運命の出会い・・・?
学院の正門に着き、馬車をミランが開けて降りた。そんなミランの手を取り、私も続けて降りた。学院を見ると創立二百年とは思えないほど綺麗で広く、王城にも劣らないほどだった。私がぼーっとしているとミランが私に話しかけた。
「お嬢様、私がいられるのもここまでです。お嬢様の力なら入試は必ず受かります。だからどうか落ち着いて受験してくださいね。」
「ええ、そうねありがとう、ミラン。良い報告を待っていてね。」
「はい。また後でお迎えに参りますからね。」
「うん。」
ミランはまた馬車に乗り、公爵家に帰っていった。私は入試会場に向かった。緊張はしなくなったが、先ほどよりも胸騒ぎがする。だが、それを周りに感じとらせないよう、堂々と歩き、校舎へ向かった。皆がそんな私を見ていた。自分や周りが不安な分、こうして堂々と歩いていると、余計に周りが不安を煽ることになるはずだが、皆が私を見る目は社交界に出たときの周りの目と同じだ。前世の私があるから断言できる。これは見た目が完璧な天使であるルミア、に見惚れているのだ。
ちょっとした優越感を覚えつつ、優雅に歩いていたので、横から飛び出してきた影に気づかず、思いきりぶつかってしまった。流石に入試前に転ぶのは縁起が悪いし、油断していた私も悪いので、自分と相手の足元から風魔法で風を吹かし、体を浮かせた。もちろんスカートは抑えているわ。そのまま風で体勢を整えてから地面に足から降ろした・・・のだがぶつかった子、男の子は、突然の出来事に理解が追い付いていないのか、カクンと膝から落ちてその場に崩れ落ちた。私は頭の中を前世の自分から美しい公爵令嬢に切り替えてからその男の子に近づき、手を差し伸べながら言った。
「私はルミア・ルノワールですわ。私が考え事をしていて避けることができず、申し訳ございません。その、立てますでしょうか?」
その男の子は動かずに私の顔をじーっと見ていた。流石に少し手がつかれる。
「・・・あの?」
「・・・え?あぁ!!ごめんなさい!立てます立てます!!」
そう言って男の子は私の手を取り慌てて立ち上がった。顔は真っ赤だが。
「申し遅れました!僕はゼラル・ミルシュアと言います!僕が前をよく見ずに走ってしまったので僕が悪いんです!そればかりか魔法で転ばぬようにしてくださってありがとうございます!!」
ミルシュア・・・聞き覚えがあるわね。えーっと、確か宰相の苗字ですわ。ご子息と同年代なんてね。
「落ち着いてくださいな。でしたらこれはお互い様ですわ。・・・それに、受験前に転ぶなんて縁起が悪いでしょう?」
そう言ってほほ笑むと、ゼラル様は余計に顔を赤くした。おもしろい子ね。良いお友達になれそうだわ。
「そ、そうですね!あ、時間が迫ってますよ。お互いに頑張りましょう!」
「ええ、ありがとうございます。もし受かったら、良いお友達になりたいですわ。」
できるなかで最上級の笑顔を見せた。
「も、ももももちろんです!で、ではまた!」
彼は結構頼りなさそうに見えるけど、宰相のご子息はとても優秀と聞いています。万が一にも入試に落ちるなんてことは無いと思います。ちなみにそんなやりとりを見ていた周りからは、いいなぁ、とか俺も友達になりたい、とか聞こえました。そりゃあ将来は宰相になるであろう人物と友人になれたら嬉しいでしょうね。