第19話 姪という使徒襲来
※友紀の妹霙視点。
元日の朝、特別な日として1年の始まりとして大抵の人はスタートする。
世界、地球からみれば繰り返す毎日の中の1日にしか過ぎないのに。
毎年元日は家族揃って正月を過ごす。
これは子供の頃からの我が家の習慣だ。
我が結城家、いいえ金子家の習慣だ。
私は結城紬…嘘、結城霙は旧姓金子霙、金子家次女。
結城という苗字に嫁いだのだから結城紬とボケたくなるのが人間てものでしょ。
大島さんとかもそうじゃないかな。
新年も明けて10時を過ぎたにも関わらず、実家に顔を出さない姉のアパートに私の娘・氷雨を伴いやってきた。
姉にとって氷雨は使徒襲来なのだ。
昨日はコ○ケだったのだから疲れて寝ているのだろう、容易に想像がつく。
寝ているところに飛び込んで起こす、これを使徒襲来と言わずしてなんと言う。
ヲタクではないが私は偏見を持ってはいないし、理解もしている。姉の影響を受けているからだろう。
小さい頃は大抵の人が興味を持っている分野なのだから。
娘がハマっても頭ごなしに否定はしない。
というか、姉の英才教育によりもうそっちの道に行く将来しか見えていない。
故に実は母である自分よりも、叔母である姉になついている。
歳の離れたお姉ちゃんとして。
さて、回想が長くなってしまったけれど、こうなってしまったのには理由がある。
玄関を開けたら姉のものではない靴が並べてあったのだ、それも男性ものの。
ちなみに合鍵は持っているのでいつでも出入り自由だったりする。
姉の思い出したくもない嫌な過去も知ってる身としては、これは一体どういう事か思考を止めるには衝撃的だった。
もちろんコスプレ衣装の小道具という線も捨てきれないけど……どう見ても使い古してある靴が小道具とは思えない。
「姉にも春がきた?ようやく克服出来た?」
でももしそうなら私達が知らないのはおかしい。
だってうちの実家、すぐ隣の一軒家だもの。情報は筒抜けになるはずだもの。
子供時代は隣の五霞に住んでいたけれど、大人になり結婚して旦那にはマスオさん状態となってもらい父達の実家であるこっちに戻ってきた。
子供の頃は祖父が住んでいたが、祖父達も他界し両親がそのまま受け継ぎ、今は両親と旦那と私と娘の5人が住んでいる。
色々あった姉はウチが管理している隣のアパートを、月1万円という破格の値段で貸し出している。
そんな姉の家に男物の靴。気になりますよねぇフフン。
「さぁ最終人型決戦兵器・使徒「氷雨」行って来い!」
「ぶ・らじゃー」
靴を脱いで並べて置くとダッダッダと走り出す。
きちんと教育はされてるので、走りはしても靴はきちんと置きます。
ガラララララ…
「あー!友紀おねーちゃんがいちゃいちゃしながらねてるー」
そして幼女使徒・氷雨は床の布団で寝ている男性のお腹辺りに馬乗りになった。
「ぐべぇっ」
あ、あれはあかんやつだ。
「敵襲かっ」
男性はパチっと目を開き使徒である氷雨を見て……
「友紀さんが幼女になってるーー」
と驚いていた。
「んー?友紀おねーちゃんはベッドで寝てるよ、わたしはゆうきひさめ4さい。友紀おねーちゃんのいもーとのみぞれままのむすめです。」
あ、自己紹介ありがとう。手間省けたわ。
「それでーおにーちゃんは誰?おねーちゃんのかれし?」
「越谷真人30歳、友紀おねーちゃんのお友達です。」
飲み込み早くて助かるけど友達か、友達だとして家にあげるかな、それ以上の関係でないと言い切れるかな。
「氷雨、霙、おはよう。YOUは何をしに我が家へ?」
姉のボケが寝ぼけてる。
「うーん、言いたいこと聞きたいことあるから、顔洗ってから色々説明して。」
娘を回収し隣のリビングへ連れて行く。
「あーーーー」
という姉の慌てた声が聞こえた。