天界追放、そして転生
誰もが生きている中で一度はやり直したい、と思うだろう。
しかし、やり直しなど不可能だ。
何故、その話をここでするのかって?
かく言う私もやり直しを望んだから……
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まず私は、天使として長いこと天界に降臨していた。
それも、最上位階の五大天使、その一人として、
五大天使はこの世界を形作るうえで必要不可欠な五つの属性を司ることから呼ばれている。
炎天使ミカエル
水天使ラファエル
緑天使ガブリエル
光天使ウリエル
そしてこの私、闇天使アザゼルの五人からなる一つの部隊として下界の治安維持に貢献してきた。
だが、ある日創造神様から下った、魔族討伐の依頼で私以外の四人は死に、私はそれを助けずにのこのこと逃げ帰ってきたとされ天界から追放され、創造神様からの最後の慈悲で転生し、下界で貧乏貴族の長女として暮らすことに…それも天界で学んだ魔術や剣術、記憶などを持ったままで……
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「生まれました!女の子です!」
「本当か!?私に見せてくれ!」
うわー、生まれて最初に見る顔が誰かにそっくり……誰だっけな?
「ああ、ラフィー……ありがとう、我が妻よ……」
ラフィー!?ってまさか…!
「良いのよ、ガル……この子が私達の子なのね…とっても可愛らしいわ」
やっぱりか…
「名前はどうしようか?」
「そういえば、決めてなかったものね」
「よし、決めた…この子の名はアルンだ」
「あなた、その名前…」
そのあだ名…あ、やば…急に眠気が……
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それから、約8年後…
「アル!夕食にしよう」
「はい父様」
「アル、今日はあなたの大好きなシチューを作ったのよ?沢山食べてね」
「やった!ありがとうございます!母様!」
「うふふ、良いのよ、ほら、お祈りを済ませて食べましょう?」
「はい!」
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いやー……母様が料理上手でよかった…ってそうじゃなく、この8年間あっという間だったな…
明日はとうとう、洗礼の日、この身体が何に向いてるかを確かめることができる日…
「天界では剣術も魔術も私に勝てるやつはいなかった…でもすべての技能がこの身体に引き継がれているとは限らない…それを含めて明日確認しなければ…」
明日に備えてそろそろ寝るか…
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馬車で教会に向かうのか…
「いいか、アル…今日はお前も知っている通り洗礼の日だちゃんと受けるんだぞ?」
「はい、もちろんです!」
「お、良い気合いだ!その調子だぞ」
「アル、あなた、もう着くから静かにね?」
そんな普通のやり取りをしながら教会へ向かうのだった。