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行動再開

 ムー世界に転移してから一週間が経過した。

 キールの雑貨屋で手伝いながら情報収集、聞き込みを実施するが、見つからないどころか、手がかりすら見つけられずにいた。俺と進は情報収集だけではなく、冒険者を演じるためにクエストもこなしていた。


 元の世界の時間警察、調査隊にも連絡を試みたが、途絶したままだった……。


 外に出れば、注目を浴びて称賛され、女に絡まれ、シオリとマノに尾行されるようになったが、全て無視することにした。


 昔みたいに進と二人一組で行動しよう。俺はその事を進に相談した。進はすんなりと了承してくれた。


 俺と進はレッドストームが、この世界に潜伏している事を元の世界の時間警察に伝え、捜査させるために元の世界に帰る方法を探す事を優先する決断をした。


 俺は調査隊は最初からマリーニ街に行ってなかった。つまり、どこか別の場所にいるか……。考えたくないが、もう、すでに、レッドストームに殺害されているのでは? と仮説を立てた。

 進の仮説では、調査隊はレッドストームに狙われていてどこかに潜伏しているのではないかということだった。


「この世界の警察に捜索願い出せるか?」


 進と肩を並べて大通りを歩いていると、尾行されていることに気づいた。


「誰かに尾行されている」


 俺は進に言った。


「ああ、分かっている」


 歩くスピードを上げた。


「どうだ、ついてきているか?」

「ああ、荷馬車の陰に隠れて、こっちを見ている」

「尾行下手すぎるだろ、ブラッククロスじゃないな」


 俺がそう言うと


「よし、ついて来い」


 進は言って、角を曲がった。角を折れ曲がった先で待ち伏せする。


 数十秒経ってから二人の美少女が現れた。俺は偶然を装って、二人に話しかけた。


「また、会ったな」

「「ッ!?」」


 二人の美少女、シオリとマノはビックリした表情を浮かべた。


「なぜ、尾行する?」


 俺が尋ねると


「えっ……えっと……そ、その……」

「シオリがあなたに話したいことがあるみたいで……」


 マノの横でおどおどしているシオリの代わりにマノが冷静に落ち着いた声で答えた。


「俺に何の用だ?」


「えーと……その……友人たちには会えましたか?」


 シオリは話をそらした。


「いや、その代わりに最高の相棒、キールに再会した」

「そ、そうですか」

「それで、お前が探している人は見つかったか?」


 俺が聞くと


「はい、見つけました」


 シオリは嬉しそうに答えた。


「そうか」

「迷子の子供を発見して、ブラッククロスと戦ったんですよね! 凄かったです! 特に、銃を逸らすところが!」


 シオリは興奮を抑えきれてない声で言った。


「確かに、二人でブラッククロスを相手に戦うなんてすごいわ」


 マノが落ち着いた声で言った。


「ありがとう」


 進は照れながら答えた。


「褒められたくない」


 俺がそう言うと


「あのー、パーティメンバー募集とかしていませんか?」


 シオリが恐る恐る聞いてきた。


「いや、していないな。なんでそんな事聞く?」

「いえ、なんでもないです……」


 シオリは残念そうな、そしてどこか悲しそうな表情を浮かべて言った。


「丁度いい、彼らを見なかったか?」


 俺はシオリとマノに調査隊(昔のパーティメンバーということにしている)について聞くことにした

 言いながらポケットから調査隊三人が映る写真を取り出し、二人に見せた。


「いえ……もしかして、昔のパーティメンバーの方ですか?」

「そうだ」

「これ、本当に絵ですか?」


 マノが疑ったように尋ねた。


「知り合いに絵を描くのが、すごく上手い人がいてね」


「そうですか」


 マノは疑った表情で答えた。


 進は美少女二人を前に顔を赤らめている。


 コイツはそのうちハニートラップに引っ掛かりそうだ。


「何?」


 マノが進に尋ねた。


「あっ……いや、なんでもない」


 進はそう答えたが、マノを前に見惚れているのを俺は横目で見逃さなかった。


「それじゃ俺達は用事があるから、これで」


 俺は無理やり、話を切り上げ、きびすを返してその場から立ち去ろうと


「えっ……ちょ、ちょっと待って……」


 背後からシオリの声が聞えたが、聞こえなかったフリをしてその場を立ち去った。


「おい、強引だぞ」

「すまない」

「もしかしてだけど、あの二人がシオリとマノか?」

「そうだ」


 美少女二人に助けられた自分が情けない。


「黒髪の子がシオリ、銀髪の子がマノだ」


「もう少し話したかった……」


 進が残念そうに答えた。


「彼女達が信用できるとは限らない」

「……お前、過去の事を未だに引きづっているのか」

「どうだかな」


 彼女達は一体何がしたいんだ? 嫌がらせか? 早く、元の世界に帰らないと。そこまで考えた時、

 どうやってムー世界と元の世界を繋ぐゲートを開く? そんな疑問が頭をよぎる。


「相談したいことがあるんだ」


 俺は進にそう言ったが、進は俺の話を聞いていない様子で


「マノ美しかったな……」


 と呟いた。俺は進の方を向き


「集中しろ」


 と冷ややかな声で言った。


「……えっ? いや、その……」



 キールの雑貨屋の仕事を手伝い、閉店した店の地下室ーー()()捜査室で俺は机の上に置かれた調査隊の写真と進が書いたメモを眺めながら進が降りてくるのを待った。


 ゲートは一方通行なのか? いや、それはない。実際、木戸はムー世界行って戻ってきた。何かしらの方法があるはずだ。そんなことを考えていると


 階段を駆け降りる足音。

 ドアを開ける音と共に


「遅れてすまない」


 と進の声。

 俺は振り向きながら


「重要な話だ」


 進はドアを閉めた。


「で、何の話だ?」


 俺は机の方に向いた。


「もし、悪魔の森のダンジョンに行ったとして、どうやってムー世界と元の世界を繋ぐゲートを開く? それに関して何か文献は?」

「自分の調べた限り方法は……」

「元の世界からムー世界に繋がるゲートがあるなら、こちらの世界から元の世界に繋がるゲートを開くこともできるはずだ」

「世界は広い。何から調べる?」


 進が聞いた。


「転生、転移する場所だな。悪魔の森以外にも存在するはずだ。誰が、どのように、どの場所に転生、転移したか調べよう」

「例えば、トラックに轢かれて異世界転生したとか?」

「そんな感じだ」

「お前はどうやって、こっちの世界に?」

「ムー世界転移ゲート……。つまり、装置を使った。ただ、この世界で装置を作れるとは思えない」

「そうだな……。やることが山積みだ」


 進がうめくように言った。


「ああ、そうだ。何か解決策は思いついたか?」

「あの二人とパーティを組むのは」

「却下だ」

「なんでさ?」

「彼女達が信用できるとは限らないし、裏切るからだよーーいや、裏切るのは俺達の方だ」

「少しでも信用してみては?」


 俺は進の言葉を無視して


「他には」

「残念だが、それ以外思いつかなかった」

「お前、別の目的があるだろ」

「そんな事はない。ただ、利用するだけさ」

「どうやって悟られずに行動する? 機密捜査は?」

「なんとかなるさ」

「そうだといいが……」

「喉が乾いたな。何か飲むか?」

「チェルガンのビールを頼む」

「お酒はない」

「分かったよ」


 俺がそう答えると進は地下室から退室した。地下室に一人になった俺はため息をついた。



 リビングに戻るとキッチンで進がコップに左手の人差し指をかざし、氷を生成した。氷をコップの中に落とす。


「魔法か」


 俺がそう聞くと


「そうだ。低ランクの魔法だけどね」


 進が答えた。


「魔法覚えてみては?」

「魔法を覚えるのは簡単か?」

「いや、転移者達は魔力が低いから教えてくれる人がいないと、かなり苦戦する」

「そうか」

「僕は独力でなんとか」

「それはすごいな」


 進は両手にコップを持ってその一つを俺に差し出した。コップを受け取ると


「アイスティーだ」


 と進が言った。


「なんで、紅茶なんだよ」

「コーヒーの方がよかったか」

「いや、そんな事はない」


 俺は言いながら受け取ったコップを口に運んだ。

読んでいただきありがとうございます。

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