マリーラ村の戦い
お祭りは終わった。
俺は周囲を見渡した。夜が明け、早朝へと移り変わっている。周りは、お祭りの片付けに追われている。そして俺は一時間前から警察に監視されている。
結局何も起こらなかった。
「突っ立っているのなら手伝ってくれ」
誰かが通りすがりに声をかけた。
「ん? あぁ……」
俺が曖昧に返答すると黒いローブを身にまとった魔法使いのシオリとマノが近づいてきた。
「まだ何かを警戒していますね……」
「一体何を警戒してるというの?」
「いつの間に着替えた?」
横にいる進が二人の魔法使いに尋ねた。
俺は視線を三人から人だかりに移した。屋台やテントを解体している。その人だかりの中にユーゼフ・コンラドを発見した。東に向かって移動している。俺は進の肩を叩いた。目でユーゼフの方向を示す。
「どうしたの?」
マノの言葉を無視して進に言った。
「ユーゼフだ。追うぞ」
「ヴァルターさん? どこへ?」
シオリの声を無視した。歩きながら、ホルスターに手を伸ばした。USPタクティカルのセーフティを解除する。背後からついて来るシオリとマノの心配する声。俺はそれを無視し続けた。
ユーゼフはマリーラ村の東側に向かっている。
廃鉱山に誘導している? 廃鉱山は村から北東に進んだ先の森の中にある。
人通りのない通りの宿屋にユーゼフが消えていくのが見えた。宿屋に近づくと路地から、警官数名が路地や建物から現れた。俺達を取り囲む。
長身のほっそりした白髪のダークエルフの女性警官が言った。
「ヴァルターとキールね? 個人的に気になって、君たちの行動を調べた。色々とやったようね。でも隠蔽している。目的は何? あんた達の正体は? あんたと、この村で殺された三人の関係も知りたい」
俺が答えないでいるとアイザックが言った。
「頼むから、彼女に従ってくれ」
「俺も知りたいよ、ヴァルター。いや、こう言うべきかな? 時間警察日本支部21世紀局特殊部隊、加藤拓馬隊長?」
唐突に日本語が聞こえた。宿屋に目をやるとドアから黒い軍服に大佐の階級章をつけた中年の男と迷彩服の戦闘員三人が現れた。
「時間警察……?」
「カトウタクマ? ヴァルターは偽名だったのですか!?」
シオリとマノが俺に顔を向けてくる。
「やめとけ、お前が武器を持ってないのは知っている」
戦闘員が俺達にAKを構えた。
「それとも、その近接武器で我々の武器に立ち向かうつもりか?」
「シオリの言うことを聞かなければよかった」
「お前は……キールーーいや、佐藤進だな。いい偽名だ」
「キールも偽名なの!?」
「ようやくバレたか、メガネを掛けているだけで気づけないとは、無能な連中だな!」
進は言ってメガネを外した。
「向こう側の世界、日本から来たと言うの?」
マノが冷静に尋ねた。
「あんた達は……まさか!」
白髪のダークエルフの女性警官が言った。
「さっさと殺せ」
大佐に日本語で言うと
「君には聞きたいことが山積みだからな。殺すのは最後にしてやる」
大佐はそう言うとスタンガンを俺に向けた。
「俺の仲間を殺したのはお前らだな? 栗原大佐」
「ああ、そうさ、我々の工作員だ。お前らの仲間は本当に優秀だな! 偽の情報で誘導されるとは!」
俺は素早くホルスターからUSPタクティカルを引き抜き、二発放った。同時に別の銃声が二発、響いた。
「ぐっ……な、なぜっ……」
俺は倒れた栗原大佐に歩み寄り、サプレッサーを装着したUSPタクティカルの銃口を栗原の眉間に押し当てた。
「さよならクソ野郎」
言ってトリガーを引いた。
爆発音、銃声が響いた。
「進! 奴らの武器を奪え!」
俺は進に叫んで、戦闘員の死体に駆け寄った。戦闘員の死体から全体が黒い近代化改修されたAK74を奪う。
”MADE IN North Japan”の刻印。
「AK74J、日本民主主義人民共和国製か」
マガジンを抜き、残弾を確認して差し込む。円筒形のパーツが取り付けられたチャージングハンドルを半分引いてチャンバーチェックを行う。
ホロサイトを装着したマウント、短いフォアグリップを装着したハンドガード。
「嫌な改変世界だ」
進が奪った黒いAK74も似た構成だ。
「シオリの言うことを聞かなくてよかった」
「向こうの世界から来たのですか!?」
シオリが完璧な発音の日本語で言った。
「一体どういうことか説明して! 日本から来たの? 時間警察って何?」
「お礼を言うよ、お前のおかげで工作員を見逃した」
振り向きながらダークエルフの警官に言った。
「リン警部! 敵に包囲されました! テレポート強襲です!」
念話で会話していたアイザックが叫んだ。
「何ッ!?」
十人ほどの戦闘員がこちらに向かって走ってくる姿が見えた。
「行くぞ!」
進に言い、走りながら、AK74のセレクターをセミオートからフルオートに切り替えた。
戦闘員がAKを撃ち始めた。
「伏せろ!」
俺は叫んで、AK74を構える。ホロサイトのレティクルを戦闘員に合わせた。トリガーを引いた。
横にいる進も発砲を開始した。
近づいてくる戦闘員に5.45×39ミリ弾の雨を浴びせる。
戦闘員が散開する。
四人が倒れた。
俺は路地に駆け込んだ。戦闘員は建物の壁際を進む。
5.45×39ミリ弾を叩き込む。
数人の戦闘員に魔法の矢が貫いた。
俺は周囲に視線を走らせた。動いている敵はいない。
「リロードする」
進に言って、AK74の黒いマガジンを抜き、新しいマガジンを差し込んだ。チャージングハンドルを引いて5.45×39ミリ弾を薬室に送り込む。
AK74を構えた。片手で進の肩を叩いて合図すると進も俺と同じ動作でリロードした。
シオリとマノが路地に駆け寄った時、離れた場所にある建物の陰からレッドブラウン、オリーブグリーン、ダークイエローの三色迷彩の戦車が轟音と金属がきしむ音と共に現れた。
「散開しろ!」
誰かが叫んだ。
正面と側面の装甲をパンテルやティーゲルⅡのように傾斜させ、防御力を向上させたⅣ号戦車K型だ。車体側面、砲塔の周りにシュルツェンを装備している。ドイツ軍の国籍マークであるバルケンクロイツは塗りつぶされている。
Ⅳ号戦車K型は旋回して、こちらに正面を向けるとゆっくりと前進した。砲塔を旋回させ、俺たちがいる路地に狙いをつける。
「ヤバい! 走れ!」
路地の先に進むと砲声が轟いた。建物の角が吹き飛んだ。破片が降り注ぐ。
半壊した建物から顔だけを出すとⅣ号戦車K型は、ゆっくり前進しながら、車体正面に搭載されている車載機銃をまき散らすように発射した。
魔法の矢が放たれた。Ⅳ号戦車K型の正面装甲に当たり、光を散らした。
「……あんなウォーマシン見たことがありません」
俺の横にいるシオリが呟いた。
「Ⅳ号戦車K型だ」
シオリとマノが俺に顔を向けた。 シオリやマノの攻撃魔法なら側面装甲を貫くーーいや、シュルツェンに防がれるかも知れない。
「どうすれば!」
「ドイツの装甲戦闘車両だ。シオリ、傾斜した50ミリの装甲を貫くことはできるか?」
「分かりません!」
「なら履帯を吹き飛ばせ! マノは合図したら側面に穴を開けろ!」
「分かったわ、詠唱が終わるまで援護して」
マノが詠唱を開始する。
俺は半壊した建物からシオリの顔と杖を出させるとシオリが構えている杖を突進するⅣ号戦車K型の右側の履帯に狙いをつけさせた。
「いいぞ」
シオリの杖から緑に光る魔法の矢が放たれた。矢はⅣ号戦車K型の起動輪と履帯を吹き飛ばした。履帯を吹き飛ばされたⅣ号戦車K型は旋回して側面を晒した状態で動きを止めた。
「完了したわ!」
「よし、マノ、やれ!」
「装甲を貫くことだけを考えるんだ!」
進が叫んだ。
マノは半壊した建物から顔と杖を出すと杖を構えた。 杖の先端に魔法陣が現れ、圧縮されるとⅣ号戦車K型に向かって射出した。魔法の矢がⅣ号戦車K型の側面を貫くと黒煙と炎を噴き出して爆発した。砲塔が車体から外れ、車体の横に落ちる。
半壊した建物から出た。周囲を見渡した。敵はいない。
周囲で歓声が上がった。
「よくやった! 二人とも」
進が言った。
「今は、あなた達の尋問よりも村の防衛が優先ね」
リンが言った。
「私たちは村人たちを安全な場所へ避難させる」
「俺、ススム、シオリとマノで敵を殲滅する」
二手に分かれて行動を開始した。俺達は中央広場に向かうことにした。
「終わったら、ちゃんと説明して」
マノが言った。
「ああ、全て終わったらな」
しばらく進むと建物の壁際に積んである木箱の向こうから数人の男女が出てきた。
AK74を構える。
「待て! 待て! 撃つな! 俺だ!」
片手に剣を握ったアランが両手を上げて叫んだ。俺は、その後ろから現れた戦闘員にホロサイトのレティクルを合わせ、トリガーを引くことで、それに応じた。
銃声。
「ッ!?」
アランが後ろを振り向いた。
俺と進は駆け足で戦闘員の死体に近づいた。アランとルーデルを押し退ける。傍らに落ちた銃を蹴って、戦闘員の手から遠ざける。
「襲撃だ!」
「「分かっている」」
「その銃は?」
ルーデルが興味深そうに聞いた。
「奴らから奪った」
「無事か?」
アランがシオリとマノに聞いた。
「大丈夫」
「マノは?」
「私も大丈夫よ」
「お兄ちゃんは?」
「すでに戦っているらしい」
「時間警察の犬どもが!」
戦闘員の一人が日本語で叫びながら、路地から飛び出した。M4カービンの銃口を俺に向けた。俺は、その戦闘員に銃弾を送り込んだその時、盗賊の集団が現れた。斧や剣、ライフルで武装している。
「戦えない者は隠れていろ!」
俺は叫んだ。
盗賊の男がKar98kに装着されている銃剣で刺突しようと! それを避け、Kar98kを奪い、銃床で殴る。
構えて、狙いを別の盗賊の男に定めてトリガーを引いた。
放ったライフル弾は盗賊の顔を吹き飛ばした。
ボルトを前後にスライドさせ、排莢、装填を行う。残りの四発同じ動作でライフル弾を四人に送り込んだ。Kar98kのボルトハンドルを上げ、後ろに引くと空薬莢が排出される。
盗賊が俺に斧を振りかざした。
Kar98kでガードし、銃剣を突き刺すと盗賊の男が斧を落した。俺はKar98kを離した。盗賊の男は血を流して倒れた。
AK74を構えて、視線と銃口を周囲に向けると建物の角から戦闘員が出てきた。
一発放ち、体当たりする。
その後ろにいる戦闘員が構えている魔力銃を払い除け、掴むと身体を捻って、トリガーを引き、迫ってくる敵に青白く光る弾を喰らわせる。
スタンモードだ。
魔力銃を奪い、頭を殴る。
魔力銃を捨て、ホルスターからUSPタクティカルを引き抜き、倒れた三人の戦闘員に銃弾を送り込む。
顔を上げると筒状のようなランチャーを構えた戦闘員が姿を現した。パンツァーファウストのように見える。
「RPG!」
進が叫んだ。
俺はUSPタクティカルを構えた。狙いを合わせてトリガーを引き、発射される前に倒した。
「一体何と戦うつもりなんだ?」
進に言いながら、戦闘員の死体に近づき、パンツァーファウスト250を奪う。
「お前が持っていろ」
言って、パンツァーファウスト250を進に渡す。
「中央広場に向かう」
アランに言った。
「分かった」
東から中央広場へ向かう途中、建物のドアが突然開いた。男が飛び出す。輝男だ。
俺はAK74の銃口を輝男に向けた。
「撃つな!」
輝男は両手を上げながら叫んだ。
「いいや、お前は、敵だ。お前らの組織がやった歴史改変でーー」
「違うんだ! 俺は過激なメンバーやレッドストームの歴史改変から大和を守ろうとしたんだ!」
「今はどうでもいいだろ! 輝男! 銃は撃ったことはあるな?」
進が口を挟む。
「AR-15系なら!」
建物の角から南に続く通り、T字路を見ると突進する鋼鉄の豹に、いくつもの魔法の矢が直撃し、光を散らした。
「クソ、パンテルⅡだ。パンツァーファウストよこせ!」
俺は進から奪うようにパンツァーファウスト250を受け取った。
コーン型のキャップを持つ弾頭が装填された発射管には一体化したトリガーが付いたグリップが取り付けられている。
「バックブラストに注意しろ!」
肩越しに振り向いて言った。
「ヴァルターから50メートル以上離れろ!」
進が言って数秒後、
「いいぞ」
進が肩を叩いた。
「お前たち、ダメだ! 引け!」
遮蔽物代わりの瓦礫から男が片手を振りながら叫んだ。俺は、その言葉を無視してトリガーを引いた。
発射された弾頭は弧を描くように飛んでいき、パンテルⅡの車体前面に直撃、メタルジェットが装甲を貫徹した。
被弾したパンテルⅡは瓦礫に突っ込んで乗り上げ、その動きを止めた。
俺は発射管を捨て、AK74を構えたまま、パンテルⅡに近づく。
鋼鉄の豹はすでに沈黙している。その後ろをⅣ号戦車K型が炎上するパンテルⅡを避けて、前進する。
俺はパンテルⅡに隠れた。
建物から冒険者の男が飛び出した。Ⅳ号戦車K型に張り付くと、よじ登った。
「彼を援護しろ」
俺は命じた。
男はキューポラのハッチを開けると魔力銃を放った。何かを投げ入れる。
「伏せろ!」
男は叫んで飛び降りた。その数秒後、爆発した。俺が立ち上がるとパンテルⅡの周りに人が集まった。
「ドイツの兵器でドイツ戦車を破壊するのは最高の気分だ!」
進に言った。
「パンテル? チェルガンにあんなウォーマシンあったか?」
冒険者の男が聞いた。
「ドイツの装甲戦闘車両だ 」
「パンターⅡだろ、お前はティーガーをティーゲルって発音するのか? 昔の架空戦記小説に影響を受けすぎだ」
「だからなんだ? お前は敵だ。ここで殺しても誰も困らない」
輝男が答えようとした時、銃声が響いた。輝男の身体に孔が開き、血を噴き出して崩れるように倒れた。
「伏せろ!」
「まだいるぞ!」
戦闘員たちが現れたが、俺がAK74を構える前に複数の孔が開いた。
周りにいる戦闘員、盗賊の連中を撃ちながら中央広場に向かう。中央広場は弾が飛び交う戦場に変化していた。
レッドストームの戦闘員達は連携して行動しているが、ブラッククロスの盗賊たちは各々、行動して略奪している。
「あいつだ! あいつを生け捕りにしろ!」
突然、戦闘員の一人が俺を指さしながら叫んだ。戦闘員達が一斉に俺と進に狙い始めた。盗賊は構わず、略奪を繰り返している。
数発ずつ戦闘員、盗賊に弾を送り込みながら進むと、右手に短剣を持ち、左手で抵抗する女性の腕を掴んだ盗賊の男に矢が突き刺さった光景が視界に入った。
ベルだ。マモルたちも応戦している。
ベルが弓矢を引いた。放つ。戦闘員に矢が突き刺さる。
周囲に銃口を向けながら、周囲を見渡した。動いている侵略者の姿は見えない。
「クリア」
「奴ら、なぜ、お前とキールを狙う?」
アランが聞いた。
「俺を捕まえて拷問したいらしい」
「まだ役場に侵略者がいる」
女性が言った。
「アラン達は北側にいる敵の掃討を。マモル達は西側。戦える者は彼らと行動しろ、戦えない者は安全な場所へ。俺らで役場にいる侵略者を制圧する」
周りに命じた。次々と返ってくる了解の返答。俺は行動を開始した。役場に向かうと役場の二階、隅の部屋から布を切り裂くような連射音と閃光が発生した。電動ノコギリの如く冒険者を真っ二つに切断する。
「隠れろ!」
俺は叫びながら、女性を遮蔽物代わりの瓦礫へ引っ張った。
クソ、MG42か?
射撃が止んだ。
俺は瓦礫から上半身を出して、役場の二階、隅の部屋に5.45×39ミリ弾を叩き込む。が、青色の半透明に光る円形のシールドに跳ね返された。シールドの中心から銃身が突き出されている。
射撃が再開された。
すぐに伏せた。
「シールドを貫けない!」
言いながら、AK74のマガジンを抜き、新しいマガジンを差し込む。
「私に任せて」
マノが答え、魔法の矢を放った。射撃が止まる。
遮蔽物から顔だけ出して、役場の二階を確認するとマノの放った魔法の矢はシールドを貫いて、射手を射貫いていた。別の戦闘員が移るとシオリが魔法の矢を放った。
「掃討しろ!」
俺は叫んだ。遮蔽物から出て、役場の正面玄関のドアに向かった。
開いているドアから中を確認すると、迷彩服を着込んだレッドストーム戦闘員の一人が村長のエーリッツにAK74を向けている。
「騒ぐな」
もう一人の戦闘員は部屋の隅に置かれている本棚を物色している。
「日記なら盗まれた」
エーリッツが答えた。
「知っている」
『三人いる。一人は村長だ』
念話で進に言った。
『お前のタイミングで撃つ』
頭の中でキールの声が言った。
『俺はエーリッツに銃口を向けている奴、お前は本棚の奴。行くぞ』
役場に突入した。俺はエーリッツに銃口を向けている戦闘員に狙いを定め、トリガーを引いた。
部屋の中で二つの銃声が響いた。同時に戦闘員二人が倒れた。
「ッ!?」
エーリッツが振り向いた。
「ケガは?」
小声で聞いた。
「君たちか、まだ二階にいる」
言いながら、階段を示した。
「安全な場所に連れてけ」
マノに言い、進に合図する。
一階をクリアリングしながら、階段へ向かった。
二階への階段に向かう通路には二つの背の高い棚があった。中が見えるように扉にガラスが埋め込まれている。
階段へ近寄ると反対側の部屋から盗賊の一人が叫びながら、俺に飛び掛かった。勢いで棚に打ち付けられた。
ガラスが割れる音。
数秒間の殴り合い。
俺は割れていない片方の棚の扉を掴み、思いっきり開いた。扉の縁が盗賊の顔面に衝突する。
「ウグッ!」
うめき声を上げ、半回転して倒れた盗賊を掴み、壁に突進した。
壁に激突した盗賊を床にはっ倒す。
「一名制圧」
俺は言って、AKからUSPタクティカルに変えた。
壁に背を向けて階段を登る。踊り場で、くるりと向きを変える。
二階は四つの部屋があった。
『部屋に何人いる?』
俺は念話で聞いた。
『三人』
頭の中でシオリの声が答えた。
各部屋をクリアリングする。
最初の部屋は機関銃陣地だった。二人の戦闘員の死体と三脚銃架の取り付けられたMG42ーー穴が開いたシールド。
最後の部屋、日本人コミュニティーがある部屋に到達した。
ドアの横に立つ。進が肩を叩いた。
ドアを蹴破って素早く中に突入した。部屋の中をクリアリングする。
三人の男女が部屋の中心に両手を縛られた状態で座らせられていた。
悲鳴を上げる。
「大丈夫、私達は味方だよ」
シオリが流暢な日本語で安心させるように言った。
「三人を安全な場所へ」
俺はシオリに命じた。
三人を解放し、シオリと共に部屋を出ていくのを見送った俺はUSPタクティカルをホルスターに収めた。
廊下に出た時、連続した砲撃音が響いた。破片が顔をかすめる。
すぐに伏せた。
数秒後、攻撃が止んだ。
北側の割れた窓から顔だけ出して外を見てみるとⅣ号戦車7.5センチ無反動砲搭載型の30ミリ機関砲の攻撃だった。
砲塔左側の筒から砲弾を放った。大量の白煙が発生する。
ヤバイ!
「進! 伏せろ!」
俺はとっさに床を蹴って横に飛び跳ねた。
着弾、爆発、爆風。
俺と進がいる二階は崩れ落ちた。
破片が降り注ぐ。
崩れた役場から何とかして脱出した俺は、AK74を構えた。突っ込んでくる戦闘員全員にばら撒いた。
戦闘員の死体からRPG-7を奪い、構えた。
RPG-7のハンマーを押し下げ、セーフティを解除する。目標のⅣ号戦車7.5センチ無反動砲搭載型を狙う。
トリガーを引いた。
発射された弾頭は目標の側面に着弾した。
爆発。炎と黒煙を吹き上げた。
俺はRPG-7を捨て、周囲を見渡した。進の姿が見当たらない。
『アルファ1からアルファ2へ、応答しろ』
応答がない。
『アルファ2、アルファ2応答しろ!』
歩き始めた。
「進どこにいる? 返事をーー」
路地で首から滝のように血を流して壁に横たわる進の姿。
何も感じなかった……いや、何も感じられなかった。相棒は死んだ。もう、味方は一人もいない。俺一人だ……。
「ッ!?」
マノが進に駆け寄った。
「死体袋を用意しろ」
マノに言って相棒の死体から目を逸らした。
その場を離れた。AK74のマガジンを抜き、新しいマガジンを差し込む。
突然、マモルの声が頭の中で響いた。
『ーー包囲された!』
俺はマリーラ村の西にある橋を目指した。
視線と銃口を周囲に向けながら前進する。
銃声、爆発音。
俺は建物の壁に背中を押し付けた。角から先をクリアリングする。包囲されているマモル達が応戦している姿を見つけた。
男たちが攻撃している。その一人、MP41で弾をばら撒くように発射している盗賊の姿。
指切りして点射した。
AK74から放たれた銃弾を受けた男は絶命した。
倒れた盗賊のベルトに挟んでいる67式木柄手榴弾ーー中国製の柄付き手榴弾を奪う。
手榴弾のセーフティキャップをねじって開けて、防湿紙を破る。
プルリングを取り出して、右手の小指にリングをはめる。目標に向かって投げた。
爆発、悲鳴、爆風。
包囲網に穴を開けた。
三名ほどの人間が倒れ、うめき、もがいている。ホルスターからUSPタクティカルを抜いた。
一人一人の頭に9ミリパラベラム弾を送り込んだ。
USPタクティカルをホルスターに収め、AK74に持ち替えると、ショットガンを持った盗賊の男が飛び出してきた。俺は建物の壁に身を押し付けるようにした。男は発砲した。
頬を小さな弾丸が撫でる。
俺はナイフを抜いた。
相手の喉にめり込ませた。すぐに引っ込める。
喉から大量の血を噴き出しつつ、男は倒れた。
ナイフを鞘に収めた。
ショットガン(レミントンM870だ)を拾い上げ、フォアエンドを前後にスライドしてショットシェルの排出と装填を行う。
「残っている敵を殲滅するぞ!」
マモル達に向かいながら、叫んだ。
レミントンM870を構え、マモル達の先を行く。
前進しながら戦闘員、盗賊にショットガンを撃ち続けた。
散弾の雨が戦闘員、盗賊を襲う!
弾がなくなったレミントンM870を捨て、ホルスターからUSPタクティカルを抜いた。
視線と銃口を周囲に向ける。
動いている敵はいない。
周囲は瓦礫や破片が散乱している。
「クリア」
「ありがとう」
マモルが言った。
「キールは?」
「相棒は死んだ。何も問題ない」
「死んだ……?」
「クソッ! クソッ! クソ! 」
Kar98kに装着された銃剣で倒れた戦闘員を何度も刺突する冒険者の青年。
「やめなさい!」
ベルが言って、冒険者の青年からKar98kを取り上げた。
橋が見えた。迷彩柄の戦車が橋を渡ろうとしている。ヘッツァーに似た傾斜装甲を持つ車体に爆撃機の銃座の様な砲塔を持つその姿はUFOにも見える。その後方には、パンテルから砲塔を取り払ったような見かけの輸送車両。
ポルシェ 245-010型軽戦車とケッチェン装甲兵員輸送車だ。
俺が好きなウォーシュミレーションゲームや架空戦記に登場していた車両だ。
俺がそんなことを考えていると
ポルシェ 245-010型軽戦車が5.5センチ弾を次々と放った。傾斜した装甲に魔法の矢が貫き、爆発炎上した。
停車したケッチェン装甲兵員輸送車に『ファイアボール』が放たれた。炎に包まれる。戦闘員が火だるまになりながら飛び出した。次々と撃たれて孔が開く。一人がそのまま川に落ちた。
AK74を構えたまま、橋を渡る。
残っている敵がいないか周囲に視線を走らせた。とプロペラの風切り音が響いた。
俺は曇っている空を見上げた。Ka-29TBが現れた。
特徴的な二重反転式ローターに洋上迷彩の機体、尾翼には赤い星に双頭の鷲のマーク。
横に滑りしながら、ロケット弾を次々と発射する。
ケッチェン装甲兵員輸送車の陰に飛び込んだ。
橋に着弾、爆発。橋が崩れ落ちた。
Ka-29TBが頭上を通り過ぎる。
「クソ野郎を燃やせ!」
マモルが戦闘員の死体からRPG-7を奪い、俺に渡した。
俺はケッチェンの陰から出ると旋回したKa-29TBに狙いを定めた。
トリガーを引いた。
放たれた弾頭はKa-29TBのコックピットに激突、炸裂した。
ヤバい!
Ka-29TBが高度を下げながら、突っ込んでくる!
RPG-7を捨て、回避しようとーー
銃声が響いた。
左脚に激痛が走る。俺は倒れた。
「敵がまだいるぞ!」
誰かが叫んだ直後、うめき声が聞こえた。
回転しているプロペラが地面に接触し、地面を耕す。
「クソ! クソ! クソ!」
仰向けになりながら足で地を蹴って距離を取ろうとーー
プロペラが浮いた。Ka-29TBが反転しながら、宙を舞い、後方数メートル先に墜落した。
俺は無理やり立ち上がった。
「ヴァルターさーん!」
シオリの叫び声。
「近づくな! ばくーー」
爆発。
俺は爆風で吹き飛ばされた。
何メートルか、身体がひっくり返る。
曇った空に破片が横切る光景。
体中が痛む。
シオリが俺のそばに膝をついた。
「ボロボロじゃないですか!」
と言って手をかざして、治癒魔法をかける。
シオリが俺の手を掴んで起き上がらせてくれた。
横に顔を向けると生垣の後ろに矢が突き刺さった戦闘員が横たわっていた。
建物は崩れ落ち、瓦礫や破片が散乱している。負傷者に包帯を巻く者、降伏した戦闘員たちに銃剣を向け、武装解除し、拘束する警官たち。後始末を開始する者。
この村に割れていないガラスなど一枚もないだろう。
「お礼をさせてくれ」
エーリッツが言った。
「なら、すべて隠蔽しろ。俺はここにいなかった、お前らの独力で侵略者を撃退した。いいですね?」
「なぜーー」
「機密だ」
集められた武器やドイツ製装甲戦闘車両を眺めながら思った。
なぜ、奴らは第二次世界大戦時のドイツ装甲戦闘車両を使った? ソ連のT-62やT-72ーーそこまで考えた時、一つの答えに辿り着いた。
あれは主力じゃない。消耗してもいい戦力を投入したんだ。彼ら相手に現代兵器は過剰な火力だ。第二次世界大戦時の兵器で十分だ。だが、強力な兵器を保有していても兵站がなく、補給ができない。ゲートが閉じられている以上、燃料や弾薬の備蓄には限りがある。
そんなことを考えているとシオリが話しかけてきた。
「ヴァルターさん……」
「なんだ?」
「そ、その、私達は勝ったのですよね?」
「戦争は始まった。これは一つの勝利に過ぎない」
「まさか、こんな状況で再会してしまうとはね」
リンがベルに言った。
「本当ね、こんな戦闘に巻き込まれるとは思わなかったわ。リン、なぜ、この村に来たの?」
「ヴァルターとキールに尋問したくて」
俺は周囲を見渡した。ユーゼフが近づいてくる。
「キールはーー」
片手を上げてシオリを止めた。
「離れてろ」
それだけシオリに言って、ユーゼフに近づく。
「まさか、ヴァルターを生け捕りにするのが目的だったとは」
ユーゼフが話しかけた。
「なぜ、目的を知っている?」
ユーゼフが固まった。
「演技はやめよう。レッドストームの工作員はお前だ」
「何を言ってーー」
「俺の仲間を殺したのはお前だ」
顔には”まずい”という表情。
次の瞬間、ユーゼフ・コンラドは素早く拳銃を取り出してーー俺はホルスターからUSPタクティカルを引き抜いて、相手よりも早くトリガーを引いた。
ユーゼフが拳銃を手にしている右腕に孔が開く。身体がひねった。
再びトリガーを引く。
左脚に孔が開いた。
地面に倒れたユーゼフ・コンラドが落とした拳銃ーーPSSに左手を伸ばした。俺はユーゼフ・コンラドに近づき、左手を踏んだ。
うめき声。
俺はUSPタクティカルの銃口をユーゼフ・コンラドに向けた。
「仲間の三人を殺したのはお前だ」
ユーゼフは答えなかった。
「今お前を殺したところで誰も困らないし、誰も咎める者もいない。仲間は、お前が殺したからな! 英雄になるよりも、クソ野郎になる方が簡単だ」
トリガーを引こうと
「やめるんだ、タクマ」
リンが俺の突きつけた銃を下げさせた。
「そいつを撃ち殺すなら、私はあんたの敵になる」
「だから何なんだ!? こいつらは俺の仲間を殺しまくった連中だぞ! もう……仲間は一人もいない」
「あんたの目的は復讐か?」
「違う! 俺も奴らも、この世界には居てはいけない存在なんだ!」
「あんたに必要なのは復讐じゃない、理性だ」
俺はため息をついて、USPタクティカルをホルスターに収めた。
「コイツを拘束して連れて行って」
リンが警官の一人に命じた。
「相棒は死んだ……。仲間の死に慣れてしまうのは普通か?」
ユーゼフが拘束され、連れていかれるのを眺めながら呟いた。
「か、彼は生きています」
シオリが言った。
「噓をつくならもっとマシな噓をつけよ」
「噓ではありません」
俺はホルスターに手を伸ばした。
「やめなさい、ヴァルター。彼は生きている。マノがギリギリで助けたの」
ベルがなだめるように言った。
「そうか」
「彼らはどう扱いますか?」
警官がリンに尋ねた。
「全員を横並びで並ばせろ。一人ずつ後頭部を吹き飛ばす」
「彼の言うことは聞かなくていい。ヴァルターいや、タクマ、私の部下に命令する権限はない。彼らは独房に入れる」
「なら、あんたの部下じゃない俺は好き勝手にやらせてもらう。廃鉱山の警備はどうなっている?」
「目的はゲートだと?」
「そのはずだ」
リンは警官の一人に合図した。
数十秒経ってから警官が叫んだ。
「繋がりません!」
俺はホルスターから、USPタクティカルを引き抜き、一列に並んで歩いている捕虜の一人に近づいた。
「俺はお前らの目的を知っている。この国を乗っ取るつもりなんだろう?」
言ってUSPタクティカルを突き付ける。
「なぜ、それを?」
「クーデターを起こすつもり!?」
ベルが横槍を入れる。
「そして、ゲートを開こうとしている」
「ゲートを閉じたのは、あんたらの仕業じゃ?」
「いいや、俺達はゲートを閉じていない」
「じゃ、誰が?」
俺は肩をすくめた。
「だから、マリーラ村の廃鉱山を狙っている。ここの戦闘は陽動だ」
「ああ、その通りだ」
「聞いての通りだ、俺は廃鉱山に向かう、優秀な人材を集めろ。部隊を編成する」
俺は振り向きながらリンに言った。
「彼らを連れていけ」
リンが警官の一人に言った。
「イエスマム」
警官が答えると一列に並んだ敗残兵達を連れて行った。
「彼らは尋問するためにも生かしておく」
俺はシオリの家に自分の装備を取りに戻った。この状況じゃ、これ以上、噓を隠し通せない。AK74を捨て、リュックサックからMP7A2を取り出した。
「俺は冒険者じゃない」
言ってMP7A2に装着されているスリングを肩にかけた。
「あの戦い方を見れば分かる。その銃ーー」
俺はアランの言葉を遮って言った。
「ああ、これか、短機関銃。ドイツの最高傑作だ」
「そうじゃなくて、10年前、娘を助けたのはお前ーー」
「顔を吹き飛ばされたいらしいな。地図上からマリーラ村を消すぞ」
黒いフード付きマントを捨て、隠す必要がなくなった装備を身に着ける。
「もう、マントは要らないから処分してくれ」
アランにマントを押し付けた。
「他に必要な物は?」
リンが聞いた。
「MG42かMG46」
「それがどんな物なのか分からないが、この世界にある物にして」
「それじゃ、9×19ミリパラベラム弾だ」
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