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第31話 これって告白ですよね。恋愛の神様教えてプリーズ。そしてラッキースケベはやっぱりあったよ。

 今日は携帯を家に忘れた。


 仕事中はどうせろくに見れないから然程影響はないけど、何か嫌な予感がする。


 そしてそういう時に限って残業となる。


 駅を降りたらもう22時過ぎてるし。


 アパートの階段を登り3階に着くと部屋の扉の前に誰かが体育座りで座って俯いているのが見えた。


 「あれ、部屋の前に誰か…」


 って友紀さんじゃないか?


 「どうしたのっ?大丈夫?」


 声を掛けた。身体も揺すった。でも起きない。


 ただ呼吸をしているのは確認出来た。良かったと安堵するも起きないのは普通じゃない。


 玄関の鍵を開け、友紀さんをお姫様抱っこし、一緒に持ってきていた荷物と自分のカバンを持って部屋の中に入った。


 電気や鍵は後だ。


 何となくの薄明かりで自分の部屋に運び、とりあえず友紀さんをベッドに寝かす。


 荷物やカバンはテーブルの上に置いた。


 「失礼するよ。」


 おでこに手を当てると特に熱いという事はない。


 ただ、何があるかわからないので濡れタオルと暖かい飲み物の用意をする。


 その前に玄関に鍵をかけ明かりを点けた。


 あ、靴…


 慌てて友紀さんの足から靴を脱ぎ取り玄関に持っていく。


 多少の汚れを気にしても仕方ない。


 特に熱いというわけではないが濡れタオルで軽くおでこを中心に顔を拭いた。


 流石に体温は計れない。脇や尻に体温計突っ込めないし。

 

 口ならいけるかもしれないけど…こないだみたいに怖がらせてもいけないし。


 そうこうしてると友紀さんが目を覚ました。


 そして第一声が。


 「知らない天井だ。」


 お決まりですねー


 「大丈夫ですか?」


 「……ぁ、ここは?」


 「俺の家の寝室。」


 目線を少し動かしながら辺りを見やる。


 「あ、ありがとうございます。どうやら寝てしまっていたようで。」


 「気持ち悪いとか調子悪いとかは??」


 「え、あ、大丈夫です。最近頑張り過ぎてあまり休めてなかったので…多分疲労なだけかと。」


 「そ、そうなの?本当になんともない?」


 「えぇ、今は落ち着いてます。」


 そっかー良かったー。熱出してインフルとかだったらどうしようかと思ったよ。


 「今日…携帯忘れていかれたのですね。」


 「あ、あぁそういえば。気付いたのは会社着いてからだったから。仕事中はそうそう弄れないし良いかって。でもそういう時に限って残業になるし、胸騒ぎがするしで急いで帰ってきたら…」


 「私が倒れてた…というか玄関前で座っていたと。」


 「そう。病気か何かじゃなくて良かったけど。」


 「じゃぁまだメールや着信は見てないのですね。」


 そういえば忘れてた。友紀さん運んでからもてんてこ舞いだったし。


 「暖かい飲み物持ってくる。」


 台所に湯銭にかけていたMAXコーヒーも取りに行く。


 以前の逆パターンだ。


 「はい。やっぱり俺達ならこれかなって。」


 「なんとなくわかってました。本当縁があります。」


 「蓋開けようか?」


 大丈夫ですと濡れタオルで缶を持ち自分で開けていた。


 力が入らないという事はないようで少し安心した。


 「あつっ」


 外との寒暖差もあるし体感的にはより熱く感じてしまったようだ。


 それだけ身体が冷えてしまっていたという事か。


 「ゆっくりでいいよ。身体冷えてるしさ。」


 10分くらいかけてちびちび補給していた。

 リスみたいで可愛いぞと思ったが言えなかった。


 その間に携帯を確認したら驚いた。


 着信の1面は全て友紀さんで埋まっていた。


 そしてメール


 「今日はお仕事終わった後時間ありますか?こないだのお詫びとお礼にケーキ作ってみました。出来れば直接お渡ししたいので帰宅予定時間が分かれば教えてください。」


 「お仕事中ですか?お仕事中は携帯触れないのでしたら、終了してからで構いません、連絡お待ちしてます。」


 似たメールが数通続き



 「やっぱりこないだの事怒ってますか?」


 へ?そんなことはない。


 「独りは寂しい」


 あれ?どゆこと?


 「私はいらない子ですか?」


 ん?


 メールはそこで終わっていた。

 そして留守番電話に1件登録されていた。


 「真人さん、電話もメールもだめ…ですか?私はもう話す価値も…ありま…せんか?私は嫌…失いたくない。ぐすっ…ま、まだ言えてない事…たくさん…あります。」

 「…おうちの前で待ってます。」


 時間にして友紀が家を出る15分くらい前の事だった。

 それから友紀は荷物と電話を持ち越谷邸アパートだけどに向かって出発した。


 そして電話を鳴らした時部屋の中から着信が聞こえて忘れていったのだと知った。

 そうして自分が留守電に残した内容とかが恥ずかしくなり体育座りで俯いていたら過労と疲労で睡魔に襲われ眠ってしまったと。

 これが真実。


 なにこれー

 っていかん、途中鼻啜ってたぞ、寒さではなく多分あれ泣いてたよな。


 結城に言われたばかりなのに。


 でも、保存…と。


 部屋に戻ると友紀さんは飲み終わってテーブルに缶を置いていた。

 

 「あ、あの。携帯確認した。ごめん、忘れてなければ待たせる事も寒い思いする事も…寂しい思いする事もなかったのに。」


 「あああああああああ、らめぇぇぇぇぇ」


 ええ?


 「ああああああ、留守電とかメールの内容とか忘れてえぇぇぇぇぇぇぇ」


 友紀さん至上初の大きな声です。


 どうやら思い出したようです。確かに聞いた自分も恥ずかしい。


 そしてぽかぽか叩いてきます。

 まるでFFVのクルルがおじいちゃんを叩いた時のように。

 いや、それ妙に可愛いんですけどね。


 「ごめん。無理。あまりに印象強くて深くて。」


 「もーもー」


 と言いながら顔を俺の胸に埋めてくる友紀さん。


 「……やっぱり大丈夫。」


 「真人さん、私…私、真人さんの事特別に想ってます。自分ではこの感情が何なのかはっきりわからないけど、妹や三依ちゃんに言わせると、それは「好き」「恋心」だと言います。」


 ん?えぇ?え?あれ?


 それから数秒どちらも言葉を発する事が出来なかった。

 俺の心臓の鼓動は早くなってる。多分胸に顔を埋めてる友紀さんには伝わってる。


 「それを聞いてもしかしたらそうなんじゃないか…と少し自覚し始めてる自分がいます。だってこんなにドキドキしてる。」


 俺の胸から顔を離し、目線を上にあげると…

 俺の右手を友紀さんの両手が掴み…

 それを自分の左胸に押し当てた。


 「ほら、すごく鼓動早いでしょう。」


 あぁうん、確かに鼓動を感じるよ、そして胸の突起も感じるよ。言えないけど。


 俺はただ頷く事しか出来なかった。

 俺の顔は多分真っ赤だろう、だって友紀さんも真っ赤なのだ。

 そして友紀さんは胸から手を離した。


 「こんな言い方はずるいと思うけど、多分好き…なんだと思う。でなければ、男の人とこんなに密着出来ない。」


 あ、結城が言ってた過去の事か。

 「でも…まだ勇気が出ない。話せる勇気が出たら…返事聞かせて欲しい。」


 これは告白?告白の方が普通勇気いると思うけど、それ以上に勇気が必要な過去って…

 「うん。わかった。その時は俺も…同級生数人しか知らない俺の過去も伝えたい。やっぱり俺も勇気がないとだめみたい。」


 「うん。私も待ってる。お互い秘密持ちだね。」

 あ、敬語じゃない。


 「あ、日付変わる前に…」


 リビングのテーブルに置いてある友紀さんの荷物。


 「お詫びとお礼は本当は建前。私が受け取って貰いたかった。」


 そういって箱を渡してくる友紀さん。


 「あ、うん。ありがとう。」

 そっけない返事しか出来ない俺だった。こういう時どう返事していいのかわからないんだよ。


 「開けて良い?」


 こくこくと頷く友紀さん。


 「おー綺麗なガトーショコラ。雪まで塗してあって…あれ?雪で友紀さんてシャレ?」


 「むぅ、勘のいい人は嫌いです。」


 「なんて、冗談です。でも韻を踏んだというか狙ったのは事実です。」


 ペロッと舌を出す友紀さんが可愛かった。


 「ご飯食べてないけど、早速食べて良い?」


 「本当は食後の方が良いですけど、そうすると食べられなくなりますもんね。」


 手を洗って皿とナイフを2セット用意した。


 あとカメラと。


 「食べる前に撮って良いかな。せっかく綺麗に出来てるし。」


 「初プレゼントの初バレンタインだし。」


 言ってて空しくなってきたけど、今は嬉しいから良いか。


 パシャパシャと上から横から斜めから全方向から撮影する。


 「そ、そんな大袈裟な…作ってと言われればいつでも作るよ。」


 なんか嬉しい発言なんですけど、それもうほとんど嫁ポジってやつじゃないですかね。


 「あ、じゃぁ私切り分けますよ。」


 確かに俺が切ると適当な大きさになりそうだ。


 「お願い。俺だと適当になりそうで。」


 台所に持っていき6当分に切り分けてくれた。


 「ご飯食べてないし2切れはいけるね。」


 というわけで2切れずつ更に乗せる。


 「「いただきます。」」


 同時に口に運んだ。


 「うまー」   

 「美味しい。何度も練習したかいがあった。犠牲になた家族と手伝ってくれた氷雨ちゃんに感謝。」


 金子家の皆様ご愁傷様です。いくら美味くてもたくさんは飽きちゃうよね。


 「そうなんだ、氷雨ちゃんも手伝ったんだ。えらいねー。今度美味かったって言わないとな。」


 「近いんだしいつでも可能だと思いますよ。」


 それもそうだ。

 それにしても、甘すぎずちょうどいい甘さというか、俺チョコ系好きだからなお美味しく感じるよ。


 そうこうしてると2切れはあっという間に食べ終わる。


 残りは明日だな。


 「残りの2切れは明日にするね。」

 といってラップをかけて冷蔵庫の中にいれる。


 「あの…今日は帰りたく…ない。」

 あれ?このパターン前にもあったよ。前は帰っちゃやだだったけど。

 というかお泊り?あれ告白めいた事あったし魔法使い卒業しちゃうの?心の準備がぁ?


 ってそんはわけないよな。俺返事してないし、もしそれでOK出たとしても誠実ではない。

 少なくとも俺が返事するまではそういった事はダメだ。


 「え、あ、う。着替えとか…ないよ。」


 「下着は持ってきてる。」

 うえぇぇぇぇえぇい。なんてこったパンナコッタ・フーゴ

 ん?下着は??


 「パジャマは貸して欲しい。真人さんの匂いとぬくもりの詰まったパジャマ貸して欲しい。」

 あれ?変態さんですか?って違うよね。別に洗ってないやつとかって意味じゃないよね。


 「まぁそのくらいは引き出しにあるから良いけど。本気?一応異性の家だよ?」


 友紀さんはコクンと首を縦に振った。


 「わかった。でも寝室は大晦日の日の友紀さんちスタイルが精一杯だよ。」


 再び首縦に振る友紀さん。


 「じゃぁとりあえず風呂沸かしとくね。」

 実際寒いし暖まりたいし清めたい。


 「家主だから真人さん先にお願いします。」


 まぁ前回はそういう理屈でしたしね。


 一つ思い出した事があった。


 MAXコーヒーを飲んでる姿を見ていて…


 「間違っていたらごめんなんだけど、中学の時会った事…あるよね。」


 友紀さんは驚いた表情を浮かべた。


 「MAXコーヒーでどうしても引っかかってたんだ。10月のあの日公園で出会うよりも前に、中学の時舞○の駅とすぐそこ、利根川の自販機のところで。」


 友紀さんは嬉しそうな表情になって。


 「やっと思い出してくれましたか?2度目の時、セーラー服の胸の所に名前書いてあったのに。」


 「鈍くてごめん。でも友紀さんはなんで?」

 

 「女の勘です。正確には連想ゲーム式に思い出しました。でも過去の事話す勇気がまだないので細かくは…」


 「あぁ、うん。そこはまぁ大丈夫。でも友紀さんはもっと前に思い出してたんだね。」


 「ふふんっ」


 ない胸張って威張った。


 「そっか。でも、あの時もっと普通に話しかける事が出来てたら人生変わってたかな?」


 「変わってたかもしれないけど、こうして今を一緒にいれたかはわかりません。」


 そりゃそうか。いろんな偶然の連続で今に繋がってるんだしな。


 「あ、湧いたみたいだし入ってくるね。」


 俺は着替えを取りに行き、ばばっと必要なものを取って風呂場へ行く。


 ばっばと脱いで洗濯機へ放り込む。


 「あーそういえば温泉の素あったっけ。透明のやつ。」


 さらさら~っと湯船に入れてかき混ぜる。


 ちょっとだけ良い匂い?


 頭を洗って身体を洗って…特に意味はないけど股間は念入りに洗ってから湯船に浸かった。


 「ふいいいぃ」


 俺ながらおっさん臭くなったなと思うが、声が出てしまうものは仕方ない。


 今日も色々あり過ぎだよ。


 もし携帯忘れてなかったらどうなってたんだろう。


 好きかも的な発言はあったのだろうか。


 当初のお詫びとお礼で済んでた可能性もあるよな。


 友紀さんの中でもイレギュラーだったろうな。


 5分くらい浸かっただろうか、そろそろ出よう。


 バタンガラガラガラ


 湯船に蓋をかけて風呂場を後にした。


 

☆☆☆


 「あ、出たので次良いよ。」


 「はは、はい。ただいま!」

 ん?慌ててる?緊張してる?


 待ってる間冷えただろうし、ゆったり浸かると良いよ。温泉の素も入れたので気持ちの問題かもしれないけど疲れも取れると思うし。」


 「あ、ありがとございます。」


 小袋を持って友紀さんは風呂場へ向かって行った。


 あ、いけね。バスタオルとパジャマ用意してない。


 ………置いておかないと。


 というわけで5分くらい経ったし大丈夫かな。


 パジャマとバスタオルを持って風呂場へ……


 一応声掛けとくか。ラッキースケベが犯罪になったりもするし。


 「友紀さーん。友紀さーん、バスタオルとパジャマ忘れてたので洗濯機の上に置いておきますね……」


 返事がないので風呂場の中にいるのだろう…と思った時期がありました。


 ガラガラガラ


 扉を開けると全裸で俺のYシャツに顔を埋めている友紀さんの姿があった。


 身体は横を向いていたので大事なものはほとんど見えなかったけど。


 それでも……


 「え?きゃあぁぁぁぁぁぁ」


 と、悲鳴を上げて後ろを向いちゃうものだからおちりが見事に全見えしてしまいました。


 そのままの体勢の方がほとんど見えなかったのに。


 「あぁぁっぁぁごごごごめんなさい。声かけたけど返事なかったので…バスタオルとパジャマ渡すの忘れてたので洗濯機の上にでもおいて置こうかと思って。」


 「だっだっだだだだだだ大丈夫です。減るものじゃないですし。それにまだ入ってない自分にも落ち度はあるので…」


 そして俺のYシャツを持ったまま風呂場の中へ急いで入っていく友紀さんだった。


 洗濯機の上にバスタオルとパジャマを置いて俺は退散した。



 「はぁはぁ、いやびっくりするよ。あ…」


 悲しいかな。あれだけの数秒の事で下半身が反応していた。


 いや、だってね、きゅっきゅっきゅな身体つきだったけど綺麗な肌だったし、おちりもきゅって上がってたし。


 最初横向いてたけど下半身のお毛毛見えなかったし。(パイパンってやつですか?)


 童貞男子にはあ刺激強かったよ。


 バレたかな…それはそうと軽蔑されちゃったかな。


 出てきたらとりあえずジャンピング土下座かな。


 そして鼻に手をやると赤いものが指に付着していた。


 あれ?裸を見て鼻血を出すって都市伝説じゃなかったっけ?


 そもそも根拠のない事じゃなかったっけ?


 鼻血と股間を鎮めるので精一杯だった。


 Yシャツの事とか忘れてしまっていた。


☆☆☆


 友紀はといえば髪と身体を洗い、湯船に浸かっている。


 「うぐぅ、全部見られちゃったよね。」


 全部というのは身体だけでなくYシャツの匂いを嗅いでいたところも含めてである。


 「別に匂いフェチじゃないんだけど、誘惑に勝てなかった。それにやっぱり安心した。」


 むしろTシャツやパンツに顔を埋めなかった自分を褒めてやりたい、とさえ思った。


 Yシャツならまだ言い訳も出来る。


 それと一つだけ他に謝らなければならない事があった。


 顔をお湯に浸けてから口元まで出てきて呟いた。


 「私、本当は魔法使いじゃないんだよね……」


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