魔法試験突破!
少年はもう半分のゴブリンの群れを吹き飛ばし、こちらに向かって言った。
「90ポイントもらったよ。風魔法で空を飛べるなんて珍しいからなー。着いてきて正解だったわー。」
「ああ、そういうことでしたか。それならどうぞ。だけど、後ろを見た方がいいですわよ?」
その少年の真後ろにはゴブリンロードが立っていた。
「・・・おっと。こいつは俺の手に余るな。せいぜい頑張りなよ!!」
そう言って少年は走り去っていった。
「さあ、ゼラル。火魔法を撃つのよ!」
「無理だってやっぱりぃ!だってあの人一気に十五体のゴブリン倒せるのにゴブリンロードは倒せないんでしょお!?無理だってぇ!!」
あまりにも慌てているので私はゼラルを落ち着かせようと言った。
「安心しなさい。私は一気にゴブリン百体は倒せるわ。」
「そうじゃないんだよぉ!!」
違うのか。でもこんな会話をしている間にもゴブリンロードはこちらに来ている。
「騙されたと思って一回撃ってみなさい。」
「・・・もし死んだら恨むからな。」
「はいはい。」
そう言ってゼラルは手から火を放った。その火は頼りなく、ヒョロヒョロとゴブリンロードの方に飛んで行った。これは魔法を教えてあげる必要があるわね。その火がゴブリンロードにたどり着く少し前に、私は全力で青い火の火魔法を撃った。私とゼラルの火魔法は同時にゴブリンロードに着弾した。よしっ、とガッツポーズを決めようとした瞬間、
____ドォォオオン!!!という音が森中に響き渡った。地面が揺れるほどのその爆発の真ん中は間違いなくあのゴブリンロードだ。咄嗟に水の壁を作って爆発を防いでいなければ危なかった。
・・・やりすぎたわ。
「・・・ルミア。」
「ん?どうしたのゼラル。」
「君、ほんとに人間?」
「あら失礼ね。でも25ポイント、手に入ったわよ。」
「・・・そうだね。それには感謝するよ。」
ゼラルはいろいろと諦めたようだ。でもこれでゼラルが不合格になる可能性はなくなった。そのあとも私は受験者の手に余る高得点の魔物を次々に仕留めた。気づけば500ポイントになっていた。ゼラルは諦めて私の後ろを着いて周っていた。25ポイントあれば十分らしいので、もう戦闘には参加しなかった。
「しゅううううううううりょおおおおおおおお!!」
という学院長の拡声魔法を使った終了の合図が聞こえたので、私たちは最初の場所に戻った。
「最初にも告げた通り、10ポイント以下の者には帰ってもらおう!!」
そう言うと、半数以上の受験者が出口の方へ歩いて行った。なかには泣いている者もいた。ゼラルはその光景をジッと見てから言った。
「・・・なんか悪いよなぁ。」
「何が?」
「だって、ポイントを手に入れたのは君が居たからで、本来なら僕もあっちの立場のはずなのになぁって思って。」
「あの人たちには運がなかったのよ。魔物と戦うには実力も当然必要だけど運も大事なのよ。あの人達とは違って、ゼラルにはそれがあっただけよ。」
「・・・本当にありがとう、ルミア。」
「いいのよ。だって、友達でしょう?」
そう言うと、なぜか自然に笑顔になれた。今までで一番いい笑顔だと思う。これが友情なのね、と思えた。
「・・・うん。そうだね。」
ゼラルの顔はは少し残念そうにも見えた。私と友達はやっぱり嫌なのかしら。
「___さて。魔法試験を通過した諸君らには面接が残っている。だが面接はあまり成績に響かないから安心すると良い。少し休憩をはさむ!一時間後に面接会場に集合だ。それまでは食堂を開放する!ではまた後でな!」
そう言って、学院長は立ち去った。私たちも学院に行こうとしたとき、前にさきほどゴブリンを吹き飛ばした少年が立っていた。少年は私たちに気づくと、こちらに走ってきた。
「お!お二人さん!もしかしてゴブリンロード倒したの?___なーんてな!」
少年はあっはっはと笑いながら言った。
「さすがに無理だよなー。あ、忘れてた。俺はカイって言うんだ。カイ・スチュアート。あんたらは?」
スチュアート・・・魔法師団長の息子ですわね。何でさっきからビックネームばかり私のところに集まるのよ・・・
「通りで魔法が強いと思いました。僕はゼラル・ミルシュアです。」
「私はルミア・ルノワールです。よろしくお願いいたします。」
「おーよろしくねー。にしても宰相の息子さんと公爵令嬢さんが一緒にいるなんてねー。もともと知り合いだったのー?」
こいつ、軽いな。ゼラルと私は顔を合わせた。ゼラルもそう思っているようだ。
「いえ、さきほど出会ったばかりですが。」
「ふーん。じゃあ俺も仲間に入れてー!」
再びゼラルと顔を合わせることになった。