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急速な成長

「あ、ルミアおかえりー。」


「いやいや、ちょっと、え?」


 私が驚くのも無理がないと思う。だって、私がリュカに魔法を許可したのは今朝のはずなのにこれは・・・


「ルミア、僕頑張ったんだよ!!ほら!」


「見せられなくても分かるわ。」


 今はもう日が沈んでいる。なのにこの部屋の電気は点いていない。でもこの部屋は明るい。つまり・・・


「リュカ、魔法上達しすぎじゃないかしら?」


「そうなの?基準が分からないから何とも言えないんだけど。」


「にゃー。」


 ・・・うん。この子には魔法の才能があるわね。まず普通の子じゃあんなにすぐに魔法が使えるようにはならないし、なったとしてもこの威力になるまで早くても一週間はかかるはず・・・


「早いわ。これなら次の段階に移ってもいいくらいよ。」


「ほんと!?これで早く学院に入れる!?」


「・・・考えておくわ。じゃあ、夕飯作ってくるわね。」


「はーい。」


 そうしていつも通りにリュカとご飯を食べて、勉強を教えて、床に就く。ほどよいだるさが体を襲い、すぐに眠りに落ちた。




 リュカに次にやる魔法を教えて学院に行く。習得に一ヶ月かかる魔法だから、さすがに今日中は無理だろう。


 学院に向かう途中、カイに会った。こんなに早くに起きているとは珍しい。でも中庭の端っこに座り込んで何をしているのだろう。


「おはよう、カイ。そんなところで何をしているの?」


 カイはビクっとしながらこちらを見た。


「あぁ・・・ルミアちゃんか。おはよぉ。」


「何よその反応。ちょっと傷つくわよ。」


「ごめんねぇ。ちょっといろいろねぇ。」


 カイは明らかに後ろに何かを隠している。


「カイ、後ろに何があるの?」


「な、なんでもないってぇ。まああるんだけど別にいい物じゃないよぉ。」


 あるんだ。でもそこまで言われると気になる。


「カイ、私の指をよく見て。」


 私は人差し指を立てる。


「んー?何ぃ?」


 カイが指に顔を近づけた瞬間、少し大きな音の静電気を起こす。さすがに誰でもびっくりすると思う。


「うわ!?」


 カイが驚いた瞬間、私は「隙あり!!」と言いながらカイの後ろに回って、隠していたものを見る。そこには・・・


「にゃーお。」


「え・・・・?」


 最近、猫が大量発生でもしているのかしら。猫は見つかったら、道具として売るためにだいたいすぐ捕まってしまう。だから野生の猫なんて見る機会はほぼない。


「あー・・・そのぉ、このことは誰にも・・・」  


「かわいい!!」


「え?」


 ルルは黒猫で、凛々しくて、美人って感じの猫だったけど、この子はかわいいって感じの猫だ。長毛で短足。確かマンチカンってやつに似てる。


「カイ、この子あなたが飼っているの?」


「え、いやぁ飼ってないけどぉ・・・」


「なんで?」


「バレたら困るし。」


「まあね。でもうちは飼ってるわよ。黒猫。」


「え?飼ってるの?」


 貴族の癖に?とでも言いたげな顔だ。まあカイも私が猫を見つけた瞬間殺すか売り飛ばすかするかと思ったのだろう。私でもルルが他人に見つかればそう思う。


「私は動物に対して何も抵抗はないわ。飼っている子は家族同然に扱っているもの。」


「そうなんだ。珍しい人間だねぇ。」


「確かにそうね。良かったらその子、うちで預かるわよ?」


「え?いいの?」


「いいわよ。一匹も二匹も変わらないでしょ?」


「ありがとぉ!!」


 カイは喜ぶと人の手をとって振り回す癖でもあるのだろうか。登校している生徒がチラチラとこちらを見ているのだけれど。


「まあ、帰るまではここにいてもらうけどね。それと、もうすぐ遅刻してしまうわ。」


「あ、そうだねぇ。じゃあシロ、向こうに行ってて。」


「にゃーお。」


 そう言われると白猫は奥に帰っていった。っていうかシロって。犬じゃないんだから。

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