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第一章第五話 将来の自分に会う

俺、浅風竜義は、瞬間移動能力を持つ女性を捜索していた。

しかし、有力な情報はあまり得られなかった。

絵が得意な奈々が女性の似顔絵を描いてくれた。

それはまた俺の記憶の中の女性にそっくりだったわけだが、それでも面識があるという人は見つけられなていなかった。


そこで、インターネット上でも似顔絵を使用して情報提供提供を呼び掛けた結果、その人物を知っているという返信が1件来た。

返信をくれた人物の名前は「TATSUYOSHI ASAKAZE」というハンドルネームだった。


「これって、もしかしてこの時代の浅風?」


10年後の俺と思われる人物の返信内容は以下の通りであった。


似顔絵の人物に心当たりがあります。

私も可能な限りの情報提供をしたいと思いますので、今度一度会ってお話できますか。


10年後の俺と思われる人物は自宅の住所を俺達に教えてくれた。



数日後、俺達は10年後の俺と思われる人物似合うため、彼の自宅へ向かった。


指定された住所はなんと、30階建てのタワーマンションであった。

そして、彼の住んでいるのはなんと、最上階の30階であった。


まさか俺のような底辺みたいな奴がタワーマンションの最上階になんか住んでいるわけがない。

何かの罠なのではないかと俺達は不信感を抱いていた。

用心深い瀬戸はすぐに警察を呼べるようスマホを片手にしっかり握り締めていた程だ。


俺達は指定された3006号室のインターホンを押すと、背の高い男性が俺達を出迎えてくれた。


彼は俺達を顔を見つめて驚いた表情を見せた。

「お前たちは・・・そんな馬鹿な・・」


しかし驚いたのは彼だけではない。

俺達も驚いたのだ。

10年後の俺は背が高く端整なイケメンでとても落ち着いた雰囲気であった。

「10年後の・・・浅風さん・・ですか?」

出雲が戸惑いながら問いかける。


「そうだ。俺が浅風竜義だ。みんなよく来てくれた。」


俺を含め、全員が言葉を失った。

10年後の俺(以下大人浅風)は、俺自身が驚いて声も出せないほど、ダメ人間の面影はないのである。

それにタワーマンションに住めるの程なのだからきっと人生で成功しているのだろう。


大人浅風は俺達を部屋の中に案内してくれた。


すると一人の女性がキッチンから現れて大人浅風に声を掛けた

「この子達が今日のたっくんお客さん?」


「ああ、そうだ。親戚の子とその友達だ。」


大人浅風は目配せで俺達に「辻褄を合わせろ」と伝えていた。

なので俺達も親戚の子っぽく振る舞うようにをした。


それより俺達がもっと気になることがある。

「あの、この人は・・・?」


奈々が女性を指さすと、大人浅風が紹介してくれた。

「彼女は佐々木 歩美(ささき あゆみ)。もう2年くらいの付き合いでもう1年くらい同居しているんだ。とても明るくて思いやりのあるいい人だぞ。」


俺達は固まった。

出雲が躊躇しながら大人浅風に聞く

「ってことはつまり、浅風の・・・彼女?」


「はい!彼女の佐々木歩美です。宜しくね!」

歩美は俺達に挨拶した。


俺達も挨拶をしたが、奈々は何やら不機嫌そうな顔をしていた。


歩美は俺達に紅茶とケーキをご馳走してくれた。

「デパートで並んで買って来たんだ。遠慮なく召し上がって!」


歩美はとても気が利く人だった。



それから大人浅風は俺達に今までどのような努力をして来たのかを少しではあるが語ってくれた。

大人朝風が言うには、何をやってもダメな人間だからこそ、人一倍の努力をし挫折を全部バネにして来たのだという。

そして、「才能だけで努力をあまりせずに掴んだ成功より、辛い経験を乗り越えて人一倍努力して掴む成功の方が人々に感動を与えられるんだ」

ということを教えてくれた。


そして、俺達は本題の件を大人浅風に聞かなければならない。

俺は大人浅風に瞬間移動の能力を持つ女性について尋ねた。

すると、大人浅風は知る限りのことを語ってくれた。


女性は一度このマンションまで訪れたことがあるのだという。

だが、女性は意味不明なことを言って帰って行ったという。

「例えばどんなこと?」

と瀬戸が聞くと、大人浅風は一瞬意味深な間を置いて、

「すまない、忘れてしまった。」

と答えた。


俺達は俺達がこの時代に来た経緯を大人浅風に説明した。

大人浅風はかなり難しそうな表情で聞いていた。


それから、大人浅風は俺達に情報提供をしてくれた理由について説明してくれた。

その女性が、どこの勢力に属していて何が目的なのかはわからないが、暗部組織リベリオンと関係があるのではないかと思っているという。

だから彼女の目的について何かわかるのではと思い、俺達を呼んだそうだ。


大人浅風は帰り際、女性について情報が手に入ったら共有すると言ってくれた。

「もし佐倉奈々に会うようなことがあれば、俺に会ったことは内緒にしてくれ。あと、リベリオンのことで気になることがあれば結構詳しいので俺に聞いて欲しい。」

とも言ってくれえた。


なぜ内緒にする必要があるのかは分からなかったが、とりあえず俺達は頷いた。

また、奈々のことを佐倉奈々とフルネーム呼んでいるのには違和感があった。



奈々は俺達が大人浅風と面会している間ずっと黙ったまま考え事をしている様子だった。


「奈々、大丈夫?なんか元気ないみたいだけど」


「あ・・・うん、大丈夫。」


そんなやり取りをしていた俺に瀬戸が

「おい、少しは察してやれよ」


何を察しろというのか分からなかったが、奈々は相変わらず不機嫌そうだった。





俺達が大人奈々の家に帰るときにはすっかり暗くなっていた。

大人奈々は「夜は危険だから早く帰って来なさい」とむくれていた。

まるで俺達の母親のようだ。


俺は大人浅風が、今日会ったことを大人奈々に内緒にしないといけないのがなぜなのか引っかかっていた。

俺はさりげなく大人奈々に10年後の自分は何をしているか知っているのか尋ねてみた。

奈々は、髪を触りながら落ち着かない様子で

「わからない。だって相当しばらく会ってないし、連絡も取ってないから」

と答えた。

まさか大人奈々は大人浅風と会ってすらいないのだろうか


すると奈々が真剣な表情で大人奈々にと質問した。

「いつから会ってないの?」


奈々の表情があまりに真剣だったので、大人奈々は少し動揺していた。


大人奈々は目線が動いていて、相変わらず落ち着かない様子で「ここ二年くらいかな」

と答えた。


奈々はそれからも「なんで二年も会ってないの?」とか「仲悪くなったりしてないよね」と続けざまに大人奈々に質問を投げかけた。


「仕事が忙しくて・・・、とにかく元気でやってるみたいだから心配しなくて大丈夫だよ。浅風意外とタフだもん」

と大人奈々は答えて、仕事でやらなければならないことがあると言って自室に籠ってしまった。


奈々は納得いかない表情をしていた。

そして悲しそうな顔で言った。

「嘘ついてるよ、大人の私。自分自身だからわかる。嘘ついてたり誤魔化したりするとき癖でやたら髪をさわるんだ。あれは絶対何か私達に隠してる。」


奈々は、俺と奈々の間に何かが起きたことを察していたのである。

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