マリーラ村のお祭り
久しぶりの更新になります。
「どうだった?」
進は頭を横に振った。
「輝男とユーゼフは見つけられなかった。警戒されているのかもしれない。ただ、村からは出ていないそうだ。そっちは?」
「俺も同じだ。見つけ次第、情報共有して監視しろ」
「了解した。それと、デートに誘われたんだ」
「誰に? 任務に支障が出るから断れ」
「やだね」
「そうか、なら、一つ助言だ。守れない約束はするな」
「その助言は過去の経験から?」
「ああ、そうだ。過去の俺に『お前の判断は間違っている』って言いに行きたい」
「さっさと忘れろよ。過去に囚われているから先に進めないんだ」
「もし、相手に裏切られたら俺のところに来い。相手をボコボコにしてやる」
「安心して、その相手は私よ」
声がした方向に顔を向けるとお揃いの白いワンピース姿の美しいシオリとマノがいた。俺と進に歩み寄る。
「そうか、そりゃ安心だ」
「せっかくだから着替えてきたの、どうかしら?」
「なんでも着こなせるね!」
進がマノ自身を褒めた。 マノは自身を褒められたことが予想外だったらしく、頬を赤ながら
「えっ? あ、ありがとう……」
と答えた。
「何か変なこと言ったか?」
「失敗した経験しかないクソ野郎に聞くな」
「嬉しいの、そんなことを言ってくれたのは、あなたが初めてよ」
「私以外の女性に狙われないためにもヴァルターさんも私と一緒にお祭りに行きませんか?」
シオリが言いながら、 笑顔を浮かべてた。さりげなく、俺にボディタッチした。俺を陥れようとしているようにしか見えない。俺が答えようとした時、注目されているのに気づいた。
「キールもヴァルターもイケメンだよね」
「二人ともメガネかけていてお似合いだね!」
そんな話し声が聞こえる。
「メガネ外した方がいいかしら?」
「そんなことはないよ」
進が答えた時、村の食堂で見かけた冒険者の青年が話しかけてきた。
「二人とも美人で頭が良くて、いろんな才能がある完璧な人だ。男の趣味が悪いこと以外は」
「「で?」」
シオリとマノが冒険者の青年を睨みつけた。
「今更だけど、キールって左利きで小柄なんだね」
「マノより背が低いのが、そんなに気になる?」
「正直、年下に見える」
「冷やかしか?」
進が答えた時、マノが進の腕に抱きついて言った。
「そんなことを言う最低な奴から私がキールを守る」
「なんで、キールが良くて俺達はダメなんだよ?」
「あんた達とは違うからよ」
「キールよりも、もっといい男はいくらでもいるだろ?」
「おい」
進が傷ついたような声で言った。
「それにウザイからよ」
マノが付け加えた。
「キールが強いとは認めない」
注目されて動きずらい。目立ちたくない。奴らを根絶やしにできるのなら、俺はクソ野郎になってやる。
「何かあっても問題ありません。私もヴァルターさんを守りますから」
周囲がざわつき始めた。
「冗談じゃない! 問題大ありだ! お前らに裏切られるぐらいなら、仲間を殺しまっくた敵の死体を見下ろしている方がマシだ! 俺は、お前らのことが嫌いだ。お前の好意はゴミ箱に捨てる」
英雄を演じるよりもクソ野郎になる方が簡単だ。俺は話を切り上げることにした。
「もう、行く。お前も仕事に戻れ」
俺は進に言って、二人の男の捜索に戻った。目立ってしまう事をしてしまった。マリーラ村を歩き回りながら、念入りに二人の男を捜索したが見つけられなかった。
見落としがないといいが……。
村人やシオリ、マノの友達たちがコソコソと俺の悪口を言っている。
通りを歩いているとベルが話しかけてきた。
「シオリには謝ったの?」
「謝るのは向こうだ」
「仲直りしなさい、あんたを心配している」
ベルはなだめるように言った。
「まずは、話してみないと」
「お前も俺を責める?」
「違う」
「なぜ、あいつは俺に執着する?」
「本気であんたのことが心配だからよ」
「俺の気持ちなど分かるか」
俺はため息をついた。
進に合流しようとした時、シオリが俺についてアラン、マノ、進に相談している場面に遭遇してしまった。さりげなく路地裏に隠れて盗み聞きする。
「ーーヴァルターは助けが必要のように見える」
「私が寝ている間に、そんな話がーーそれがトラウマになっていたなんて……」
「おそらく、非常に困難な状況を乗り越えたんだろう。面構えが違う」
「その通りなんだ。君に酷いことを言ったのは、過去のトラウマもそうだけど、誰にも相談できない問題を抱えているからなんだ」
「何とかならないんですか?」
「それが解決のできない問題なら?」
進が聞き返した。
「一体、どんな国家機密を抱えているんだ?」
アランが言うと進が肩をすくめた。
「待て、待て、今のは冗談のつもりだぞ」
「それが冗談ならどれほどよかったか。僕の悩みは彼の問題を解決できないことだ。君たちの助けが必要だ。もちろん、無理な相談なのは分かっている」
「そんな大きな問題を抱えているのに一人で解決しようとしているの?」
「俺の経験上一人で解決しようとしちゃダメだ」
アランが進に言った。
「ただ、余計な詮索はしないでくれ。もし、彼が君たちの頭を吹き飛ばそうとしても僕は止めることができない」
「たとえ、拒絶されても、私はヴァルターさんを助けたいのです」
気持ちが揺らいだ。壁に寄りかかる。
シオリは俺に手を差し伸べてくれた。なのに俺は過去に囚われているせいで、彼女を拒絶した。彼女を信用できない俺がいる。彼女の顔を見れない。相談しなかったのは相談相手が次々と死ぬからだ。
「ヴァルターさん?」
顔を上げると心配した表情のシオリが目の前に立っていた。
「何でもない……」
「聞いてしましましたか?」
「盗み聞きするつもりはーー」
「辛そうな顔をしている……」
シオリはそう言って俺の頬に手を添えた。
「大丈夫ですよ」
安心させるように優しく言いながら、俺を抱きしめた。 背中を摩る。
今まで感じたことがない暖かくて安心感ある感触。
「……話さないとな」
「どうして嫌われるようなことを?」
「なぜ、俺を英雄にしたがる?」
「多くの人が目撃者だからです。あなたに助けられて、この村に帰れた時に銃撃戦になって、状態異常にも関わらずに私を守ってくれました……」
「つまり、記憶を捏造したのか」
「それは違います」
「俺がお前を助けたと信じていないのは、お前の母親だけだぞ」
「それは……」
「お前らが何を見たのか知らないが、俺には、そんな史実はない」
「?」
「なぜ、お前が俺に執着するのか知らないが俺はーー」
「ただ、私を頼ってほしいのです」
空は暗くなった。お祭りが始まる時間だ。マリーラ村ができてから50年を祝う祭りで周囲は夜でも明るい。
「お祭りの間は装備を外して身軽になったらどうですか?」
シオリが突然、言った。
「キールさんも身軽になって楽しみましょう」
俺は進と顔を見合わせた。間をおいてからマノが言った。
「武装した警官もいるし、いざとなれば、マモルやベルも応戦するわよ」
「分かった」
「それじゃ、私が手伝いますね」
俺と進、シオリの三人で荷物を置いたままのシオリの家に向かった。
家には誰もいない。
身に着けているフード付きマント、拳銃とホルスター、タクティカルベスト、その他身に着けている装備をリュックサックの横に置いた。一見すれば普通の冒険者のように見えるだろう。
俺はシオリに言った。
「先に行っててくれ」
「分かりました。会場で待っていますね」
そう言ってシオリは家から出ていった。シオリが家から出たのを確認した俺は部屋を見まわしてから進に言った。
「武器は持っておけ」
「最低限の武器だけだぞ」
進が答えた。
俺はホルスターを身につけた。USPタクティカルを引き抜き、マガジンを抜いた。残弾を確認してからUSPタクティカルに差し込む。
「問題ないな」
予備のマガジンとナイフ、フード付きマント、最低限の装備を持って会場に向かった。
「ーーお祭りのスタートです!」
賑やかな音楽の演奏が始まる。人だかりの中、シオリとマノが一緒にいるのを見つけて声をかけた。
「シオリ」
「あっ、ヴァルターさん。ちょうど今始まったところです。マントはつけたままなのですね……」
振り向いたシオリが言った。
「お気に入りのマントなんだ」
「二人ともオシャレに興味はないの?」
「「ない」」
俺とシオリ、進とマノで分かれて行動することにした。
「それじゃ、どこに行きますか?」
背後から子供の声と走る音が聞こえる。
「花火大会いつからかな?」
「わかんなーい」
「おっと」
走る子供たちを避けるとシオリの友達たちに囲まれた。
「酷いことを言われたのに、なんで一緒にいるの?」
「もう、仲直りしたの?」
質問攻めにされる。
「仲直りしたよ」
シオリが答えた。
「本当か?」
一斉に俺に疑いの目を向けてくる。
「私が先にヴァルターさんを傷つける事を言ってしまったから」
「俺は過去にシオリを助けてない。別の人だ」
「やっぱり、あんたじゃないよな」
「解決したから悪口を言うのはやめてよね」
「シオリがそう言うなら」
そう言ってシオリの友達たちは去っていった。
「あら、シオリ、ヴァルターと一緒なの?」
ユキコが話しかけてきた。アランもいる。
「ヴァルター、悩み事は一人で解決しようとしちゃダメよ。アランみたいになっちゃうから」
「分かっている」
「俺とユキコ、おばちゃんは祭りの運営をしているから何かあったら言ってくれ」
「ユキコさん今日もキレイですね」
突然、アランと同じぐらいの中年男が会話に割り込んできた。
「こ、困ります……」
ユキコが中年男から逃げるように距離をとる。
「おい、お前、与えられた仕事はどうした?」
「終わったので、その報告に」
「なら、俺の嫁にちょっかいかけずに、自分で仕事を探せ」
「了解です。ボス」
そう言って中年男は去っていた。
「あの野郎、調子に乗りあがって」
アランが言うと後方から
「いいなぁ、警戒心の強い人を落とすなんて」
「若くて、綺麗だし」
そんな声が聞こえてくる。アランが振り向きながら
「コラー! お前らサボるな!」
男二人を追い払った。
「お祭りの間は過去の事を忘れて楽しんで」
ユキコが俺に言った。
「ヴァルターもシオリを男どもから守ってやれ」
「拒否する」
「パパ、自分の身は自分で守れるよ」
俺は周囲を見渡した。様々な種族が行き交ってにぎわっていること以外は日本風の夏祭りだ。
「ヴァルターさん? 一体何を警戒しているのですか?」
何をではなく、誰をとは言えない。
『りんご飴』と書かれた看板の屋台を見つけた。
「りんご飴どうですか?」
シオリが聞いた。りんご飴の屋台に近づくと店主が声をかけてきた。
「いらっしゃい! カップルさん! デートかい?」
「りんご飴二つ」
「二つで500リーニアフランね!」
「会計は別々で」
りんご飴を買った後、カタヌキに挑戦した。俺は集中して針で形を割らずに削って、うさぎの形をくり抜いた。その後、来た進に挑戦させて、俺よりも早くひょうたん形を割らずにくり抜いた(手先の器用さで言えば進の方が優れている)。シオリとマノも挑戦したが、すぐに割れた。その後 冷たいかき氷を食べ、輪投げでは全ての輪を台に立てられた棒に投げ入れた。 たこ焼きは、タコが入っていてかなり再現されている。
すごいな、ちゃんと再現されている。俺は思わず感心した。
「美味しいですね!」
たこ焼きを食べたシオリが言った。
「そうだな。あれは、くじ引きだな」
くじ引きの屋台に向かった。俺は昔の記憶を思い出す。
昔、行ったお祭りのくじ引きでエアガンが当たったな。BB弾一発撃たずに壊れたが。
300リーニアフランを払って箱の中から1枚折りたたまれた赤い紙を取って広げると『5』の文字。
「はい、5番ね。景品は6面ダイスです」
少し大きい赤色の6面ダイスが当たった。各面に1個から6個の白い小さな点が記されている。
「要らないから、お前にやるよ」
言いながら、渡すと
「あ、ありがとうございます。私には大当たりです」
嬉しそうな表情を浮かべてシオリが言った。
「俺は射的の方がいい」
「なら、射的の屋台に行きますか?」
「ああ」
射的の屋台に向かう途中、ポップコーンを買った。射的の屋台に近づくと
「ーー最新型の魔力銃だよ」
聞き覚えのある声だった。マリーニ街の武器屋の店主、チェルガン帝国出身のドワーフ、ゲーレンだ。
「あっ、お兄ちゃん」
マモルが銃身の長い魔力弾タイプの銃を構えていた。ベル、ハンスも一緒にいる。
マモルがトリガーを引いた。独特の銃声。
発射された魔力弾は的に当たらなかった。
「クソッ、外した」
構えていた銃を下げながら、マモルが言った。
「あんたは、キールの相棒だな? 一発どうじゃ?」
俺とシオリに気づいたゲーレンが声をかけてきた。
「やってみよう。これ持っててくれ」
シオリにポップコーンの入った紙袋を渡した。マモルから魔力弾タイプの銃身の長い魔力銃を受け取る。
ゲーレンから説明を受けると同時に以前ゲーレンが言っていた事を思い出す。
魔力銃は設定で威力を変えることができて、スタンモードにすれば相手を傷つけずに無力化できる。
魔力を充填した交換可能なカートリッジ式で、切れても魔力を充填すれば再利用可能(自身の魔力を充填する事もできる)。複数携帯して魔力切れの際には交換するのが一般的で、かなり高価な武器だ。
「ーーチェルガン製の新型魔力小銃だ」
俺はチェルガン製魔力小銃をなめまわす様に細部まで調べた。木製ストックに黒い金属製の長い銃身、トリガーの上にセレクターレバーが取り付けられている。 構造は半自動だ。 セレクターは弱に設定されている。
「おい、おい、別の武器に浮気か?」
いつの間にか近くに来た進が言った。マノもいる。
「人聞きの悪い言い方するな、キール」
魔力小銃を構えた。
「何発か撃たせてくれ」
ゲーレンに言って、離れた場所にある的に狙いを合わせる。トリガーを引いた。
発射された魔力弾が的に直撃する。
「ヴァルターさん凄いです!」
「わざとらしい褒め方だな」
「本当に褒めているんです」
「それは?」
テーブルの手前、地面に置かれた金属製の機械を示して言うと
「皿を飛ばす機械じゃよ」
ゲーレンが答えた。
クレー射撃の投射器のようなものか。
「それじゃ、的を飛ばすから当ててみろ」
ゲーレンはそう言うと投射器を操作した。機械音が響くと赤い皿三枚が空中に放出された。
俺は素早く未来位置を予測して 三発放った。全て命中した。皿が砕け散る。
周囲でざわめきが発生する。
「私だってあれぐらい楽勝よ。ハンスはどう?」
「えっ? 俺? うーん、無理だな」
「ゲーレン、その皿何枚かくれないか?」
「いいだろう」
ゲーレンは言ってニヤリと笑った 。
数枚の皿を受け取った俺は皿をまとめて空中に投げ、素早く魔力銃を構えた。全ての皿の未来位置を予測してトリガーを引いた。
地面に落ちる前に全ての皿を撃ち抜いた。
周囲でどよめきが発生した。
「負けたわ」
ベルが言った。
「やっぱり、妹を助けたのはーー」
マモルが言った。
「次の的はお前だ」
進が残っている的に歩み寄った。的の横に立つ。進の意図を理解した俺はセレクターを殺傷能力のある強に設定し、構えた。周囲がざわつき始めた。
「ダメです!」
シオリが言いながら、銃身を掴んで制止させる。俺はシオリの制止を振り切って、トリガーを引いた。
進の顔すぐ横の的が吹き飛ぶ。
「!?」
銃を下ろしてシオリとマノがいる方向に振り向いた。
周囲でどよめきが発生した。
「流石、相棒だ」
進が言った。
「信じられないわ……」
マノが進に言った。
「あっ、やべ」
ゲーレンの声。機械音。俺は素早く振り向きつつ魔力銃を構え、放出された皿の未来位置を予測してトリガーを引いた。
命中して皿が砕け散る。
「今のは絶対にまぐれだ」
ハンスが言った。
「いや実力だ。目隠しされても正確に当てることができる」
進が言った。
シオリ、マノ、ベルは信じられないという驚いた表情を浮かべていた。
「敵の顔なら吹き飛ばす」
「あんたの敵にはなりたくないな」
「それで、景品はなんだ?」
ゲーレンに尋ねると
「その魔力銃でどうじゃね?」
「いいのか?」
「ああ、いいとも。その銃は、あんたに使われるべきじゃ」
「ありがとう。名前はそうだな……レーナだ」
「武器に女の名前をつけるのか?」
ハンスが尋ねた。
「別にいいだろ。本当の彼女を作るよりも楽だ」
「あんた好みにカスタマイズできるが」
「銃剣を装着できるようにしてほしい。金は払う」
「いいじゃろう」
俺はレーナと名付けたチェルガン製魔力小銃をゲーレンに渡した。
ゲーレンの横に目をやると木製ガンラックに実体弾タイプの銃身の長いホイールロック式マスケットやピストル、魔力銃が飾られている。
実体弾の点火方式は、元の世界で言う所のタッチホール式、マッチロック式(火縄銃)、そしてホイールロック式が存在している。
その一つ、銃身の長いホイールロック式マスケットの銃を示して言った。
「そっちの銃も撃たせてくれ」
「いいじゃろう」
ゲーレンはそう言ってガンラックからホイールロック式マスケットを取ると俺に渡した。
このファンタジー世界のホイールロック式はドワーフが開発した。ちなみに マッチロック式はアルティラス暦251年、【アルティラスの闇】時に開発された。
「わしら職人が造る銃の製造技法はギルドによって保護されておる」
ゲーレンが言ってペーパーカートリッジをテーブルの上に置いた。紙製の筒に弾丸と黒色火薬を詰めた紙製の薬莢だ。
日本にも早合という似た物があったな。ペーパーカートリッジよりも早く登場していたが。
俺はホイールロック式マスケット本体のゼンマイをネジで巻き上げた。
ペーパーカートリッジを噛みちぎって、少量の火薬を火皿へ注いで火蓋を閉じる。銃を垂直に構えてーー
俺が慣れた手つきで発砲までの操作を終えると
「お前さん、どこで操作を学んだ?」
ゲーレンが聞いてきた。
「昔、ちょっとな」
狙いをつけてトリガーを引く。
黒色火薬が発火し、銃声と大量の白煙が発生した。
的に穴が開く。
「どうやら、俺は銃に愛されているらしい」
俺は言ってゲーレンにホイールロック式マスケットを返した。
振り返るとマノの横に背が高く銀髪の髪をルーズサイドテールにしている女性が立っていた。
「あなたがキール?」
「はい、初めまして、マノのお母様でしょうか?」
「あら、あら、初めまして、マノの母のマリー・グローテです。二人の話は娘から聞いたわ」
言ってマリーは微笑を浮かべた。
「初めまして、商人、冒険者として活動しているキールです。こっちは相棒のヴァルター・ケーニヒです」
「ヴァルターは、どこで射撃を?」
マリーが聞いた。
「昔、ちょっとな」
「あの構え方といい、正確な射撃……どうやったらーー」
俺はハンスの言葉を遮って言った。
「秘密だ」
酒場は様々な種族の客で混み合い、とても賑わっている。両手に大量のビアジョッキを持った女性がテーブルにビアジョッキを置いた。
乾杯!
酒場は乾杯で満たされた。
「乾杯!」
俺はシオリ、マノ、進の三人でジョッキをぶつけ合う。
「アルコールが入っていない飲み物に払う金は無駄金」
俺は言ってジョッキを口に運ぶ。一気にビールを流し込んだ。美味しいヴァィスビアだ!
「やっぱり、ビールは最高だな!」
空になったジョッキをテーブルに置いた。
横にいる進がシオリとマノに言った。
「あれは特にダメな例だ。二人はゆっくり飲んでーー」
「初心者は自分の限界を知らないからな」
俺は進の言葉を遮って言った。
「コイツはお酒に強すぎるせいで自分の限界を知らないらしい」
「ドワーフですか?」
向かい側に座っているシオリが呆れながら聞いた。ビアジョッキを両手で持っている。隣にいるマノも同じだ。
シオリとマノが一口ビールを飲んだ。
「お、美味しい」
「確かに」
「僕は何度か失敗して学んだ」
「それで?」
俺は進に目配せした。
二人がちびちびとビールを飲んでいる間、俺は進から話を聞いた。
やはり、ユーゼフ・コンラドと川宮輝男が見つけられないこと、そしてゲートに関して新たな発見があったそうだ。
「内容は?」
「分からない」
「明日にも故郷に帰るとしよう」
「ビール美味しいです! 私、お酒に強いですかね? すみません。お代わりをお願いします!」
「やめとけ」
俺は酔っているシオリを止めた。
「早くない?」
ちびちび飲んでいたマノが言った時、ヒューッという風切り音の後にドン! 爆発音が響いた。
襲撃か!?
俺は酒場の入口に振り向きながら、ホルスターに手を伸ばしてーー
「待て! 待て! 待て! 花火の音だ!」
慌てた進が伸ばした手を掴んで言った。
「花火大会が始まったか」
客の一人が言った。何人かが花火の話をしながら一斉に酒場の外に出ていく。
次々と花火が打ち上がる音を聴いた俺はホルスターから手を離した。
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