面倒なヤツ
「ふぅん。そうだったんだぁ。」
「ええ、私も意味が分からないわ。」
「まぁ、あいつが面倒くさいのは知ってたけどぉ、しばらく会わないうちに少し大人しくなってるねぇ。」
「え!?あれで大人しいの!?」
「うん。そうだねぇ・・・自分が気に食わないことがあると決闘を申し込んでくるのは変わらないんだけどぉ、前は相手が出てくるまで家の前に半日近く待ってたことがあってねぇ・・・」
「そいつも大変だな。」
「まあ窓から飛んで逃げたけど。」
「お前か!?」
「そうなのね。でも剣限定の決闘ねえ・・・」
「・・・そこが問題ですね。」
「あいつは魔法が使えないらしいですね。」
え?じゃあどうやって試験を突破したの?っという顔をしていたらしく、ベルが答えてくれる。
「代々オズベルト家の者には魔力が備わっていないんです。だけど特別な、”魔剣”と呼ばれるものを持っていて、魔物を相手にできるんです。魔剣の作り方はオズベルト家に仕える、レズール家の者しか知らないらしいです。」
「へぇそうなんだ。」
「でもルミアちゃんどうするの?あいつ、決闘負けたことはないんだよ。俺は戦ってないけどぉ。」
「大丈夫よ。剣に似た物なら使ったことがあるし、魔法で剣の形を作ればいいんじゃないかしら。」
「え、剣使えるの?」
「剣みたいなもの、よ。使ったのはだいぶ前だけど。」
「まあ、あんな大勢の前で決闘を申し込まれてたら何人か人が見に来るんじゃない?」
全ての授業が終わった放課後、ホームルームが始まる。メルイア先生がいつも通りに話を始める。
「____今日も何かこれといった事件がなくて良かった。ダリーシャとルミアは後で先生のところに来るように。以上だ。」
・・・絶対決闘のことじゃん。私たちは先生のもとに行く。ゼラルたちは闘技場に向かった。
「ダリーシャ、お前復活早々、ルミアに決闘を申し込んだらしいな。校内はその話で持ち切りだぞ。観覧する生徒も多いだろう。だがなぜ決闘を申し込んだんだ?」
できれば決闘なんて見ないでほしい。友達は作りたいけど、そういう意味で注目されたくはない。
「俺の怪我の原因が彼女にあるという噂を聞いて、手っ取り早く決闘を申し込もうと思って申し込みました。」
・・・何言ってんだこいつって顔になってしまったと思う。すぐにポーカーフェイスに戻したけど。先生も一瞬そんな顔をしてた。
「・・・なぜそこで決闘に至ったんだ?」
先生が私の聞きたいことを聞いてくれた。
「剣と剣をぶつければ互いの思いが通じるからです!」
聞いた後の方がよく分かんなかった。先生もそうらしい。
「そ、そうか。まあいいだろう。」
「じゃあ、俺はもう行きます。ルミア・ルノワール、逃げんなよ?」
なんか睨まれた。なんだろう、三白眼で顔は整ってるとは思うんだけど、少し目つきが悪いし、悪人面な気がする。あと偏見だけど、剣士って脳筋ってイメージが少しあるから熱血系って感じもする。瞳も髪も赤いしね。
「・・・ルミア。正直私のはダリーシャの気持ちが伝わってこなかった。」
「私もです。きっと剣の使い手ならではの何かがあるのでしょう。」
「まあそうだろう。だがお前はいいのか?普通に考えたらお前に不利な決闘だ。」
「まあ勝てるとは思ってませんが、私もすぐには負けませんわ。」
私は負けず嫌いなのだ。まあ本当に勝てる気はしないのだけれど。
「そうか、まあいい。この学院にいるうちは絶対に死なないからな。健闘を祈る。」
「ありがとうございます、先生。」
そして私は教室を出て、闘技場に向かう。
____実は決闘の噂というものはどんどん悪化していたようだ。
「なあ、今から闘技場で決闘が行われるらしいぜ。」
「誰の決闘だ?」
「なんでも一年の主席のあの美少女ちゃんとダリーシャ家の三男らしい。」
「ああ、あの悪人面の。」
「そうだ。なんでも剣だけでの決闘を申し込んだらしい。魔法は禁止だと。」
「それ完全にその子不利じゃないか。」
ここまでは合っている。
「なんでも『俺が勝ったらお前は俺の下僕になれ。』とか言ったらしいぞ。」
「うわっ・・・そんなかわいい子に何する気だよ。前から良くない噂は聞いていたが。」
「なんでも一目惚れらしい。可哀そうに・・・」
「・・・応援しに行こうぜ!!」
「おう!負けたとしてもみんなで抗議することになってるからな!」
「・・・なんでそんな噂が出てるの・・・」
それを偶然耳にしたゼラルは何とも言えない気持ちになっていた。




