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タマ

 放課後の談笑も終わって、私たちはカイとゼラルと分かれて女子寮に向かった。エレナとベルは偶然にも部屋が上下だったりする。たまに上のベルの部屋から何かが落ちる音もする。おっちょこちょいなんだろう。


 この寮には基本的に家具の持ち込みが禁止されている。身分によっては部屋に差が出てしまうからだ。寮にはもともと、ベット、ソファ、テーブル、クローゼット、本棚がある。シンプルなデザインで、前世の私の好みに刺さっていたので良かった。やはり公爵家ともなると物の一つ一つが高級品なので息苦しくなる。


 私は帰ったらすぐにお風呂に入る。ここの入浴剤、石鹸やシャンプー、トリートメントは薬学の教師によって作られている。趣味だそうだ。ほしい生徒が持って行く感じで、私は気に入っているのでその先生の弟子にでもなりたい。


 今日の入浴剤にはバラの花びらが入っていた。白濁のお湯にバラの香りとバラの花びら。視覚的にも嗅覚的にも癒される。湯舟から出て体と髪の毛を洗う、石鹸はいい香りだし、肌も荒れない。シャンプーとトリートメントは低刺激なのにとても髪がサラサラになる。


 リラックスしてお風呂から上がると、ドライヤーをして少し休憩してから、夕飯の支度をする。この時間に窓を開けるといつも黒猫が入ってくる。この猫は入学当日、夜風に当たろうと少し学院の中庭を散歩していた時に倒れているところを見つけて助けたのだ。前世から動物、とくに猫が好きだった私は、改めて自分の魔力が高くて良かったと思った。怪我が酷くて、瀕死状態だった。ただその怪我は他の動物や魔物にやられたようなものではなかった。完全に人間にやられたものだ。そのときはその人間見つけたら殺してやる、と思っていたが、そもそもこの世界では魔物と違ってただの動物は食料か、ストレス発散の道具だったりする。まず人間がこうして猫を保護するのはあり得ないのだ。


 でも人間に傷つけられたこの黒猫も、私にはなついてくれる。正直めちゃくちゃ嬉しい。この猫には前世の記憶から、《タマ》と名付けた。前世の世界を少しだけ感じていたくて、安易な名前を付けてしまった。タマは喜んでそうだからいいけど。私はできた夕飯の中で、比較的薄味で、動物にとって毒ではないものを与えた。嬉しそうに食べてくれるので私も癒される。


 この子は私が寝るまでは部屋にいるのだが、夜中から夕方まではどこにいるのかさっぱり分からない。ただ気になるのが、この子の瞳にの色が紫色だということだ。私より色は薄いけど、少し似てると思う。だがまず、この世界では、魔力を持たない者は動物も人間も関係なく瞳の色が黒い。そんな者はどこにいっても虐げられる。元日本人の私としてはだいぶ複雑だ。


「みゃーお。」


「ん?どうしたの、タマ。」


「みゃー!みゃー!」


 何かを訴えかけるようにタマは私を見ながら鳴く。そして窓から出て行った。着いてこいってことかしら。


「ま、待って!」


 私は上着を羽織ってタマを追いかけた。着いたのは学院の裏山で、竜の山にもつながっている。生徒は基本立ち入り禁止だ。私は入るのを一瞬ためらったが、まあ最悪姿を消して飛んで帰ればバレないと思い、タマを追いかけた。


「みゃーお!」


 タマを追いかけると、少し開けた場所に出た。そしてタマの傍には私より一つか二つ年下であろう、栗色の髪の毛の男の子が倒れていた。見たところ外傷はないが、この山には神経毒を使う植物が多い。心配なので私の部屋に連れて帰って寝かせておいた。


 ・・・私はショタコンではないので安心してほしい。

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