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美少女になりたい!!

「「「「「俺(僕)と付き合ってください!!!」」」」」


 ______どうしてこうなった。






 私は公爵令嬢、ルミア・ルノワールですわ。私の一族は皆、この銀髪と、吸い込むような紫色の瞳から氷の貴族と呼ばれています。どうやら初代ルノワールが人族ではなかったようで、人族の血に勝ってしまうらしいのです。だけどそのおかげで魔力も多くて学院でもトップレベルなのです。


 実はそんな私には誰にも言っていない秘密があるの。それは前世の記憶がある(転生者)ということ!!夢にまで見た異世界転生ができてとても嬉しかったの。でも一つ問題がある。前世で私は高校生になる前に死んでしまったということ!高校の入学式へ向かうときに同じ志望校だったけど落ちてしまったライバルの女子に駅のホームから突き飛ばされるというよく分かんない死に方をした。


 これじゃよくある前世の知識でうんたらかんたらができないじゃないの!!義務教育の知識くらいじゃ異世界でもそんなに役に立たないだろうし。ただなぜかもともと頭は良く、運動神経も男子並みにあった。一つ不満があるとしたら、顔がとっっっっても!!ブッサイクだったのだ!!そのせいかは分かんないけどいじめにはあうし(ちゃんと陰で仕返しはした)、恋もしたことがなかった。毎日学校の花瓶の花を入れ替えるなどの乙女~って感じのことをしてみたけどいじめが悪化するだけだった。


 だから死んで目が覚めて目の前におじいさんが立っていたときはよく読んでいた転生物の小説などを思い出して中二心がくすぐられた。来たか?来たのか!?とわくわくしていたらそのおじいさんは口を開いてゆっくり言った。


「お主は前世で悪行をしなかった。お主をいじめた輩への仕返しも、靴と靴の靴紐をきつく結んで繋げることしかしなかったじゃろ?あれを見たときは笑ったわい。」


 そう言っておじいさんはかっかっか、と笑った。


「・・・それで私はどうなるんでしょう?」


「それをわしが聞いてやるのじゃ。わしはこう見えて神じゃからの。それにお前さんは割と気に入っていたんじゃ。・・・なんならあやつらに天罰を与えることもできるぞ?」


 そんなもったいないことはしない!!私の望みはひとつしかない!


「私を美少女にして異世界に転生させてください!!」


「そんなことでええのか?なんなら世界最強とか・・・」


「美少女にはなりたいけど、最強にはなりたくありません!私は学生生活を謳歌したいのです!友達と楽しくわいわいしたいんです!!!!」


 私は無意識におじいさんに近づき、その度におじいさんは身を引いた。おっと、熱が入り過ぎた。


「ま、まあ、お主の熱意は伝わった。美少女にしてやろう。」


「ありがとうございます!!」


「うむうむ。じゃあ目をつぶれ。」


 私は言われるがままに目をつぶった。すると、まばゆい光に包まれた。意識が遠のく。意識が完全に途絶える前におじいさんの、・・ままじゃ・まらん・・・もっ・・・しろく・ちゃお、と言う声が聞こえた。


 



 こうして生まれた私は公爵家の令嬢で、約束通り美少女で、という感じで生まれた。公爵家の令嬢というのはおじいさんが付け足したのか何なのかは分からないけど、前世の私の現実逃避の場でもある勉強をするのに不自由のない地位だったので良かった。


 それにこの世界では魔法が使える。私が前世で読んでいた本の魔法とは違って、その現象の仕組みが分かれば魔法は使えるらしい。だがこの世界では科学が発達していない。魔力がいくらあっても頭が残念だと宝の持ち腐れ。前世の記憶が中学生止まりでも元々理系だし、火魔法くらい使えた。五歳くらいで魔法学を習うのだが、親の前で酸素を調節して青い炎を出したところ、とても驚かれた。前世の記憶があるので飲み込みも早いし、全てのことに一生懸命取り組んだので、学力、魔法、礼儀作法、どれもが同世代の貴族だけでなく、年がだいぶ上の貴族よりも優れていた。なので十歳のころには社交界で容姿のおかげもあって、完璧な天使と呼ばれるようになった。恥ずかしいので知らないふりをしたが。


 そんな私もついに学院入学を明日に控えた。学院には中等部と高等部があり、十二歳から成人の十八歳まで所属し、それぞれ三年ずつである。平民から王族までが所属し、地位に関係なく魔法審査と学力審査、面接でクラス分けされる。まあ魔法が使える者は頭が良いはずなので魔法だけ見てクラス分けされた時もあったのだが。


 さすがに少し緊張してきた。高校入試の前夜もこんなだったな。そんな私の緊張を察してか、私が生まれてからずっと傍で仕えてくれる侍女のミランが紅茶を入れてきてくれた。紅茶を飲むと、身も心も温まった。そうして私はミランに話しかけた。


「ミラン、ありがとう。緊張が少しほぐれたわ。・・・私、合格できるかしら?」


「ええ、絶対できますよ!!ていうかできなかったら私が理事長に直談判しに行きますね!こんな完璧なお嬢様のどこに不満を感じたのか威圧させながらでも聞いてやります!!」


「え、ええ、ありがとう。でもほどほどにね。」


 彼女は燃えていた。表現ではなく、物理的に。彼女は魔力が高い。魔力が高い者の感情が高ぶると魔法が無意識に発動されることがあるらしい。そこまで私を想ってくれていると思うととても嬉しいけどね。


「あ、あと、友達できるかしら・・・」


 前世では友達と呼べる存在がいなかったのだ。入試よりもこちらが不安だ。


「お嬢様くらいの人なら周りから寄ってきますよ!!友達百人も夢じゃないですよぉー!!」


「ふふっ。そう言ってくれて安心したわ。」


 次の日起きるとまた燃えているミランの姿があった。お嬢様の武器は見た目でもありますからね!!とか言って髪型にも凝ってくれた。両サイドの髪を三つ編みにしてそれを後ろに持ってきてまとめる、ハーフアップだ。銀色でつやがあり、サラサラの私の髪の良さを最大限に引き出している。すれ違う人皆が二度見をするだろう。少なくとも前世の私ならする。そのくらいに美しい少女が鏡に映っていた。あのおじいさんには感謝しかないわ。


 朝食を済ませ、ミランと共に馬車に乗った。社交界に出てからは人見知りする暇もなかったので面接も余裕だし、テストや魔法にも不安はない。友達作りにも少し勇気が出てきた。だが何だか胸騒ぎがする。そうこうしているうちに馬車が学院に着いてしまった。

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