図書館
図書館に到着した俺達は早速、『悪魔の森』の歴史について調べることにした。
アルティラス暦500年を記念して書かれたアルティラス歴史書によると
500年前、魔王は自身の強大な力を使い、この世界を支配していた。
現在のマリーニ街の北西の森に初代勇者が操る機械が墜落した。初代勇者がこの地に降り立つと魔王軍を一撃で殲滅した。
これが奇跡の兵器と呼ばれた所以だった。彼は当時のリーニア国王の願いを聞き、魔王を滅ぼす決意を固めた。
やがて初代勇者は魔王を討つべく旅をする。奇跡の兵器を駆使し、魔王を追い詰めた。激戦の末、ついに打ち取られる魔王。
住民を解放し、平和をもたらした。魔王との戦争に勝利した記念として、アルティラス暦が作られた。
初代勇者が意図しない転移でこの森に転移してしまい、それ以降、別の世界から転生、転移した人たちが出現するするようになった。また、危険なモンスターの生息地、ヒーリングマッシュルームの群生地であるため、定期的に調査する必要がある。
理由は解明されていないが、悪魔がこのようなことをやっているのではないかと噂されている。それが、きっかけで悪魔の森と呼ばれるようになった。
初代勇者はアルティラス暦が作られた後、最初の法律を作った。過去、未来に行く道具、魔法を作ってはならない。そして、歴史を改変してはならないと。
「異世界のわりには法律とかしっかりしているんだよ。この情報だけで初代勇者が時間犯罪者の可能性がある」
「そうだな……。だが、ダンジョンについての記述はないな……」
「隠蔽されているのかも」
「初代勇者ってことは、二代目がいるってことか?」
「その通りだ。250年に復活してな。『アルティラスの闇』って言うんだ。プロゼン王国ーー今のチェルガン帝国だ。出身の勇者が完全に魔王を滅ぼしたんだ。その時に使用した兵器も奇跡の兵器って言うんだ」
悪魔の森を調べ終えた俺と進は奇跡の兵器について調べることにした。
「これを見てくれ、奇跡の兵器についての記載が」
そのページを見ると
『過去、未来……世界から世界へ移動できる機械ファケバイン』
と書かれていた。
「僕が知っている『ファケバイン』の名は第二次世界大戦のドイツで開発されたフォッケウルフTa183の愛称と武装タイムマシンの二つしかない。描写からして後者の方だろう」
横にいた進が言った。
ファケバインの性能、原動力について記載されていたが、俺が知っているタイムマシンの情報と比べて、内容が改変されていた。
「問題なのはこれだ。核兵器としか思えない」
進は言いながらページをめくった。
『地上の太陽。それは太陽一万個以上集めたほど明るく炎と煙が輝く柱となり、空に上がった。巨大な死をもたらすーー』
確かに、これは核兵器を連想させる。
『使われた痕跡はない。もし、地上の太陽が使用された場合、その土地は汚染され、ガラスの大地となり、暗黒の日として記憶されるだろう』と
他にも奇跡の兵器の描写と思われる内容が書かれていたが、どれも現代兵器としか思えない内容だった。
なんてことだ……。俺と進は顔を見合わせた。
「信じたくないが、お前の推測通り、初代勇者は時間犯罪者だろう……。その後、初代勇者勇者はどうなった?」
「それが分からないんだ……。突然消えたらしく」
「そうか……。500年以上前の情報は?」
「これ以上は遡ることはできない」
「なぜだ」
「歴史の情報が隠蔽されているからだ」
「時間犯罪者の関与は?」
「可能性はある。分かっている事は魔王のせいで技術が衰退したことぐらいで、隠蔽されてきた情報の一部は学者たちによって発掘、修復されたんだ」
修復された情報の内容は以下のような感じだ。
遠い昔、創造神によって、この世界が創造された。この出来事を『世界の始まり』と言う。
人間、ドワーフ、エルフ、そしてオークとゴブリン彼らは世界の始まりから存在しているとされている。
魔法。このアルティラス大陸において、魔法を研究することは禁じられていた。長きに渡り、魔法は邪悪な力として認識されており、その力を操る者は捕らえられて魔女裁判の被告となり、火刑に処されるのが当然だった。魔法とその力を操る者に対する認識が転換したのは[不明]大戦時であった。以来、優秀な魔法使いを続々と育成し、目覚ましい国防力の増大を見せたのである。
続きは完全に削除されている。調査が必要だ。
「ほとんど欠損しているじゃないか」
俺がそう言うと
「そうなんだよ。不明点が多いし……。そもそも、何で隠蔽する必要があるんだ?」
進は答えた。
「地上の太陽関連とか?」
「あり得る」
「もし、レッドストームがタイムマシンをこの世界で使えるように改造して、地上の太陽を過去から奪おうと計画しているとしたら?」
「俺はタイムマシンを改造したこともないし、修理したこともないが無理だろう。昨日の探時機見ただろ」
「ああ」
「調査隊を見つけて、元の世界に帰る方を優先しよう」
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