ムー世界へ転移
包まれていた光が徐々に消え、俺の視界に暗闇の部屋が現れた。きっとダンジョンの中だろう。
めまいと吐き気が同時に俺を襲った。俺は押しつぶされるように倒れかけた。地面に手をつき、呻いた。
「クソ……」
タイムマシンより酷いじゃねーか!
めまいと吐き気を無視して、立ち上がり、ホルスターからUSPタクティカルを引き抜き、装着されているフラッシュライトで周囲を照らし、素早くクリアリングし、安全を確認した。
部屋は長方形で青白く輝くゲート、前方にある少し開いた気味の悪い木製ドア以外何もなかった。
保護メガネを外して何度か深呼吸する。
保護メガネをポケットに収め、耳に装着した小型ヘッドセットのスイッチを入れ、本部に報告を行った。
「こちらギフ1。調査本部、ゲートを通過、ムー世界に侵入した」
「こちら、調査本部、状況は」
小型ヘッドセットから博士の声が響いた。
「室内は前方にある木製ドア以外何もない。めまいと吐き気がする。なんで事前に教えてくれなかった?」
「すまない。説明するのを忘れていた」
博士は申し訳なさそうに答えた。
博士が続けて何かを言おうとした時、時間管理官が割り込んだ。
「了解した。ダンジョン内をクリアリングしながら出口を目指せ。通信用に小さな穴を開けるので、何かあればすぐに報告を」
「了解。調査隊を発見次第、報告する」
「頼むよ。では一週間後に定期報告を………………………」
「本部! 本部! 聞こえますか! 応答願います! 博士! 局長!」
突然、特殊回線が切れた。
振り向くと青白く輝いていたゲートは閉じられ、ただの壁になっていた。
「ダメだ……。回線が切れている」
左手で壁を叩く。
「嫌な予感がする……」
通信用の小さな穴すらない。
まさか!? 俺がムー世界に転生した直後に歴史改変されたのか!?
「やられた……。島流しにされた」
クソッ……。めまいと吐き気を何とかしないと
使えない小型ヘッドセットをリュックサックに収め、USPタクティカルを構えてダンジョンの出口を目指した。
前方のドアに接近した。ドアを静かに、ゆっくりと慎重に開けた。クリアリングする。通路は10メートルほどの真っ直ぐな通路だった。警戒しながら進み、広い部屋に出た。周囲を素早くクリアリングする。広い部屋には中央、奥にある地上へ伸びる階段だけが存在した。
階段を駆け上り、出口を見つけた。上面に木の板で隠されており、板と板の隙間から光が差し込んでいた。
フラッシュライトのスイッチを切って、片手で木の板を少し上へ持ち上げた。途端にまぶしい光が俺の顔に照りつけた。隙間から周囲を見渡した。安全を確認し、外へ出る。
改めて、周囲を見渡した。今、俺が立っている場所は開けた森のなだらかな丘、草原の広がる場所だった。
本当に魔法が存在する世界に来てしまったのか……。
木の板は地面に同化するように偽装されている。
空を見上げると赤い塊が翼を広げて羽ばたいているのが見えた。
マジかよ……。
ドラゴンだ。まるで空飛ぶ戦車だ。本当に異世界に来てしまった。
いや……島流しにされた……。
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