罪な女(笑)
ゼラルを慰めた後、今度はカイの番になった。
「じゃあカイの番だよ。」
「はーい。」
そう言ってやる気なさそうに手を的に向かって上げ、風魔法を発動させた。魔法試験のときに見たようにこの年にしては威力が高すぎるその魔法は、今までビクともしなかった的が少し揺れるほどだった。
「おぉ、すごい!的が揺れたぞ!!」
「すごいです!」
「風魔法が使えるの羨ましいです。」
「それほどでもぉ。でも俺はルミアちゃんの魔法が見たいんだよね。」
カイはそう言ってこちらを見る。
「分かりましたわ。」
私は的に向かってゴブリンロードを倒したときの二割程度の威力で火魔法を出す。だが私の前世でやっていたゲームの影響か、火魔法が着弾すると爆発する仕組みになってしまっている。少し大きな音がして的を見ると、的が黒く焦げていた。
「「「「・・・・」」」」
「おほほ、やりすぎたようですわね。」
今度からはあれの半分くらいでやればいいのかな。
「ルミアちゃんは爆発魔法が使えるんだね。すごいなぁ・・・」
「いや、あれは爆発魔法では・・・」
「すごいですよルミア様!!私にも教えてほしいです!」
「・・・私も。」
「・・・今度ね。」
この世界の人は押しが強い。まあ私の前世の日本は控えめな感じだったからそのせいもあるかもね。
「ルミアちゃん。俺もおしえてよ。」
「カイは風魔法が使えるでしょう?」
「火魔法と風魔法の合わせ技を作ってみたいんだ。お願い。」
そう言ってカイは私にグイっと顔を近づけて頼み込んでくる。
___ち、近い・・・
こんな顔面偏差値が高い異性とか耐性なさ過ぎて死にそう。心臓がバクバクする。
「い、いいわよ・・・」
「やったぁ。ありがとぉ!」
カイは私の手をとり、ブンブン振り回した。カイって魔法のことになると楽しそうなのよね。だがその様子をゼラルがジーっと見てきた。
「どうしたの?ゼラル?」
「いーや、別にぃ?」
なんか羨ましいようなよく分かんない顔をしていた。これはもしや・・・
「ゼラル、嫉妬は醜いわよ。」
そう言ったらゼラルの顔は一瞬でボッと赤くなった。
「ちちちち、違うし!嫉妬なんかじゃないし!だいたいなんで僕がそんな!」
「違うの?せっかくゼラルでもできそうな魔法を探そうと思ったのに・・・」
「え?」
「え?」
「え?どういうこと?」
「だって、魔法、カイだけ教わるってことに嫉妬してたんじゃないの?これでも私、結構魔法に自信はあるわよ。」
「え?あ、ああ!そう、僕も教えて欲しかったんだよ!」
「じゃあ三人でやりましょう。」
カイが私の手を振り回すのをやめた。
「えぇ、三人でやるのぉ?」
「ダメかしら?」
本人は無意識だが背の高いカイをルミアが見つめると上目遣いになるため、カイには効果は抜群だった。
「うっ・・・別にいいけどぉ。ルミアちゃんってずるいね。」
「何のことか分からないわ。」
完全に取り残されたエレナとベルはその光景を見守るように温かい目で見ていた。最初に口を開いたのはベルだ。
「・・・ルミア様気付いてるのかな?」
「あれは多分無自覚だと思います。」
「・・・そうよねぇ。」
「罪な女ってやつですかね。」
「まああのルックスとスペックだし。私たち下の者にも態度を変えずに接してくれるし。」
「私たち平民の中ではもうファンクラブができてます・・・」
「・・・罪な女、ね。」
このあと二人はなぜか友情を深めることになった。




