ブラッククロス
盗賊団ブラッククロスと対峙した。
俺が身構えると男がナイフを振り回して俺に切りかかろうと!
それを避け、ナイフを手にしている右腕を掴み、体勢を崩し、地面に倒す。
一発殴ると別の一人が俺の後方から飛びかかり、俺の首を締める。
地面に倒れた男が起き上がりながら、再びナイフで俺に切りかかろうと!
俺は足で思いっきり蹴り上げた。
男は手にしたナイフを落とし、背中から地面に倒れた。
俺は後方から首を締めている男の手を掴み、体を捻り、投げ倒す。
二発殴る。
進はベクターと母親を追いかけようとしたブラッククロスの二人を妨害し、その間にベクターと母親を逃がした。
ナイフを持っていた男が俺に体当たりする。俺は空き家の壁に打ちつけられた。
殴りかかる。
俺はそれを防御する。
殴り合い。
俺は男の腹を殴り、呻き声を上げ、怯んだところを両手で掴み、思いっきり男を空き家の壁に叩き付けた。
進の方を見ると既にブラッククロス二人を倒したところだった。その時
詠唱を唱える声が聞こえ、魔法使いが進に向け、魔法を放とうと!
進は道端に落ちていた小石を拾い、魔法使いに投げつけた。突進。体当たり、制圧した。
親子が呼んできたのだろう。警官が数人が駆けつけ、地面に落ちた杖、武器を回収し、ブラッククロスの三人を拘束した。
「腹ばいに! 手を出せ! 拘束する!」
進は言いながら、制圧したブラッククロスの魔法使いの手をロープで縛る。
俺の後頭部に何かを突きつけられる感触。
俺はミスをしでかした。
「こっちを向け」
俺はゆっくりと両手を上げながら後ろに振り向いた。
壁に叩きつけた男が拳銃の銃口を俺の眉間に突きつける。
「このクソ野郎!」
トリガーを引こうと!
俺はとっさに両手を伸ばして銃のスライドを両手でしっかり握りつつ、銃口を逸らす。
バン!
耳元で銃声が響いた。
悲鳴。
膝蹴り、銃を持っている手を捻って銃を奪う。
スライドを引き、排莢。次弾を薬室に送り込む。
奪った銃を相手に向けたまま距離を置く。
銃を確認するとトカレフTT-3だった。
「動くな」
俺がそう言うと相手は観念したかのように両手を上げた。警官一人が慌てて駆け寄り、拘束した。
俺はトカレフTT-3を下ろし、周囲を見渡して安全を確認した。
耳元の発砲音のせいで耳が痛いが無視する。
「銃を」
警官の一人が手を差し出してきた。
俺はトカレフのマガジンを抜き、スライドを引き、薬室に残っている弾を排出した。
そして、下に向けて空撃ち。
持ち替えて、グリップを相手側にしてマガジンと共に渡す。
「あなたは?」
「ヴァルター」
「僕の名前はアイザック」
警官はそう言い、進の方に向き
「ありがとう。キールさん」
と言った。
「どういたしまして」
進は答えた。
どうやら、進と警官は知り合いらしい。周囲を見渡すと人だかりができていて、その中にシオリとマノがいた。目が合ったが、俺は目をそらして見なかったことにした。
発砲音でやられた耳は治癒魔法で、治してもらった。
「この銃どうなっているんだ」
警官たちの会話を横目に俺は進に尋ねた。
「ここの警察は信用できるのか?」
「もちろん、できる」
「お話し中、申し訳ない」
と先ほど、トカレフを渡したアイザックが話しかけてきた。
「何があったのか、説明してもらっても?」
俺は事情を説明した。
「それで、あの親子が教えてくれたんだな」
「そうらしいな」
「どうして、銃の扱い方を?」
「奴らと戦った事があるんだ」
「キールさんみたいに?」
「そうだ」
「そうですか……。申し訳ないが、その話を含めて、改めて話を聞きたいので署に」
「分かったよ」
進の方を見ると進は軽く頷いた。
「それじゃ行こうか」
俺は言いながら進とグータッチした。
その瞬間、人だかりの中から
「キール凄いぞ!」
「やるな! キール! もう一人の方も凄いぞ!」
と称賛する声が
俺はそれを無視した。
「お前、相当、住民に信頼されているな」
「人間不信のお前とは違うんだ」
「誰が人間不信だ?」
「お前だよ」
「ちなみに、キールさんとヴァルターさんとの関係は?」
アイザックが尋ねた。
「僕の相棒さ」
進が答えた。
「最高のをつけ忘れているぞ」
俺がそう指摘すると
「訂正、僕の最高の相棒さ」
と答えた。
俺はアイザックに尋ねた。
「あなたとキールの関係は?」
「彼とは知り合いなんだ。ブラッククロスの捜査に非公式に協力してもらっているよ」
と答えた。
「そうか」
「あの銃は?」
進が小声で聞いてきた。
「トカレフTT-3だった。お前が言った通り、レッドストームと何か関わりがあるのかもしれないな」
俺がそう答えると
「ブラッククロスに直接、レッドストームとの関係を聞くか?」
進は小声で言った。
続けて小声で文句を言った。
「何が目立たないように行動だ? めっちゃ注目されているぞ」
連行されていくブラッククロスが視界に入った。
俺は連行されていく五人に向け、言った。
「俺らの一日を台無しにしてくれてありがとう!」
警察の面倒な捜査と聴取から解放された俺達は賞金を受け取り、アイザック警官が教えてくれた食堂で遅い昼食を終え、調査隊の聞き込みを開始する。
「じゃあ、その賞金で戦艦フリードリヒ・デア・グローセを造ってくれ」
「カイザー級戦艦でいいかな?」
「カイザー級もいいが、H級戦艦だな」
「嫌です」
「即答ありがとうございます」
「真面目な話、生活費、活動費の足しにするべきだ」
「全て冗談だよ」
「ああ、分かっている。そもそも、図面がないから造れない」
と進が答えた。
「そういえば、お前の作っているカードケースってどんなやつ?」
俺が聞くと進は紐に繋がれたカードケースを取り出して二つのカード、冒険者カードと商人カードを俺に見せながら言った。
「このカードケース僕の手作りで結構売れているんだ」
その日、帰宅した俺は進からカードケースを購入した。
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