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第二章第五話 ミステリー

大人浅風によって保護された孤児、月潟まりもはリベリオン革新派のメンバーの一員として迎えられた。

リーダーのミシェルがまりもをメンバーに紹介した時は、銀髪に緑目という風貌のせいか気味悪がるメンバーもいた。


それでもミシェルは積極的にメンバーに働きかけたり、コミュニケーションを頻繁に取ったりして、まりもが派閥メンバーに馴染めるよう尽力していた。

ミシェルは指導力という面では頼りないが、人柄は申し分ないというのが派閥内での彼女の評価だった。

そんな人柄に定評のあるミシェルでもまりもには手を焼いた。

大人浅風の指示でまりもはミシェルの家に同居させることにしたのだが…。


まりもがうまく派閥メンバーに馴染まないことを悩んだミシェルは大人浅風に電話で相談をしたのであった。


「やっぱりうまく馴染めないか…」


「なんだろう、なんか物凄く人を怖がってるみたい…。さっきも夕飯作ってあげようとしたんだけど自分の分は自分で作るって聞かなくて…」


「ははは、じゃあ一緒に暮らしてるのに別々にご飯作ってるのか?」


「うん、そんな感じ。家にいるときもずっと私と目を合わさないようにしてるみたいだし大丈夫かな…?」


「心配ない。昔の俺とよく似ている。多分幼い頃に両親の愛情を受けられなかったのが原因だろう。

俺の親父はアル中で酒飲んでは俺に暴言をよく吐いてきた。その時は俺もまだ幼かったから親父が正しくて俺が悪いんだと思い込んだ、例え理不尽なことでキレられてもな。

そんで必要以上に自分を責めたもんだ。」


「それ、10年前の浅風に言ってあげたら?」


「言ってやりたいが最後まで話を聞かずに暴れられそうだよ。こないだの佐倉奈々の時みたいに。

で、まりもだけどあいつは幼い頃に両親が死んでるんだ。多分…不慮の事故でね。」


「多分?」


「交通事故ということになっているが、まりもの能力なら不慮の事故に見せかけることも可能だ。それからは里親に預けられたようだがうまく馴染めず家出を繰り返してたらしい。里親も手に負えなかったって話だ。」


「ええ…相当ヤバイ子じゃん。あのさ…浅風はなんでそんな子をわざわざ連れて来たの?私を殺すつもり?」


「ははは、そんなわけないだろう。

豊橋の闇の部分を探るのに、まりもが貴重な手がかりになりそうなんだ。」


「どういうこと?」


「5年前の豊橋の妻子殺害事件は知ってるよな?」


「うん」


「あの時殺害された豊橋の娘がまりもとそっくりなんだ。緑目に銀髪だった。」


「ええー!でもその子は死んでるんでしょ?実はまりもがその子の姉妹とかってこと?」


「わからん。そこは冬基に調べてもらってる。だが、豊橋の娘の豊橋大空とよはしはるかとまりもの生年月日は同じだった。」


「それってまりもは実は豊橋の娘で双子ってこと?」


「俺も双子を疑った。だけど豊橋大空とまりもの戸籍を調べたら養子に行ったりしている記録はなかった。生まれた時からそれぞれの両親の元で育ってるんだ。」


「うーん…それはプロの探偵でも頼らないと素人じゃ解決できなさそうな感じだね。」


「ああ、だからプロを頼りたいんだが…、プロ探偵がちょっとメンタル病んでるらしくてな…」


「病んでる?」




敷島兄弟の長女、敷島夏子は大のミステリー好きで、見習いではあったが探偵もやっていたこともある。

そんな彼女は今メンタルが異常な状態だという。


大人浅風は春雄と夏子の元を訪れた。

春雄は大人浅風に深々と頭を下げた。

「すみません。夏子と養老渓谷の現場へ行ってきましたがゾンビのような集団に襲われて、結局何も情報を掴めないまま帰還することになりました」


「ゾンビだと?」


その時夏子は奇声を上げた

「あああああああゾンビ…ゾンビ。ヴァァァァァァァァ」


「夏子はどうしたんだ?ゾンビに噛まれでもしたのか?」


「はい、逃げようとした時に少し腕を噛まれたようで。」


大人浅風は夏子の腕の噛まれた跡を確認しようとすると、夏子は再び奇声を上げた。

そんな夏子の両頬を浅風はつねった。

「おい、目を覚ませ。ゾンビごっことか幼稚園児か?」


すると夏子は一瞬で我に返ったようだ。

「あいたたたた…あれ?私もしかしてゾンビになってない?あれなってないじゃん!」


そんな光景を見た春雄はただ唖然としている。

「な、なんという…」


大人浅風はため息をついた。

「ただの思い込みだ。オカルトを信じすぎる余りにゾンビに噛まれたから自分もゾンビになったと思い込んでたんだろう。」


「は、はぁ…」


「ところで春雄。襲って来たのは本当にゾンビだったのか?」


「はっ!そ、そうですね…。ゾンビかは分かりませんが、人間の形をしていましたが知性は持っていないような連中でした。」


「なるほど。はあ…夏子の思い込みの甚だしさは半端じゃないな。」


「すいません…。でもゾンビみたいなのに噛まれたらゾンビになりそうじゃないですか!そこは同情して欲しいです!」


「同情できんわ!とりあえず何があったかは把握した、今度現場に行くときは戦闘員を引き連れて俺も同行する。二人ともご苦労だった。」





冬基は豊橋に関する情報の収集を終え、浅風を尋ねた。

「浅風さん、ちょっと見て頂きたいです。」


冬基は自分が収集した情報をパワーポイントにまとめて他の敷島兄弟3人も召集し説明した。

「豊橋について信じられない点がいくつもあるんです。まず、豊橋は1980年6月8日生まれになっていますが、この日に誕生した人物で豊橋勝也という名前はデータベース上存在していません。


さらに、豊橋の学歴を調べ小学校から大学までの入学者、卒業生のデータベースも全て見ましたが、豊橋勝也という人物は存在しませんでした。」


「それって豊橋は偽名で経歴詐称してるってこと?」

千秋が尋ねる。


「それは間違いないんだけど、ただ詐称してるだけじゃなさそうなんだ。僕も詐称を考えて豊橋の生年月日と各経歴ごとのデータベースで一致する人物を割り出したけど該当者がいないんだ。

だから多分年齢とか個人情報は全部デマだと思う。」


浅風は目を細め、頭を抱えた。

「夏子、この謎は解けそうか?」


「いやいや無理でしょこれじゃ。もっと情報がないと…」


「確かな証拠が残っている情報で最も古いのは?」


「10年前ですね。豊橋が奥さんと結婚したのが10年前。これは写真も見つかったので間違いでしょう。」


「40年分のデータがなくて、名前が偽名で学歴も偽装…何が目的なんだ?」


「豊橋の娘にそっくりな女の子の謎もまだ解けてないですし、謎だらけですね。」


「あと、妻子殺害事件もですね。」


大人浅風は机を力強く叩いた。

「クソっ、選挙まであと3週間しかないというのに…」


「豊橋が何かを隠しているのは間違いないだけに悔しいですね。このまま足踏みするしかできないのは…」


「夏子、何があればこの謎が解けると思う?」


「うーん、解くのは難しいですね。だけど確かに言えるのは、不透明な豊橋の40年間は意地でも隠し通さなきゃいけないものだったってことですよね。」


大人浅風は腕を組んで頭を悩ませた。

「冬基、なんとかして空白の豊橋の40年間を調べられないか?」


「全宇宙から一つの星を探すようなものですが…、やるだけやってみます。」


「宜しく頼む、俺達は今ある豊橋の謎を一つずつ解き明かすぞ。まず戦闘員を連れて妻子殺害現場に向かってゾンビを一掃する。そこに何かあるはずだ。」




大人浅風は春雄と夏子に5年前の妻子殺害事件の現場へ向かう準備をするよう指示した。

その時、大人浅風にミシェルから着信が入った。


「どうした?」


「あのさ、実はお風呂壊れちゃって…」


「くだらないことで電話するな!今、忙しいんだ。切るぞ」


「あ、ちょっと待って。それでさ、まりもが家で暴れてどうしたらいいか相談したかったんだけど。」


「風呂が壊れてまりもが暴れる?どういうことだ?」


「お風呂が壊れちゃって仕方ないから一緒に銭湯に行こうって言ったら、物凄く嫌がって暴れだして。絶対行かないというから私が銭湯行ってる間まりもを一人にしても大丈夫かなって、

念のため確認したくて…。」


「ならタカヒロに一緒に留守番させる。それでいいだろう。」


「あ、うん。」


「それでなんでまりもは銭湯が嫌なんだ?ミシェルの家の風呂なら問題ないんだろ?」


「うん、家では普通だよ。どうしてだろう、裸見られるの恥ずかしいとかかな。聞いてもすっごい怒って会話にならないし。」


「そういうことなら俺はあまり関わらない方が良さそうだな。とりあえずどうしても嫌がるならタカヒロに家の風呂を貸してやれって言うよ。一先ずそれで大丈夫そうか?」


「うん、ありがとう。」


「じゃあ、宜しく頼む。」

大人浅風は電話を切った。



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