いじめられたけど・・・
「おはよう、みんな・・・?」
私はいつも通りに登校して、いつも通りにあいさつをした。いつも通りにあいさつが返って来るものだと思ったから、少し首をかしげてしまった。
「おはよう、ルミア。」
いつも私の机の周りに集まっているはずの人が居ないし、あいさつもゼラルからしか返ってこない。
少し、おかしいわね。変わったことといったら教室の入り口でフーニアとエミリがこちらを見て笑っていたことと少し変な悪寒がするだけなのに。あの二人の目は前世でよく見た目だったわ。
「ベル、おはよう。」
「・・・・」
ベルは私の声に反応しない。それどころか私を見ないように教科書を開いて読み始めた。
・・・私、何かしたのかしら。そう思って、エレナや仲良くなった子たちの方を見るが、みんな目を合わせないし、目があってもすぐそらされる。その様子を見て笑っている子もいる。
前世と同じね。隣のダリーシャの方を見ると、ばっちり目が合う。良かった、ダリーシャは目をそらさない。・・・そう思っていた。
「ルミア、俺はお前が嫌いだ。お前は俺達を誑かしていたんだな。もう一生話しかけるな。」
逸らしてくれた方が精神的ダメージ小さかったなぁ・・・まあ慣れてるんだけどせっかくこの世界で友達になったのにこうなるのは嫌だなぁ。
でもこうなると一つ疑問が生じる。私は準備を終わらせてから後ろを振り向く。
「ねえ、ゼラル・・・」
「大丈夫?ルミア。みんなどうしたんだろ。おかしいよね。」
「あなたは本当に平気なの?」
「うん、みんなたぶんルミアを憎んでいるか何かだと思うんだけど、僕はいつも通りかな。」
「そう、良かった・・・」
やばい、少し目が潤んでしまった。さすがにここで泣くわけにもいかない。いじめてる側からしたら相手が泣いているのを見るのは楽しいでしょうから。
「ゼラル様。」
「どうしたのさ、ベル。」
「別に私はどうもしてませんよ。ただ今までその女に騙されていいように利用されていただけです。あなたもその女に騙されているのですよ。話すのをやめたらどうでしょう。」
私はゼラルと顔を合わせる。ゼラルも微妙な顔をしていた。もうここまでくれば何かの魔法がかかっているに違いない。
「ベル。」
「・・・」
相変わらず無視される。だから魔法解除の魔法をかけてみた。
「ベル。」
「あ、ルミア様!おはようございます!何か先ほどまでの記憶にモヤがかかっているのですが何か知りませんか?」
いつも通りのベルだ。
「これは当たりね。ゼラル、後で話しましょう。」
「うん、そうだね。」
「ゼラル様、なぜその女と話しているのですか?」
「「え?」」
ベルにまた魔法がかかった。犯人があえて魔法をかけたのか、この教室に魔法がかかっているのか。教室自体にかかっているのだとしたら今すぐには解けない。前者にしろ後者にしろゼラルが魔法にかかっていないのは謎だけれど。
「みんな、おはよう。ん?これは誰か...まあ後でいいか。」
よくないですメルイア先生。なんか気づましたよね。
そして午前の授業が終わる。遅刻気味でやって来たカイにも魔法がかかってしまった。やっぱりカイは敵に回したくない。イケメンなのにあの悪人面で目付きも悪くて、体格の良さ的にさすがに怖かった。
ゼラルと一緒に食堂に向かってサンドイッチを買ってから、話ができる中庭に行った。中庭には今の季節の色とりどりな花が咲いていて穏やかな気持ちになれる。今の心情じゃなきゃね。
「ゼラル、あの状況何なのかしら。」
「さあ、僕は魔法のこと君ほど詳しくないと思うけど。でも先生の反応的に教室自体に魔法がかかっている可能性の方が高いんじゃないかな。それにしても酷かったよね。」
「ええ、本当に。あなたがいなかったらどうしようかと思ったわよ...」
本当にゼラルがいなかったら辛かったわ。あ、また目から涙が。ゼラルにバレちゃうわ...慣れてるはずなのにどうしてかしら。
「ルミア大丈夫!?や、やっぱり辛いよね。ごめんね僕何もできなくて...」
バレちゃったわ。ごめんなさい本当に。
「ううん、本当にゼラルがいてくれるだけでいいのよ。だけど...」
「だけど...?」
ゼラルが心配そうな顔で私の顔を覗き込んでくる。
「なぜあなたには魔法が効かないのかしら。」
そう言うとゼラルは少し悩んだような表情をする。
「...うん、まあ心当たりはあるんだけどね。」
「あるの!?」
「でもこれは...いや、話した方がいいかな。」
これは相当大きいことよね。少し覚悟して聞いた方がいいのかしら。でもよくよく考えたら少し話が壮大になってないかしら。
「実は僕、僕達の家はね...」




