嫌がらせ
「まずは何をしようかしら・・・」
私はあの女を精神的に追い詰める方法を模索していた。やっぱりあの女の勉強を邪魔するのが一番だと思うわ。教科書をとってしまいましょう。
「ねえ、ミナ。」
「なんでしょう、フーニア様。」
ミナは前から私の友達で、私の言うことは何でも聞いてくれる、イイ子だ。
「私、実は教科書をなくしてしまったのだけれど、どうもルミア、って子にとられたみたいなの。」
「え!?あの主席の!?そんな人だったのですね。でもなんでルミアさんにとられたと分かったのですか?」
この子は言うことは聞いてくれるけど、頭が悪いわけじゃない。でも私を信頼し過ぎなとこもある。そこが彼女のいいところね。
「よく見たら私の教科書についてしまった汚れがついているのよ。だからあれは私のよ。」
「そうなんですね。じゃあ持ってきます。」
ミナにこのことを話したのはこの子が言うことを聞いてくれるからだけではない。この子は転移魔法が少し使えるのだ。今は物を移動させられるみたい。
ミナが魔法を使うと、ミナの手にあの女の教科書が現れる。
「はい、フーニア様。」
「ありがとうミナ。あなたは本当に優しいわね。」
「それほどでもないですよぉ。」
ふふ、この子は本当に使えるわ。それに次は癖の強いあのランドル先生だ。怒られないはずがない。
「では授業を始める。今日は魔法学をやりますぞ。」
・・・あれ?さっき出しておいた教科書がないわね。どこへ行ったのかしら。
「では教科書24ページ・・・ルミア、教科書はどうしました?」
「・・・先ほどまではあったのですが。」
「本当ですか?」
「ええ。信じてもらえないと思いますが。」
そう言うと、あのランドル先生が笑う。
「いや、信じますぞ。生徒の言い分を信じなくて先生ができると思いますか。」
「え!?」
後ろの方から驚いたような声がする。まああのランドル先生だもんね。私だって驚いた。
「私の言い分がおかしいとお思いで?フーニア。」
「いえ、なんでもありませんわ・・・」
そう言うと窓際からざわざわと聞こえてくる。やっぱ自分が贔屓されているみたいで嫌だわ。みんなも私だけおかしいと言っているのでしょうね。
・・・おかしい。なんであの女は許されるのよ!他の子が忘れたときには怒ってたくせに。
でもクラスメイトの怒りの矛先あの女に向かえばいいわ。
幸い私は聴力が優れているからね。窓際の席の子たちの話まで聞こえる。
「さっすがルミアちゃんだな!ランドル先生から信頼を得てるなんて!」
「ああ。なんかちょっと誇らしいな。」
「やはり私たち平民にも優しいルミア様のことは先生にも伝わっているのですよ!!」
「ルーファはルミアさん好きだよなぁ・・・」
「もちろん!アイドルのようにお慕いしています。実際に話したことはあまりありませんが・・・」
・・・どうして男ばかりでなく女にも好かれているの!?ああ、みんな騙されているわ。
「それでルミア、教科書はどうするんですか?」
進めるページによっては今日だけは何とかなる。
「今日はどこのページを進める予定ですか?」
「24と25です。」
「なら私内容を覚えています。ちょっと待っててください。」
良かった。このページはリュカに教えた魔法が乗ってるページだ。何回も読み返した。だから文の並びや改行の場所まで覚えている。
あとは印刷機とコピー機を頭に思い浮かべて教科書の見開き1ページを手の上に出す。
「おお!すげぇ!」
「さすがルミアさん!!」
「どうやったんだ!?」
照れるわね。でも前世の記憶がある分ズルをしている感じがあって申し訳ないわ。でもお礼の意味を込めて声のした方に微笑みかける。なんか少しうめき声のような何かが聞こえたけど・・・そんなに変だったかしら。
「はい、できたので授業を進めてください。時間を取らせてしまって申し訳ございません。」
「・・・おお、すごいですねぇ。じゃあ、授業を始めましょう。まず1行目____」
なんであの女の株を下げようとして逆に上がってんのよ!
そのまま何も問題はなく授業は終わってしまった。
「はぁー・・・」
どうやったらあの女を貶めることができるの・・・
「ねえ、私も手伝おっか?」




