王都へ
「さて、アルン…」
「はい、なんでしょうか?父様?」
「お前は勇者の伝説を知っているか?」
「はい、本で読みました」
「そうか…なら勇者に選ばれたことの意味も分かるな?」
「はい、確か、最果ての地に眠る魔人王の完全復活の阻止、それに可能であれば討伐」
「そう、そしてもう一つ、転生者の探索そして連れてくることだ」
「何故ですか?」
「転生者は皆、生まれつき一つは特殊なスキルを所持しているらしいんだ」
「創造神様のお告げによるとその特別なスキル、そうだな…ユニークスキルとでも言うべきかな…そのユニークスキルの力が世界を救うのに必要らしいんだ」
「なるほど」
「そして、ユニークスキルを二つ以上所持している者を勇者というらしい」
勇者はユニークスキルを最低でも二つは所持していないとなれないということか…
「アル、お前は勇者になってしまった…ここを離れて王都へ行き王都で暮らさなければならないだろう…そこで提案だ」
「はい、何の相談ですか?」
「父さん達もこの領地を出てお前と暮らそうと思うんだ」
「はい…え?今なんて?」
「よし、ラフィー!準備をしよう!」
「ええ、分かってるわ、あなた」
「アルも準備をしておけよ?迎えは明後日に来ることになってるからな」
「ちょっと待ってください!この領地はどうするんですか?」
「ああ、国王様に返還したから、今頃新しい領主を決めていることだろうな」
そんな適当な…
「まあ、すぐに新しい領主も決まるだろう」
ーーーーーー
「アル!そろそろ迎えの馬車が来る時間だ!荷物を持ってこい!」
「父様達の荷物は?」
「もう、こっちに運んであるわ」
「わかりました、今行きます!」
ーーーーーー
「父様、迎えの馬車ってあれですか?」
「ん!?違う…あれは王家の血筋の者のみ乗ることが許された特別製の馬車だ!」
「つまり?」
「国王様がお見えになったんだ!くれぐれも無礼な事をしないように!」
「わかりました」
あれに乗っているのが現在の国王か…
「息災か?ガレスよ」
「はっ、国王様におかれましても…」
「ああー……今日はただ客人としてここに来ただけだしそう固くならなくて良いぞ?」
「そうか、俺たちもその方が助かる」
「ああ、それでいい」
「で?今日は何の用だ?」
「いやなに、お前たちの娘が勇者に選ばれたと聞いてな、一目見ておきたいと思ってな」
「それだったらどうせ王城で謁見するんだからその時でよくないか?」
「いや、少し話しておきたい話があるんだ」
「アルに?」
「アル?」
「ああ、そういえば自己紹介がまだだったな?アル」
「はい、アルン・フリントローグ、八歳です」
「俺はエルカード・ハイアット二世だ、それにしても、礼儀作法もちゃんと教わっているのか…」
「はい、母様に教わりました」
「しかも、容姿も優れていると…」
「お褒めいただきありがとうございます」
「これは、どこに出しても恥ずかしくないな」
「娘は誰にも渡さんぞ!」
「相変わらず、お前は過保護だな」
「過保護じゃないこの人なんて想像つかないわ」
「ラフィーにまで言われるとさすがに傷つくぞ…」
「そういえば、アルに話があるって言ってたけど、どうしたの?」
「そうだ、ちょっとこの子と二人で話したいことがある」
「じゃあ、席をはずそうかラフィー」
「ええ、仕方ないわね」
ーーーーーー
「さて、話なんだが…単刀直入に聞こう、君には何ができる?」
「何ができるか、ですか…剣術と魔術は一通りできますが」
「なるほど、剣術の流派は?」
「全部、我流です」
「ほう?我流とな?」
「はい、私のスキルに[我流剣術Lv.5]というものがあります」
「それは、凄いな…だが、気を付けろ、自分のスキルは本来誰にも教えないものだ」
「相手が家族であってもですか?」
「そうだ心しておくんだぞ?」
「はい、お気遣いありがとうございます」
「よし、では、支度を済ませて我が王都へ向かおうか」