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第1話 ダンジョンズ・プリンセス


 なんでもできる――は言い過ぎか。


 恋愛、キャラメイク、キャラ成長。

 戦闘、ハクスラ、クラフト。


 そして……モンスター育成。


 ゲーマーの心を満たす要素の山。

 それがこれでもかと実装された傑作。


【ダンジョンズ・プリンセス】。

 ――通称”ダンプリ”。


 俺はこのゲームに、欠点という欠点を見出すことができない。


 あ、一つだけあるかな。

 プレイしていると、恐ろしいほど早く時間が溶けることだ。



  ▼



 ――fin.


 そんな一文字がモニターに表示される。

 瞬間、俺は歓喜した。


「ぃやったああああ! クリアだあああ!」


 コントローラーを放り投げ、立ち上がって万歳。

 しかしそれも束の間、


「……終わってしまった」


 俺の心に虚しさが到来する。


「これから俺は、なにを支えに生きればいいんだ……」


 圧倒的、虚無。

 そう感じるほどに、たった今クリアしたゲームは面白かった。


【ダンジョンズ・プリンセス】。

 ――通称”ダンプリ”。


 間違いなくこれまでの人生で一番やり込んだゲームだ。


 総プレイ時間は1500時間を超える。

 これから先の人生で、これ以上の傑作とは出会えないかもしれない。


 恋愛ゲームというジャンルにもかかわらず、内容は大作ファンタジーのそれ。


 地球と同等の広さのオープンワールド、

 美しいストーリー、

 魅力的なキャラクター、

 奥深い世界観に目を見張る演出、


 なにより凄いのは、やり込み要素である。


 メーカーが「プレイヤーの時間を溶かしたくて作りました」とSNSで呟いてたけど、伊達じゃなかった。


 恋愛、キャラメイク、キャラ成長。

 戦闘、ハクスラ、クラフト。

 他にも圧倒的なゲーム内コンテンツの数々。


 マジで大抵のことができてしまう。

 中でもネットで話題になった部分。


 それが、”モンスター育成”の中毒性。


 これが本当にヤバくて――


「うおっ……マズい、急に眠気が……」


 クリアの達成感からか、急激な睡魔が襲ってくる。

 春休みを利用して三日ほど寝ずにプレイしてたからな。

 無理が祟ったのかもしれない。


「少し寝よう……」


 朦朧とする意識のまま、俺はベッドに倒れ込む。

 

 ああ、くそぅ……。

 この余韻に永遠に浸っていたいのに……。

 起きたら、もう一回最初からプレイするか……。


 いっそのこと……もうダンプリの世界で目覚めないかなぁ、なんて――。



  ▼



「――おめでとうございます奥様!」


 そんな大声に起こされる。

 なんだか喜ばしそうな女性の声だ。


 ……んぉ?

 奥様ぁ?


 誰のことを言ってるんだ?

 俺は男だぞ?

 しかもまだ大学生。


「元気な男の子ですよ! ご覧ください!」


 同じ声の女性がまた叫ぶ。

 次の瞬間、俺の全身がグワッと揺さぶられた。


 ――うわあ!?

 なっ、なんだぁ!?

 身体が持ち上げられてる!?


「ああ……私の赤ちゃん……」


 さらに抱きかかえられる俺の身体。

 どうやらもう一人女性もいるらしい。


 なんだ?

 なにが起こってるんだ?

 俺は流石に困惑して、目を開けて周囲を確認しようとする。


 ……瞼が重い。

 全然開かん。

 っていうか全身が思う様に動かせない。


 まるで自分の身体じゃないみたいな――


「さあ……声を聞かせて、私の坊や……」


「ば……ぶぅ」


 ――え?

 今の、俺の声なのか?


 反射的に声が出たけど、丸っきり赤ちゃんの声じゃねぇか!


「ば、ぶぅ。ばぶぅ」


 しかもばぶぅ以外なんも言えんし!

 一体どういうことなん!?


「ああ……大いなる女神フレイヤよ。この子をアースガルドに誕生させてくれたこと、感謝いたします……!」


 ……ん?

 ちょっと待って。

 今、なんて言った?


 “大いなる女神フレイヤ”

 ”アースガルド”

 ……そう言ったか?



 それって――確か【ダンジョンズ・プリンセス】に出てくる名称なんですけど。





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