親バカ
小包の中に入っていたのは、制服と教材だった。制服は、冬服と夏服のものが入っている。どちらもスカートは太ももの真ん中くらいの赤いチェックのもので、違いは生地の薄さくらいしかない。だが上は、冬服はワイシャツに、グレーのブレザー。グレーなので一見地味に見えるが、金色のボタンがついていたり、ところどころ黒で縁取られていて、よくみると可愛い。無地ならどんな色のセーターを着用してもよいことになっている。夏服は基本的に、スカートとワイシャツ、胸元にスカートと同じ模様と色のリボンをつける。
やっと前世で果たせなかった青春の一歩が踏み出せた。心の中ではとても感動している。この世界なら恨みを買っても魔法で自衛くらいできるので安心だ。それにこの世界は入試と入学式の間隔がとても短い。実は入学式は明後日に控えている。
ミランに着替えを手伝ってもらい、支度を済ませると、朝食のために食堂へ向かった。両親はもう仕事に行ったかと思っていたが、まだいてくれたようだ。
「ルミア、合格おめでとう!」
「さすが私の娘ねぇ。」
「ありがとう、お父様、お母様。」
「いやぁ、こんなにうれしいものなんだなぁ。」
「本当にねぇ。」
両親はまた目を潤ませている。涙もろすぎて涙腺が心配になってくる。
「ふふふっ、ここまで育ててくれてありがとう。これからもよろしくね。」
そう言うと、お父様はおいおい泣き始め、お母様は目元にハンカチを当てた。・・・大丈夫・・・かなぁ?
二人は落ち着いてから話始めた。
「そういえば学院生は寮生活になるんだっけ?」
「そうですわ。」
「寂しくなるわねぇ。」
「家に帰る楽しみがなくなるな・・・」
「長い休みのときは帰ってきますわ。」
「そうだな!じゃあ普通の日は仕事を詰め込もう!」
「そうですわね。」
ちょっと思考がずれているのがうちの親です。二人ともワーカーホリックなんだよね。
「無理はしないでよ?」
「しないしない。な!ミルア!」
「そうよ、安心しなさい、ルミア。」
こうして楽しく朝食を食べていると、慌てたように、執事のカリルが入ってきた。
「どうしたんだ?カリル。」
「お食事中に申し訳ございません。ただ、宰相様からふくろう便でこちらのお荷物が・・・」
「っ!?早くこっちに持ってきてくれ!」
「は、はい!」
ふくろう便とはその名の通りふくろうが急ぎの荷物を届けるというもので、どんなに遠くても半日以内に着くようにされる。それほど大事なものが運ばれるときなどに使われる。宰相からこんなものが届いたらsりゃあ驚くわ。・・・何か原因は私にあると思うけど。
お父様は荷物を開けて、中に入っていたものを見て、目を見開いていた。何が入っていたのか私とお母様が考えていると、お父様は箱に手を入れ、中身を取り出した。お父様の手には花束と手紙が握られていた。私たちはきっとポカーンとしていたと思う。私にもよく理解ができなかった。お父様は少し考えていたが答えが出なかったのか、ハッとして手紙を開いた。お父様はぶつぶつと手紙を読み始めた。
内容は、私がゼラルを助けたおかげで学院を合格できたことのお礼だった。助けてもらったんじゃ合格じゃないと一瞬合格を取り消してもらおうと思ったみたいだが、私が、実力だけではなく、運も必要で、ゼラルにはそれがあっただけと言ったのをゼラルから聞いて納得してくれたらしい。何よりゼラルが初めて友達ができたと喜々として話してくれたらしく、その友達から引き離すのも悪いと思ったらしい。私は照れ臭かったけど、ゼラルに友達と思ってもらえてうれしかった。花束は私の合格祝いとお礼の気持ちらしい。ゼラルが私が不合格なはずがないと言ったそうだ。
それを読み終わったお父様はこちらを向き、言った。
「ルミア、お前よくやったな!さすが俺の娘だ!!」
「ええ、ちゃんと人を思いやることもできるのね!嬉しいわ。」
「宰相様から手紙が来たときはビビったが、宰相様のご子息と友達になったとはな!アッハッハ!」
「すごいわねぇ。まあ友達に立場なんて関係ないわよね。」
私はやっぱり爵位などにも欲がない、仕事に一生懸命な親で良かったと思った。