死後硬直(EL RIGOR MORTIS) ~死んだ友に捧げる詩~
どんなに華やかで幸福な、
そう、それはもう
暖炉の前での祝福された団欒を
積み重ねた者達も、
大きな魚を釣り上げ、
最高の笑顔で一日を終えた者達も、
人生の最後に訪れるものは
死後硬直の顔だ。
¡¡Acontecimiento inevitable!!
ああ、心臓病により、
顔を恐怖に引きつらせ、
舌を出し、
涙を流しながら息絶える・・
それはそうだよ。
我々の人生は
沢山の死骸によって作られた
土壌の上で営まれる。
ああ、海底で
付着する長桿菌達によって殺された
ウニ達の骨を住処に、
環形類達が栄える無慈悲さを
地上の者達は恥じて隠蔽する。
我々は生まれた瞬間から
葬儀への予行練習を始め、
幸福な瞬間が、
力強い笑いが、
沢山の愛で溢れた時間が、
死後硬直の
強張った表情になるまでそれを続けるのだ。
ああ、サンタ・アンドレス教会の
礼拝堂に腰かけた悪霊が語り掛けてくる。
「ねぇ、君。
それでも
人生の[美しさ]を信じるのかい?
バラ色に染まった頬は
やがて必ず青黒く呈色し、
誰もが死の下男,下女となる。
道をかけていく少年も、
いつか、レコードから
アント・ヘイガースが流れる傍らで、
胸を押さえ、割れたグラスの横で
苦悶の表情を浮かべ横たわる
緊張する肉となるというのに・・
朱色の足を持つ巻貝の中に住む
珍妙なる吸虫、
砂地の中の鰓曳動物、
遺棄された内臓に止まる蠅・・
おやおや、
彼らは知っているんだ。
笑顔を失った
一人でいる時の顔は
[死]を何よりも理解しているのだとね。
そんな無残な死に対して、
社会的に認証された死後保存を施し、
臓物を埋葬し、
群がる黒蠅達の羽音を隠そうとしても
無駄な事だよ。
[死の痛み]は、遺族達に
幸福な時間の敗北を伝えてやまない。
[この者は不幸であった・・]と。
くり返される外出から
出勤簿への記入の間に
語られる事のない[死]は
必ずあらゆる者を敗北させるのだ。
生者達は、
切り身の魚の中から死を隠蔽し、
生臭い血を瀉血する事で
映写機に写る幸福の標本を作り出す。
それは絶望の料金後払だ。
君達の幸福など、
結局は不運という悪霊によって
不幸に変わり、
最後は悪業が勝利し、
笑うじゃないかね」
ああ、だが
悪霊よ・・
愚者よ。
華やかな他者の袖飾りしか見ない者よ。
お前達は何も知らないのだ。
それでも私は言う。
幸福とはそんなものではなかった。
結局の所、祝福とは、
ただ美しい飾りではなかったではないか、と。
人生とは綺麗毎ではない。
そして、幸福なあの時間もまた、
墓地の土で汚されるものではないのだ。
さぁ、傷口から流れ出る血を笑え!!
魂の底からのユーモアで
人生の痛みなど蹂躙してきた様に!!
死後硬直の
引き攣った顔を綺麗に整え、
腐汁を拭き取り、
屍衣を被せ、
棺桶の蓋を閉めて、
我々は言うのだ。
「それが幸運だ」
と。
そうだ。
幸福とは、
いつでもそうであった。
神の愛が、いつでもそうであった様に。
苦悶して引き攣った顔をして、
舌を出して見苦しく死にながら、
「それでも幸福であったよ」と笑う。
人生とは、いつだって
その手の喜劇であり、
諸君・・
実に下らなく、高尚なものだ。