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第一章第七話 リングを照らす日輪

俺、少年の浅風竜義は大人奈々の家に、瀬戸、出雲、奈々と共に居候しながら、俺達をこの時代に連れてきた人物の行方を追っている。


俺達はテレビを見ながら朝食を食べた。

テレビでは昨夜に起きた駐車場での爆発炎上事故について放送されていた。

2名が死亡1名が行方不明、1名は銃弾を腕などに受けて重症のようだが命に別状はないらしい。

大人奈々は「こいつはきっとリベリオンが絡んでるね」と呟いていた。


大人奈々は突然俺達に聞いてきた。

「あのさ、みんなプロレスとか興味ある?」


正直俺はプロレスといえば喧嘩のイメージを思い浮かべてしまう。

気の弱い俺はすぐ喧嘩っ早い奴にプロレス技を本気でかけられたりしていたから、正直あまり好きではない。


「実はさ、スターナイトの試合私好きでよく見に行くんだけど、友達がキャンセルになっちゃってさ。

せっかくだから誰か行きたい人いないかなーって思って。」


スターナイトというのはどうやら女子プロレスの団体のことらしい。

プロレスにあまり興味がないのと、この時代のプロレスラーのことなんて何もしらないので俺は一旦は遠慮した。

瀬戸も出雲も奈々も特に興味はなさそうだった。


「そっかー、みんな興味ないのかあ。チャンピョンベルトを5連続防衛中のチャンピョン諸星あさみと彗星のごとく現れた新人ドリームレッドの対決は絶対面白いと思うんだけどなあ。」


大人奈々は俺達にスマホで予約したチケット詳細画面を見せてくれた。

すると驚くべきことに気づいた。

スターナイトのレスラーの写真がある中に、瞬間移動能力を持つ女性と容姿が瓜二つの人物がいたのだった。


俺は即座に彼女を指さして奈々に聞く。

「奈々、ちょっと待って。この人誰?」


「ん?ああ、この人がドリームレッドだよ。この子めっちゃ凄・・・」


「ごめん、やっぱり俺見に行きたい!」


俺の意見が180度変わったことで大人奈々は少々困惑していた。

大人奈々はスターナイトの公式サイトのドリームレッドのプロフィールを見せてくれた。

プロフィール写真は間違いなく、俺達を救ってくれた女性であった。

まさかドリームレッドがプロレスラーだったとは意外であった。

とにかく、せっかく彼女の情報が掴めたのだからこのチャンスを無駄にするわけにはいかない。

本物なのかどうかだけでも確認し、本物ならば聞きたいことがあるのだ。




2席分しか予約していなかったため、大人奈々と二人で女子プロレス、スターナイトの試合を見に行くことになった。

普段は仲の良い奈々であるとはいえ、大人奈々は性格も容姿も少女時代とは大きく変わっているので、

知らない美人女性と二人きりになったみたいで、なぜだか気まずかった。


プロレスのイベントは1イベントで複数試合組まれる。

ドリームレッドが出場するタイトルマッチは最後の試合である。


そしてついにその時間がやって来た。

チャンピョン諸星あさみが最初にリングに登場。

続いてドリームレッドが大声援を受けてリングに現れた。

大人奈々が言うに、ドリームレッドは天才的な瞬発力と機動力を持っており、驚異のスピードでチャンピョン諸星を破ることを期待しているファンが大勢いるようだ。


試合開始のコングが鳴り響くと、しばらく両者は互角の戦いぶりを見せた。

諸星は強力な膝蹴りやキックなど足技を武器としているが、ドリームレッドは諸星の蹴りを避けながら、

諸星の顔面に素早い拳の一撃を浴びせた。

これは「ドリーム・スワロー」という技らしい。

佐々木小次郎の燕返しのように素早いスピードで拳を突き上げることから名づけられた技のようだ。


この技のスピードに苦戦し諸星は攻めあぐねていたが、急に戦況が変わる。

諸星の隙を見て、ドリームレッドは顔面をめがけて蹴りを入れた。

しかし、これを諸星に受け止められ、そのまま投げ技を決められてしまった。

ドリームレッドはリングに体を強く打ち付けられ、悶絶したまま動けなくなっていた。


すると会場が大きく沸いた。

諸星はトップロープに上り、彼女の決め技「ムーサルトプレス」を繰り出した。

ギリギリのタイミングでドリームレッドは体を回転させて技を避けた。

諸星は技を避けられたことで技の反動を受ける。

しかし、すぐさま両者とも立ち上がり、諸星は間髪入れずにドリームレッドの顔面に強烈な蹴りを入れようとした。

その瞬間だった。

ドリームレッドは海老反りになってキックを避け、そのまま遠心力を生かして側転をするように諸星の頭部に強烈なキックを決めた。


この技はドリームレッドの必殺技で「ドリーム・サン・リング」と言うそうだ。

ドリームレッドが太陽のように明るい選手であるということと、技を避けた時に相手は照明が目に入り目が眩むことなどからつけられた技名らしい。

この技と性格の明るさに由来してドリームレッドは「リングを照らす日輪」の異名を持っている。


再び会場は大盛り上がりとなり、今日一番の熱気に包まれた。

その後ホールに入ったドリームレッドであるが、2カウントで諸星はなんとか返した。

返したものの、諸星にとって先程のダメージはかなり大きかった。


ドリーム・サン・リングの一撃がかなり効いているのか、諸星はまだ起き上がることができない。

これは勝負あったかに見えた。


しかしここから予想もしない展開となった。

諸星はふらつきながら起き上がると、怒涛の蹴りを連発した。

ドリームレッドは最初の数発は避け切ったものの、顔面に蹴りをもろに受け倒れ込む。

そして、あっという間にスリーカウントを取られてしまったのだ。


大人奈々はこの光景をみてため息をつきながらも

「ああー、惜しかったなあ。これが絶対的チャンピョンの実力かー。やっぱ強いな。」

と拍手をしながら感心していた。


勝利した諸星はマイクを取るとドリームレッドを褒めたたえた。

「いやあ、マジで負けると思ったよ。さすがはあたしのパートナーだ!」


諸星とドリームレッドは最近良くタッグをも組む仲なのだという。


マイクはドリームレッドの手に渡る。

「ありがとう。でも私はまだまだ弱い。弱すぎるんです。だからもっともっと強くなります。

もっともっともっと努力して、あさみからベルトを奪えるくらい強くなります!」


会場は大きな拍手で沸いた。

プロレスの試合であれば、こういう時は「かかってこいや」とか「調子にのんじゃねえぞ」くらいの汚い言葉が飛び交うのが好例だが、ドリームレッドはとても礼儀正しかった。

奈々いわく、

「尊敬するわ、強いし明るいし人もいい。人気が出るわけだよ。」


そして、俺は大事なことを思い出した。

試合につい夢中になっていたが、ドリームレッドに元の時代に戻してもらうためにここに来たのだ。

俺は花道を下がっていくドリームレッドの行く手をふさいで彼女を呼び止めた。

「あの、10年前の世界であなたに助けてもらった浅風です。ドリームレッドさん俺達を元の時代に返してくれませんか。」

ドリームレッドはとても驚いた表情でこちらを見たが、彼女は何も答えなかった。

それからも俺はドリームレッドにお願いを続けたが、何も答えてはくれず、俺は会場のスタッフに取り押さえられてしまった。


イベント終了後。

大人奈々は心配した様子で俺に話しかけた。

「どうしたのさっきはあんなに取り乱して。」


俺は、俺達をこの時代に連れてきたのはドリームレッドであることを大人奈々に説明した。

大人奈々は「流石にそれはないでしょ!よく似た別人とかでしょ。」と言って最初は全く信じてもらえなかった。

でも、インターネット上に掲示した奈々が描いたドリームレッドの似顔絵などを見せながら説明すると、

なんとか信じてもらうことができた。


「ちょっと信じられない話だけど、とりあえずわかった。私もドリームレッドとなんとかコンタクトを取ってみるよ。」



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