グループに入って
実はあとの一人は私が勝手に決めちゃってたりする。私は窓際の席に向かった。ゼラルたちは不思議に思っていたが、私の意図が分かったのか着いてきた。どうやら止める気はないようで安心した。
私はさきほどカストロに蹴られていた少女を勧誘しようと思ったのだ。まず平民はまともな学院に入るまでまともに勉強はできない。もちろん魔法の知識なんかない者だっている。にもかかわらずこの学院でAクラスにまで入れるというのは相当優秀な証だ。今年は六名いるが、いないときは一人もいない。今年は異例なのだ。ちゃんと勉強できれば伸びる子も多い。それにあの子は平民の子の中で一番優秀だ。自分から身を引くあたり悪い子には思えないしね。
「そこのあなた、ちょっとよろしいかしら?」
貴族というだけで平民には恐れられることもある。増してや私は一応公爵家だ。貴族の中ではトップなので平民からしたら遠い存在なんだと思う。だから私はできる限り優しく、ゆっくりと笑顔で話しかけた。
「は、はい、なんでしょう?」
「あなた、魔法訓練のグループは決まっているかしら?もし決まっていないのであれば私のグループに入ってもらいたいのだけれど。」
そう言うとその子だけでなく周りにいた生徒も驚いたような顔をした。
「え、えっと・・・」
「ダメかしら?」
「いえ!そんなことはないんですが・・・平民の私なんかが・・・」
「私はあなたが平民でも例え貴族でも誘っていたと思うわ。あなたに興味が沸いたのよ。」
これは嘘じゃない。転生してから私は動体視力がとても良くなった。それでさきほどこの子がカストロに蹴られたときに瞬時に傷がふさがったところを見た。貴族は平民に容赦しない人ばかりなのでカストロも相当強くこの子を蹴飛ばしていた。本来なら出血くらいしているはずだ。だが今近くで見てもやはり傷はないし、さきほどの魔法での治療速度はただの平民にしては異常だ。きっとこの子は回復魔法を使える。私には回復魔法を模したものしか使えないので興味深いと思ったのだ。
「それなら・・・ぜひ私を入れてください!」
「ええ、もちろんよ。私はルミア・ルノワールよ。」
「私はエレナです。」
平民には苗字がないのだ。やっぱりこういうところは前世の制度を取り入れるべきだと思う。
その光景を後ろから見ていたゼラル、カイ、ベルも自己紹介をした。心配していたカイも何も言ってこなかったし、ベルにも平民差別の思想はなかったようで安心した。
____だがそれをよく思わないやつが一人いた。さきほどカイに追い返されたカストロだ。
なんで僕を断ってあんな平民を!!許せない!僕は侯爵家だぞ!?あの三人じゃなければ誰も僕に逆らえないのに!あいつらにいつか復讐してやる!!!
そして入学してから六日が経った。明日には魔法訓練だ。クラスにはもうすでにグループができていて仲の良い子が集まっている。あの日からカストロの姿は見ていない。私たちは魔法訓練のグループでよく話している。それに、エレナを通じて平民の子たちとも仲良くなれた。やっぱり平民の間では貴族は恐れられていたようで最初はわだかまりがあった。
しばらくすると、ホームルーム開始の鐘が鳴り、メルイア先生が入ってきた。




