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第一章第十話 元の時代に戻れる?

俺、少年の浅風竜義が10年後の世界に来てから一か月が経った。


自分達をタイムスリップさせたドリームレッドが、女子プロレス団体スターナイトに所属していることを把握したのだが、ドリームレッドのスケジュールは多忙で今までコンタクトを取れずにいた。


そんな中、一本の電話が瀬戸のスマホにかかって来た。

大人浅風からだった。


「俺だ、浅風だ。元気にしているか? あと、佐倉奈々は今(そば)にいるのかい?」


「はい元気です。大人の佐倉なら仕事に行ってます。佐倉に何か用ですか?」


「いや、あいつがいないならそれでいいんだ。実は、君達が元に戻れる手がかかりが掴めた。情報共有したいから俺のマンションまで来てくれないか?もちろんこの時代の佐倉奈々には内緒で頼む。」


「わかりました。ちなみになんで佐倉には内緒じゃないといけないんですか?」


「大人の事情だ。君達にも人に言えないことの一つや二つあるのと一緒さ。」


大人浅風は振り切るように電話を切ってしまった。


俺達は電話を受けた瀬戸から内容を聞いて、一先ず大人浅風の話を聞いてみることにした。



<数日前>

大人浅風はとある集会を開いていた。

大人浅風は暗部組織リベリオンにおいて「革新派」と言われる派閥のリーダーである。

リベリオンは豊橋と呼ばれる男が組織の代表者であるが、豊橋のやり方に不満を抱くものも多くなっている。

組織は、末端の構成員から会費を取ってそれを幹部や組織の儲けとする仕組みになっており、組織の上層部のみが懐が潤うようになっている。

そして、組織のメンバーは一攫千金が手に入ると夢を見せられ、彼らの利益のために搾取されているのだ。

そんな組織の闇に気づいたものの、AI技術の発展で職を失い、組織の内にも外にも居場所のなくなったもの達が、組織を変えようと動き始めたのである。

それが大人浅風率いる革新派である。


革新派は浅風の他、2人の幹部がいる。

一人は薄明貴裕はくめいたかひろと言う男で、名前の通り「タカヒロ」というコードネームで呼ばれている、ツンツン頭の20代前半のお洒落な雰囲気のイケメン男性。

もう一人は敷島春雄とい20代後半の男性だ。

敷島には兄弟がおり夏子、千秋、冬基の4人兄弟で革新派に参画している。

彼らについては後程紹介する。


そして、革新派には新たなメンバーがやって来た。

その新メンバーの歓迎会がひっそりと行われていたのである。


浅風はマイクを持ち、革新派のメンバーに伝える

「今回、我々は新しいメンバーを迎えることとなったので紹介したいと思う。

ミシェルこと高梨瑞希さん。水を操る能力の使い手だ。」


ミシェルは革新派メンバーの前に表れると、軽く自己紹介をして頭を下げた。

一か月前、ミシェルが竹本と浅風の戦闘の際に表れた時はとても見すぼらしい姿であったが、今は髪を茶色に染め、手の爪にはピンクのマニュキアをして、服装もとてもお洒落な恰好になっていた。

精神的にも安定したようで、メンバーの前では笑顔ではきはきと自己紹介をしていた。


「そしてもう一人、心強い仲間が増えることになった。知る人ぞ知る有名人、諸星あさみさんだ。」

諸星がメンバーの前に表れると、会場がざわついた。

この諸星あさみは、ドリームレッドと同じ女子プロレス団体スターナイトに所属しており、チャンピョンベルト保持者である。

そんな諸星がメンバーの前で自己紹介を行う。


「皆さんこんにちは、諸星あさみです。プロレスラー兼アイドルです!

浅風さんの考え方にとても共感しているので、皆さんと一緒にマイノリティーが幸せに生きていける社会を作れるよう貢献して行きたいと思います、宜しくお願いしまーす!」


革新派のメンバーは二人の新メンバーをとても歓迎している様子であった。


その後、新メンバーを歓迎するパーティーが開かれた。




俺、少年浅風竜義は奈々、出雲、瀬戸とともに大人浅風の住むマンションへやって来た。

マンションのエレベータに乗り込むと、俺は急に緊張してきた。

今だに大人浅風が自分であるという実感がわかないのだ。

他人のようにしか思えないし、大人浅風の方もどこか俺に対して他人行儀だったからだ。


大人浅風の部屋に入ると、彼は同居人の歩美とともに俺達を出迎えてくれた。


奈々と瀬戸と出雲は、久々に見る窓からの眺めに感動していた。

30階からの眺めは最高に良く広い海が見えた。

しかしそんな景色をじっくり見ていると現実を直視させられる。

海の真ん中にぽつりと高い電波塔が建っている。

東京スカイツリーだ。

俺達が住んでいた場所はあの近くなのだが、東京スカイツリーは現在海に囲まれている。


そうこうしている間に、大人浅風は俺達に本題の話を始めた。

「こないだ、ドリームレッドが家に来たんだ。そんで結論から言うと君達を元の時代に戻してくれることになった。」


俺達は漸く元の時代に戻れると聞いてほっと一息ついた。

「ああ、良かった。それでドリームレッドは今どこに?いつ戻してもらえの?」


「分からない。そこは連絡先をもらっておいたから、後は君達で打ち合わせしてくれ。」


「わかった、ありがとう浅風。」


俺には一つ分からないことがあった。

ドリームレッドがなぜ大人浅風と会っているのかだ。

「あのさ、実は前からドリームレッドと知り合いだったりしないよね?」


「は?」


「いや、ドリームレッドが初対面だったのに俺のこと知ってて・・・だから実はこの時代の知り合いなのかなって思っただけで。」


「全く知らないな。多分向こうが俺か君達に何か用があるんだと思うよ。」



それから俺はドリームレッドとビデオ通話で連絡を取った。

彼女はまず先に俺達に謝罪をした。

「ごめんなさい。今まで連絡もできなくて。無事でよかったです。安心しました。」


それから俺は、ドリームレッドと色々と話をして、元の時代に帰してもらう約束は取り付けることができた。

この時代に来た時に俺達を放置したままいなくなったことと、すぐに俺達を捜索して元の時代に戻してくれなかったことについても質問してみた。

その答えは、ドリームレッドが持つ時渡りの能力は遠い時代に行けば行く程能や体に負担をかけるため、

連続して能力が使えなかったためだという。

10年のタイムスリップをした場合、再び10年前までタイムスリップできる程に能力が使えるようになるには1週間程度時間がかかるためだという。

しかしもう10年後の世界に来て1か月が経っている。

「今まで連絡もできずにいたのには他にも理由があります。

でも、その理由については先日お話した皆さんもご存じの佐倉奈々さんという方から皆さんに打ち明けることを止められています。

暗部組織リベリオンに関わることなので、組織の情報を掴んでしまえば皆さんの身に危険が及ぶ可能性があるということで、そこについては説明を控えさせてください。ごめんなさい。」


そういえば、大人奈々とプロレス観戦に行った時、

「私からもドリームレッドとコンタクトを取ってみる」

と言っていたことを思い出した。

大人奈々には大人浅風だけでなく俺達にまで隠し通さなければいけないことがあるのだろうか。

ただ、元の世界に戻るならどうでもいいことなのでそこは気にしないことにした。


その後、ドリームレッドは予定が立ち次第俺達を元の時代に戻すので、その時はまた連絡をするということで彼女との通話は終わった。

スケージュールが忙しく、俺達を過去に送り届けて元の時代に戻るには1週間必要で、それだけの期間、この時代を留守にすることはできないらしい。


それからしばらく大人浅風のマンションで俺達はゲームなどを楽しんだ。

大人浅風は俺がやっているゲームソフトをこの時代まで捨てずに持っていたようだ。

ゲームでは瀬戸と出雲には何時も叶わないが、大人浅風でも瀬戸と出雲には叶わなかった。

奈々にもプレイしてみるよう勧めてみたが、

「今はそういう気分じゃないのでいい。」

と言って頑なにゲームはせず、一人で何かを抱え込んでいるようだった。


奈々は窓の外の景色を眺めていた。

元気のない奈々が心配になり声をかけてみた。

「おお、明かりがつくと一層綺麗な景色だね」


「うん、そうだね。」

と答える奈々は棒読みのような口調だった。


その時、俺のスマホが鳴った。

大人奈々からの電話だった。

「今何してるの?」


大人浅風との接触は止められていたので、皆で買い物に行っていると俺はごまかした。

「そう、わかった。実はさ、銀河君が来てるの。それで浅風はどこだ、話をさせろってうるさいものだから・・・」


萩野谷銀河は、学年一番の問題児。

俺達と一緒にこの時代に来たが、連絡もつかず行方も分からなかったが、無事だと分かってホッとした。


俺達はゲームを切り上げ、大人奈々の家に帰ることにした。

すると浅風が声を掛ける。


「ちょっと待ってくれ。瀬戸と、出雲にちょっと付き合って欲しいことがあるんだ。お願いできるか?」


瀬戸と出雲は承諾したため、俺と奈々で先に帰ることになった。

大人浅風のマンションを出た後も奈々は話しかけると笑顔で話しはするが、なんだか元気がない。

「私がいけないのかな。私のせいで浅風と疎遠になっちゃったのかなってずっと考えてた。」


「なんだよ急に。そんなわけないだろ。」

奈々はとても思いやりがある奴だ。今まで一緒にいて傷つくような言葉は一言も言われたことがない。

そんな心優しい女の子だ。

疎遠になった原因が何かあるとすれば原因は俺だろうと思った。

でも未来の俺の事なら考えても仕方がないと思ったのでこれ以上は考えないことにした。

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