王太子vS巨大隕石〜真実の愛は世界を救いますわ〜
「公爵令嬢マーガレット!俺は真実の愛に目覚めたから婚約破棄だ!」
八月のクソ暑い真っ昼間。私の婚約者の王太子は冬服で私の前に現れ指を突きつけ叫ぶと、ゆっくりと身体が浮き始めました。
「な、なんだ!何故俺の身体が浮いているのだ!それに、卒業パーティは半年後なのに何故俺は婚約破棄したんだ!というか、真実の愛を告げる相手すら見つかってないぞ!」
「フフフ、実験は成功みたいですわ」
「じ、実験?何の話だ!」
近くの屈強な衛兵にしがみつき、浮上する身体を抑えながら殿下は質問してきました。
「卒業パーティの日を今日に、会場を巨大隕石の中心に再設定しましたのよ」
「ハァ~、巨大隕石?」
間抜けな殿下は巨大隕石がこの国に落下する事も知らなかったみたいです。そんなだから、卒業パーティで婚約破棄する馬鹿になってしまったんですよ。まあ、今回はその馬鹿が世界を救うかも知れないから感謝ですが。
「殿下、今日は夏にしても暑すぎませんか?それは巨大隕石が迫ってるからなんです。我が国にはこれを破壊する手段は一つしかありません。それは無敵化した殿下が中に潜り込み、隕石の中心でざまぁされて果てる事ですわ」
「ちょっと何言ってるかわかんないだけど」
「うるせえ!時間がありませんわ!屈強な衛兵!殿下を投げなさい!」
私の命令に従い屈強な衛兵は殿下を一本背負いで地面に叩きつけると、殿下はぐったりとしてスーッと浮上していきました。
「ヨシ!行き先を追跡しますわよ!屈強な衛兵、望遠鏡を!」
屈強な衛兵から望遠鏡を受け取り殿下が無事に隕石に向かうか要チェックやですわ。
高度千メートル。殿下は何故こうなったのか後悔し頭を抱えていましたわ。
「ヨシ!」
高度五千メートル。殿下は暑さに耐えきれず服を脱いで全裸になりましたわ。
「ヨシ!」
高度一万メートル。隕石が間近に迫り、殿下の身体が発火しました。愛はバーニングですわ。
「でも、まだざまぁが済んでないから生きてる!ヨシ!」
そして、遂に殿下と巨大隕石がドッキング。殿下は悶絶しながらめっちゃ硬いはずの隕石の中に沈んでいきましたわ。やがて、隕石のコアが殿下に置き代わり、それによって隕石の表面に殿下の間抜けな顔が現れましたわ。
「これにて準備は完了ですわ!殿下ー!聞こえますかー?私、貴方の事ぜーんぜん愛してませーん!婚約はとっくの昔に解消され、今はこの屈強な衛兵が婚約者ですわ~チュッ♡」
私からのざまぁを受け、殿下隕石は顔を真っ青にしてひび割れていきましたわ。
「さらに言うと、殿下が本来の卒業パーティで行う冤罪の証拠は既に私の手元にありますわ~!殿下が来月会う予定の男爵令嬢も修道院ですわ~!」
殿下隕石は顔を真っ白にして崩壊していきますわ。さて、最後の一押しですわ。私は【どくはい】と書かれた弾を屈強な衛兵に持たせ大砲に詰め込みましたわ。
「うらー!毒杯を賜れですわー!」
屈強な毒杯ダンクが直撃し、殿下隕石は儚くなりましたわ。そして、殿下隕石の破片は宰相と騎士団長の実家にのみ降り注ぎ、王国は実質ノーダメージでしたわ。やったぜ。
「全てヨシ!」
私は仕事を終え着地した屈強な衛兵とがっしり抱き合うのでした。
こうして私、天才公爵令嬢マーガレットは馬鹿王子と巨大隕石を同時に処理し、才女として称賛され、屈強な衛兵と結ばれましたのよ。めでてえですわ!