のような悲鳴。

 入口周囲を一掃、制圧した。


 基地に侵入した。内部は広い造りになっている。鳴り響く警告音と点滅する赤色灯。その赤く照らされている広い通路を進む。アーチ状のトンネルは二階建て、まるでソ連時代のバンカーGO-42のようだ。

 検問所を抜けると右手に通路がある。

 俺は小声で言った。


「進、そっちの通路をクリアリングしろ」

「了解」


 進が答え、タジミ部隊が通路へ向かった。俺達は戦闘員に銃弾を送り込みながら、奥へ進んだ。

 各部屋を三秒以内に制圧する。俺がHK416をリロードすると進が無線で報告した。


「タジミ(ワン)からギフ(ワン)へ、通路の先は刑務所と尋問室だ。何人か囚われている。彼らを解放し、保護する。オーバー」

「ギフ(ワン)からタジミ(ワン)へ、了解。アウト」


 さらに奥に進むと兵舎や食堂がある。それらの部屋を抜けると一番奥にあるエレベーターに到達した。


「ハリマ(ワン)から全ユニットへ、ゲートを確保した。繰り返す、ゲートを確保した」


 ヘッドセットから淳の声が報告した。

 エレベーターに乗り込んだ俺は下の階のボタンを押した。エレベーターが降り始める。


「敵は待ち伏せしているはずだ。シオリ、扉が開くと同時に奴らを吹き飛ばせ。それ以外は弾幕を張れ」


 一斉に了解の返答。

 エレベーターが止まり、扉が開くと同時にシオリが魔法を放った。

 爆発、爆風、戦闘員を吹き飛ばす。

 同時に銃弾を送り込みながら、前進する。

 ここは研究室のようだ。


 厳重に警備されている扉が見えた。守りを固めている戦闘員に銃弾を送り込み、近づくと扉が滑るように開いた。

 中から防護服を着込んだ戦闘員が姿を現すと右腕に取り付けられている装置から青白い稲妻を英一に浴びせた。

 稲妻にやられて、英一が倒れた。


「クソッ」


 俺は倒れた英一を掴んで距離を取った。

 それを援護するように銃弾が防護服に叩きこまれる。英一は引きずられながらホルスターから拳銃を抜き、連射するように放った。

 放たれた銃弾は防護服に阻まれた。装甲スーツのようだ。

 俺は近くのテーブルを倒して、その背後に英一を引きずって片膝をついた。

 後方をチラッと確認すると彰人が戦闘員の死体から対物ライフルを奪った。

 俺は閃光手榴弾を取り出して、安全ピンを抜いて投げた。


 炸裂音、閃光。


 怯んだ防護服を着込んだ戦闘員に対物ライフルの12.7×99ミリ弾が襲った。右腕を吹き飛ばす。

 うめき声を上げると更に彰人が対物ライフルを撃った。

 稲妻を放つ戦闘員は倒れた。動いている敵はいない。

 シオリが英一に駆け寄って膝をついた。手をかざすと治癒魔法をかけた。


「大丈夫ですか?」


 シオリが英一に尋ねると


「ああ、大丈夫だ。これも悪くない」


 英一が答えて立ち上がった。


「お前は頭の治療が必要だな」


 俺は言って、HK416の銃口を倒れた防護服を着込んだ戦闘員に向けたまま、近づいた。


「こいつは、いったい何者だ?」

「稲妻を放つ武器だな、攻撃のたびにチャージが必要なんだろう」


 彰人が答えた。

 奥へ進むと、静まり返った通路の中にガスが放出される音が微かに聞こえた。


「ガスマスクをつけろ!」


 俺は叫んだ。

 全員がガスマスクを装着すると白い煙の霧が基地内に広がった。嫌な予感がする。

 電気が消された。

 闇が支配する中で俺はヘルメットに装着されているナイトビジョンゴーグルを下げて起動した。暗視装置越しでしか見えないIRイルミネーターも起動する。


「君は?」


 和彦がシオリに尋ねた。


「私は暗視魔法で」


 シオリが答えた。

 柱から戦闘員が出てきた。銃にライトが取り付けられている。闇の中で銃火が煌めく。

 柱や遮蔽物に隠れている戦闘員に銃弾を送り込みながら、前進を再開する。


 壁際に積まれているコンテナが開いた。中からアンデッド達がうめき声を発しながら、ふらふらと近づく。

 アンデッド達に銃弾を叩きこんだ。

 俺はHK416をリロードしながら、思い出しそうになった記憶を押しやった。

 まだ残っているアンデッド達の中にアティキュラスに似た水が弱点のモンスターがーー

 右目が赤く、側頭部に小さな機械が取り付けられ、アンテナが伸びている。頭部から背中にかけて数本のトゲがある。銃弾をかわす俊敏さ、皮膚は装甲化されている。


 間違いない奴だ。奴が、奴が! 仲間を虐殺して……!


 シオリが俺を揺さぶって叫んだ。


「拓馬さん!」


 我に返った俺はシオリに叫び返した。


「奴に水をぶっかけろ!」

「水ですか?」

「いいから、やれ!」

 シオリが杖を構えた。杖の先端から滝のように水を浴びせるとアティキュラスに似たモンスターの動きが止まった。うめき声のような咆哮を上げると倒れ込んだ。

 残りのアンデッド達を掃討するとシオリが心配した表情で尋ねた。


「大丈夫ですか?」

「ああ」

「どうして、弱点をーー」

「もっと早く、この弱点に気づいていれば仲間を救えた」


 沈黙が続いた。と、壁際に置かれているロッカーから物音がした。


「出てきて」


 美香がぐぐもった声で言って、HK416を構えた。


「頼む、撃たないでくれ」


 ロッカーから恐る恐る出てきたのは、顎ヒゲ、頬ヒゲが特徴的なメガネをかけた恐らく50代の男だ。

 教授のような印象を受ける。

 男はシオリを見つけると懇願するように言った。


「マノの父に伝えてくれ! 彼らは閉じられた元居た世界へのゲートを開こうとしている。それだけじゃない! 過去、未来に行く機械を完成させた。恋人を失った私の友人が過去を変えようとしている」

「タイムマシンは?」


 俺が尋ねると男は奥の半分しまったシャッターがある部屋を指さした。


「後は任せてくれ」


 電気が付き、明るくなった。

 俺はヘルメットに装着されているナイトビジョンゴーグルを上げた。

 物陰から人影が飛び出すと拳銃を構えて三発放った。俺は回避と同時にHK416を構えた。

 男はコンテナを開けると同時に閉まり始めたシャッターへ走り出した。俺は後を追った。

 男が閉まり始めたシャッターを通り抜けた。


「行け! 拓馬、ここは俺達が!」


 彰人が叫び、アンデッドのうめき声と連続した銃声が響いた。

 閉まる寸前のシャッターをスライディングで通り抜けるとM113装甲兵員輸送車にそっくりな外観の武装タイムマシンに人が乗り込み、ハッチが閉まると同時にタイムマシンが振動して動き始めた。

 俺は立ち上がって、遮蔽物の机へ走った。タイムマシンの輪郭がぼやけて幻のようになった。

 二人の戦闘員に銃弾を送り込み、ホロサイトのレティクルをタイムマシンに合わせた瞬間、タイムマシンの周囲の空間がグニャリと歪むとふっと消えた。


 ムー世界の過去へ行ってしまった!


 俺は無線機の送信スイッチを押した。


「フッケバイン! フッケバイン! フッケバイン!」

読んでいただきありがとうございます。

面白ければ、ブックマーク、評価お願いします。


小説の連載ですが、プロットの更新のため、しばらく休載します。

いつ再開できるか未定ですが、頑張ります!

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