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悪役やめい

ライブ視聴者が3ケタ越えた。

そろそろ配信開始しようか。


ほぼ毎日、午後6時から配信開始している。普通の学生なら学校行って部活やって、なんやかんやしていたらこの時間に動画のライブ配信なんてできない。

しかし、ゲーム以外の生活のほとんどを切り捨てている俺にはそんなコトは造作もない。


ライブ配信は夕方から始めているが、午前中は別ゲーをやったり、ライブではない動画の編集なんかをやっている。『Rondo Adventurer』の生産系の作業をやったりもしている。生産場面はあまり配信向きじゃないから、配信外でプレイしているのだ。


みんなが学校で勉学に勤しんでいる中、自室で1人動画作成に取り組むのは、始めはいささか抵抗感があったがもう馴れてしまった。少しの良心の呵責も感じない。むしろ、これが俺の天職だと考えると学校で勉強するのがバカバカしくすら感じる。



【よーし、じゃあ今日も元気よくはじめましょうかね】


モニターには、俺のプレイキャラ、魔法戦士のショーの顔がアップで映し出されている。


金髪碧眼、ハンサムでイケボ。理想を絵に描いたような造形だ。俺とは似ても似つかない。

キャラクターはゲーム開始時に自分で自由に作成ができて、その作ったキャラによってもNPCの反応が違うらしい。

ゲーム内での会話内容も蓄積され、NPCの行動や関係性に影響する。異様なほどコミュニケーションに重きを置いた作りになっている。制作陣はかなりの寂しがり屋揃いだったのかもしれない。




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【チャット民】


ランダム娘:『ばんわ〜ノシ』

ぽんこつ総大将:『やったぜ!間に合った。ミイアたそ〜』

やほやほ:『神ゲー』

かのん★★★:『ショーさんこばわ』

ジューダイン:『一番ノリ!』

太陽神:『お尻大丈夫?』

いってらBOY:『そっか、ショーさん、尻の部位破壊されたんか』


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さっそくコメントが届く。常連の視聴者さん達だ。

わざわざ時間と通信料を使って俺の配信を楽しみにして下さっている。こんなに嬉しいことはない。


【お尻は痛いけど、死ぬほどじゃない。大丈夫、ありがとう。そうだな。今日は街の西にある森の方に行ってみようかな。前回、ヒュドラさんにボコボコにされたからね。今回はレベル上げメインかな。ショーのじゃなくてパーティメンバーの】


三ツ首竜のヒュドラは、昨日挑んだエリアボスだ。奮戦虚しく全滅させられてしまった。ショーの能力はヒュドラ戦に十分通用するレベルだった。仲間が普通に支援してくれていれば勝てる戦いだ。



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【チャット民】


やほやほ:『リベンジリベンジ〜』

えらすごすTV:『おこんばんわ。いきましょー』

MIHON:『レベルアップ』

ランダム娘:『ゴブリン千匹耐久戦だ』

ジューダイン:『エイレイン様どこ?』


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【う〜ん、でも勝てる気がしないな。メンバーを鍛え直さなきゃ。特にミイア。主にミイア。あと、ダンクさん裸で竜のブレス耐えてもらって、そしたら勝てる】


ところ構わず寝てしまうミイアだったが、実は起きていても大した戦力にはならない。ファイアーやコールドといった初期の魔法も2回に1回は不発だし、呪文詠唱も30秒くらいかかる。オマケによく呪文を嚙む。


【せめてまともに魔法発動させてもらわんと戦力外だな〜】



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【チャット民】


ぽんこつ総大将:『コラー、ミイアちゃんのリストラ許すマジ』

MIHON:『絶対外しちゃダメ。縛りプレイ継続でヨロシく』

マッドショット:『こんなダメパーティ初めて見たよwww』

ジューダイン:『ダメっ子最強じゃん』

アベマリオ:『別のヤツ入れたら勝てるんじゃね。ヒュドラ程度で詰まるとか笑えるんだけど』

よよよよ:『ミイア使ってる人珍しいw』


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とりあえず宿屋の自室を出て、冒険者ギルドの建物に向かう。

この町の冒険者ギルドは三つある。

ひとつは領主館の隣にある大きな建物。俺の宿敵ともいえるグレイソンが運営している町一番の大ギルドだ。次に大きなものは町の入り口にある。そして、俺たちが所属するものは一番小さいが町の中心部に位置している。

大きな広場に面しており、その広場には所狭しと店が並んでいる。人や物の流れはここに集約されて町のあちこちに広がる。いわば町の心臓のようなものだ。


今日もたくさんの流れに乗ってギルド会館の入り口をくぐる。

剣や槍、弓や杖など様々な武器を装備した冒険者たちが行き交う。2階建ての吹き抜け構造になっており、入り口入って正面奥には冒険者が仕事の受注や事務手続きを行うカウンター。左手には2階に続く階段とギルドへの依頼を貼り付けた掲示板がある。


ホールに並べられた机には昼間から酒を飲んで騒いでいるグループもいれば、静かに次の冒険の計画を話し合うグループもある。一仕事終えたところなのか、疲れ切って身体を椅子にベッタリとくっつけて動かない一団の姿も見える。


我がパーティメンバーは探すまでも無かった。なぜなら彼らは、ホールの隅のいつもの場所で一騒動起こしているところだったからだ。


「テメェら、ソコは俺たちの定位置なんだよ。サッサと場所を開けやがれ」


知性も品性も削げ落ちたかのようなガラの悪そうな因縁の付け方だ。こんなヤツはすぐさま敵認定して顔面にパンチを入れてやる。


それが身内だったらなおさらだ。


「コラッ。他所様に御迷惑かけるなっ」


四角く硬い横っ面に丸めた拳を思いっきり叩きつける。


「なんだ。ショー。痛いじゃないの」


ダンクさんは平気そうな顔で頬に手を当てている。渾身のグーパンだったのに、こっちの手が痛いわ。岩かよ。


「なんだじゃねーよ。なにつまんない因縁つけてんだよ」


普段俺達が管巻いている机には初心者らしき男女の冒険者たちの姿があった。こちらのやり取りに怯えているようである。


「しかし、ボス。この不届きなガキどもが俺達の席を盗みやがったんだぜ。この際冒険者の上下関係ってヤツを教えてやらねえといけねえだろ」


「誰がボスだよ。ここのギルドの席が誰の物かなんて決まってないし、他にも空いてるだろ。お前たちも一緒にいたなら止めろよ。ホラ、こっち座るぞ」


「何を言っている。ショーよ。我等が領域を侵す者が現れたのだぞ。それはもはや敵。敵は速やかに排除。コレ常識」


フトコロから切れ味鋭そうなナイフをわざとゆっくり取り出して見せびらかすエイレイン。完全に悪役。


「え〜。ミイアの席、気に入ってたのにな〜」


と、彼女が指さすのは、ウサギ型のクッション付き背もたれとウサギ柄の座布団を敷かれた椅子。専用感が強すぎるためか、初心者君たちも遠慮したようでさすがに誰も座っていない。


「悪い。コイツらちょっとアレなんだ。ゴメンな。ごゆっくり」


「オイ。ショーよ。敵の排除はどうした?」


「俺たちの席を取り返し……」


「やらねーよ」


「ミイアの席……」


「ほら、コッチに置いてやる。はいはい動かしてやったぞ。これで満足か?」


まだビビってる様子の初心者冒険者に軽く詫びを入れてまだなにか言いたそうなダンクさんたちを引っ張り別の席に着かせる。




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【チャット民】


またたびワンコ:『モブ敵感ヤバすぎW』

あるぱぱ:『チンピラですやん』

やほやほ:『もう少し放っておけば面白いのに』

かのん★★★:『笑うしかwww』


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放っといたら普通に席譲らせて気まずい感じになるだけだからね。ゲームキャラだけど、身内の恥晒してハズい。


「そんな事より、今日の依頼だ」


掲示板から取ってきた依頼を机に広げる。

冒険者ランクDの依頼だ。


「こんなチンケな依頼を受けるのは承知できんな」


腕組みするエイレイン。あんた毎回ほとんどなんもしないだろ。


「簡単な依頼だ。裸でも構わないだろ?」


「ミイアはなんでもいいよ。ショー君におまかせコース〜」


「ダンクさん、ミイア。今回はふたりで依頼をこなしてもらう。俺とエイレインは見届けるだけ。着いては行くけど手出しはしない。いいね」


「良かろう。お前達が高みに近づくなら、私に異論は無い」


「ぜーんぜん良くない。ミイアを殺す気なの? 嫌いなの? 捨てるの〜?」


僕らは既にBランクの冒険者。Dランクの依頼なら一人でも難なくこなせる力量があると見なされる。

ちなみに冒険者はEランクから始まって最高位はSランクになる。依頼内容とそれを達成した回数などでランク変動が検討される。ランクは冒険者カードで管理される。


「なになに、ゴブリンリーダーの討伐、ですか。腕が鳴りますなぁ」


ダンクさんは二の腕を無意味に出して力こぶを作っている。


「こんなのりーむーだよ〜。ミイア死んじゃうよ。死体とかヤでしょ。キモいでしょ。考え直そ」


「ダメ。さっさと行こう。日が暮れるとゴブリンも狂暴になるぜ」


必死の抵抗を見せるミイアを引きずってギルド会館を出るのだった。



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【チャット民】


太陽神:『エイレイン様クールすぎん?』

えらすごすTV:『ついにパーティー強化にのりだすんか』

やほやほ:『ゴブリン退治はさすがにイージー』

ぽんこつ総大将:『ミイアちゃん泣かすなよ。分かってるよな、な?』


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