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あなたがいたから  作者: yuzuhiro
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勧誘と誘い

 受講する講義を決めるのは難航したよ


(選択肢が多いからね)


 親しい友人や先輩がいなかったから手探り状態で決めたんだ


(頼って欲しかったな)


 無理だよ


 まだ信用できる人なんていなかったんだから


 入学してからしばらくは構内を歩けば勧誘されるという状況だった


 サークルに入るつもりなんてなかった僕にとっては煩わしいとしか言いようがない


 その日も講義が終わりバイトに行こうと教室を出たところで上級生が待ち構えていた


 入学式では新入生はスーツだからわかりやすいけどこのときはどう判別してたんだか


(それはね。()()よ)


 勧誘を見れば動揺するってことだね


 その点で僕はノーマークだった


 無関心だったから


 そのまま外に出れると思ったんだよ


(甘かったね)


 まさか1000人を越える学生がいる中で見つけられたのは災難としか言いようがなかったよ


(運命って言って欲しいな)


「おいっ! そこの新入生」


 僕は聞き覚えのある声に思わず振り向いてしまったんだ


「おっ! やっぱりこの前の虚弱体質くん」


 失礼な人だ


(本人に悪気はないんだよ)


 尚更やっかいだよね


「お前、サークル決まってないよな? 今夜うちのサークルの新歓があるからこいよ。どうせ暇だろ? 19時にサークル棟にこいよ。案内板が出てるからどの部室かはわかるはずだからよ。じゃあ、時間厳守な!」


 一方的に言うだけ言って消えたんだ


(えっ? これだけ?)


 サークルの活動内容はもとよりサークル名すら言わなかったからね


(行きようがないね)


 そもそもこの日もバイトだったんだ


 勝手に暇だと言われるのは心外だよ


(教育が足りなかったみたいね)


 そうだね


 おかげではじめての勧誘は断る必要もなかったよ


 ♢♢♢♢♢


「ねえ堀くん。さっきはるくん誘ったって言ってたよね? 来てる?」


 堀は周りを見渡して春斗がいないことを確認した。わかりやすく冷や汗を流しながら夏希に向き合う。


「おや? いないっすね。ちゃんと部室と時間教えたんすよ。迷子にでもなって来れなかったとか?」


 この時、堀は自分の失態に気付いていた。

 ()()()()()を教えていないことを。


 サークル棟の部室に来ること。


 部室は案内板を見ればわかることは伝えた。


 しかし、サークル名を知らなければ探すことすらできないのだ。


「堀くんさぁ、しまった! って顔してるよ? 怒らないから本当のこと言おうか」


 このまま隠し通すことは無理だと悟った堀は大人しく事実を伝えた。


「なつさんすみません。サークル名も活動内容も教えてないっす」


 そんな堀の告白に嘆息しながらも、春斗に声を掛けてくれたことに感謝をした。


「はぁ、仕方ないわね。連絡先は聞いてくれた?」


「いや、それは聞いてないっす。ヤローの連絡先聞いてもしょうがないんで」


 聞いてないとは思っていたけど、その理由はどうなの? とため息をついてしまった。


「な、なつさん?」


「その言い方だと女の子なら連絡先を聞いてたってことね。いいわ。いざとなったら妹に聞いてみるから。家もわかってるしね」


(この時は失念してたの。きみが私と彼女と勘違いして取り乱してたことを)


 どうでもいいことだったんだよ


(言い方)


 たいしたことじゃないんだよ


(あまりいじめないで)


「なつさんにとっても幼馴染なんすよね? なつさんが連絡先知らないってことが意外っす」


(私はきみと違って友達付き合いが上手なのよ)


 じゃあ僕のことなんて無視してくれてればよかったのに


(いやよ。せっかく再会できたのに)


「ちょっとね。いろいろ事情があるのよ」


「いい女には秘密がいっぱいっすね」


「ははは、そうね」


 堀を相手に否定しようものならば、何倍返しかで美辞麗句を並べられてしまうことを夏希は経験則で知っていたので、あえて受け流しておいた。


 ♢♢♢♢♢


『ピンポ〜ン』


 翌日


 朝早くから誰かが訪ねてきたんだ


(迷惑な人ね)


 本当にね


 僕は3時までバイトでまだ寝ついたばかりだったんだよ


(あ、はい)


 訪ねてくるような友人もいなければ


 約束している業者もなかったので居留守を使うことにしたんだ


(むうっ!)


 どうしたの?


(なんでもないですよ!)


『ピンポ〜ン』

『ピンポン、ピンポン、ピンポ〜ン』


「ふぁ〜あ、ん? まだ7時じゃないか。大家さんか?」


 念のためカメラで確認すると隣人さんがドアップで映ってたんだよね


(……)


『ピッ』


 大家さんだと思っていた僕はついボタンを押してしまったんだ


 なんとか声は出さずに済んだんだけどね


『はるくん。おはよう〜。一緒にモーニング行こうよ』


 妙にテンションが高いあなたはきっと酔っ払ってたんだよね


(はい。ごめんなさい)


 僕は見ないふりをしてカメラを切ろうとしたんだ


『お〜い! はるくん。見てるのはわかってるぞ。早く出てきなさ〜い!』


 突然大声を出すんだから近所迷惑もいいところだよ


 僕は仕方なく扉を開けて対応することにしたよ


(えへへへ。無視はよくないよね)


 大声出すのはどうかと思うけどね


「ちょっと先輩、大声出すのやめてください。近所迷惑です」

「えへへへ、おはよう、はるくん。夜明けのコーヒー飲みに行こうよ。愛知と言ったらモーニングだよ」


 お酒臭かったよね


(うっ、女性に対して臭いって言葉は失礼よ)


 そう思うならちゃんとケアしようね


「1人で行ってきてください。昼過ぎからバイトなんで寝たいんですよ」


「え〜! せっかく女の子が誘ってるんだからデートしようよ」


 ()()()


(いいでしょ別に)


「そんな間柄ではないです。迷惑なんでお帰りください」


(迷惑承知だったんだよ)


 自覚あるならやめようね


(多少強引じゃないと捻くれたきみは相手してくれないでしょ? だからお酒の力も借りたんだよ)


「はるくん? そりゃ別れた彼女のお姉ちゃんだけど、もう2年以上経ってるんだし私達、幼馴染じゃない。昔みたいに接してよ」


「はっ? 2年以上? なっちゃん何言ってるの? まだ1年も経ってないよ。あんなふられ方して簡単に忘れられるわけないよ!」


 あなたは知ってたんだね


(きみは知らなかったんだね)


「もう僕には関わらないでくれ!」


 僕は扉を閉ざしたんだ




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