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第一章第十二話 軟弱な英雄

一瞬全員が固まった。


気が付けばなんだかんだで3時間近く話していて、瀬戸と出雲のことなんてすっかり忘れていた。

彼らはこんな時間まで夜遊びするようなことはないだろう。

俺は瀬戸に奈々は出雲に電話をしたが、

「おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません。」

と自動アナウンスが流れ繋がらない。


「あなた達、瀬戸と出雲とも一緒にいたんでしょ。別れる前どこにいたの?正直に教えて!」

大人奈々が立ち上がる。


奈々が説明する。

「ごめん、大人浅風の家に行ってて、大人浅風が瀬戸と出雲には頼みたいことがあるって言って、二人を残して、私達だけ・・・」


「嘘でしょ・・・ ああもう、よりによって・・・。わかったありがとう。様子を見に行くからあなた達はここで留守番してて!いい、間違っても勝手に動いたりしないで!」


大人奈々は慌ただしく準備を済ませると、家を出て行った。

とても嫌な予感がした。



大人奈々は自宅を飛び出すと、スマホで大人浅風に電話をかけた。


「久しぶりだな どうした?」


「挨拶は不要いいから、私の質問にだけ答えて。瀬戸と出雲が帰って来ないんだけど何か心当たりはある?」


「なぜそんなことを俺に聞く?」


「質問にだけ答えてって言ってるでしょ!知ってるの?知らないの?それ以外の答えは求めてない!」


「ならば君が知りたいことだけ答えてやる。瀬戸と出雲は俺が監禁した。」


「・・・そう。分かった。警察に通報するから、もうあなたは表社会では生きられない。せめて裏社会で頑張ればいいわ。嫌なら無理やり止めに来たらどうかしら?」


この時、通話が切れてしまった。

大人浅風が電話を切ったのだ。


しばらくして、大人浅風は大人奈々の前に現れた。


「遅かったじゃない。残念、もう通報しちゃった。あんたと・・・私をね。」

奈々は拳銃を手に取り、浅風に向けた。


「おい待て、話なら聞く。何を企んでいるんだ。お前は・・・」

奈々は間髪入れずに浅風に向けて発砲した。

銃弾は浅風の右肩をかすめた。


「今更話すことなんてない。何を言っても人の話なんか何も聞かない癖に!あんたの下らない言い訳はもううんざりだから!」

奈々は再度発砲する。

今度は浅風の髪をかすめた。


浅風は奈々とは話合いはできないと判断し、大気を操る能力を使用した爆撃を奈々に叩き込もうとした。

しかし、浅風は能力が使えないことに気づく。

「しまった! 超能力妨害装置か・・・」


奈々は再び浅風の顔面に狙いを定める。

「今度こそ・・・地獄に落ちなさい。」


奈々がトリガーを引こうとした瞬間、奈々の背後から銃声が聞こえた。

リベリオンにおいて、浅風の部下となったミシェルが背後から奈々を拳銃で撃ち抜いたのだ。

いざという時のために浅風が待機させていた助っ人だ。


銃弾が奈々の背中から左脇腹に貫通した。

奈々はよろめきながら、最後は仰向けになって倒れた。


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奈々は浅風を本気で撃ち殺すつもりだった。

でもいざ人を殺すとなると手が震えてしまい、浅風にトドメを刺すことができなかった。

そんな自分の不甲斐なさを嘆いた。

段々と意識が遠のいていく中で、少女時代の思い出が蘇る。

子供の頃、私が困っていたらいつも助けてくれた男の子がいた。

その男の子は決して強くはなくて、私を庇ってはいつもボロボロに傷つく。

そんな彼は私にとって軟弱な英雄だった。

でもそんな彼はもういない・・・

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浅風は、奈々が倒れ込む際に地面に転がった超能力妨害装置を踏み壊した。

そして、今にも意識を失いそうな奈々に拳銃を向ける。


一人の男に振り回されただけの散々な人生だった。

こんなことならもっと自分の人生を楽しめば良かった。

奈々は死を目の前にしてそう思った。


浅風がトリガーを引こうとした時、

何者かが浅風を突き飛ばしたように見えた。

意識が朦朧としていて何が起きたのかわからなかった。

両手を広げて誰かが私を守るように立っている。

その後ろ姿は私が大好きな軟弱な英雄の姿そのものだった。


奈々はそのまま意識を失った。


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