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最弱職の魔法戦士  作者: 悠久ヒロ
第一章
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旅立つために好奇心で馬車に乗る

「ユウ!お誕生日おめでとう!」

 リアスとアルクが拍手をしながら言った。


 今日は俺の15歳の誕生日だ。


 この世界の15歳は成人を意味する。だから、いつもより盛大なパーティーを開いてくれた。


 目の前には豪華な料理が沢山並んでいる。どれもリアスが腕によりをかけて作ってくれたものだ。


「明日は、お前が旅立つ日かあ……」

 アルクが俺の頭を撫でながら寂しそうに呟いた。


 そう、アルクの言う通り明日は俺が魔術学園に通うために王都に行く日だ。


 だからリアス達と食事をするのは今日が最後になる。


 ……と、言っても俺が王都から帰ってきたらまた一緒に食べられるからそこまで気にする必要は無いんだけどな。


「料理が冷めちゃうわ!早く食べましょ!」

 そう言ってリアスは俺たちを席に座らせた。

「さあ!召し上がれ!」

「「いただきます!」」

 俺はリアスの料理を存分に楽しんだ。


 どれもめちゃくちゃ美味い。


 前世ではコンビニ弁当ばかりだったから、こうして家族でテーブルを取り囲んで食事を摂るのが今日で当分出来なくなると思うと少し寂しい気もする。


 俺がリアスの料理を堪能していると、キッチンからリアスがホットケーキを運んできた。

「はい!これユウの分のホットケーキ!」

 リアスは笑顔で俺の前にホットケーキを差し出してくれた。


「有難う母さん!」

 そう言った後、俺はホットケーキを頬張った。


甘うまぁ……

「お前……この後ケーキ食うっていうのによくホットケーキ食えるな」

 アルクはホットケーキと俺を交互に見ていた。


 俺は自分で言うのもあれだが、大の甘党なのだ。それに、ホットケーキとケーキは別腹だ。いくらでも食える。


「美味しいよ。父さんも食べる?」

 俺がホットケーキを差し出すと、押し返された。


 美味いのに。


 俺は料理を食べ終わった後、自室に戻って明日の準備をすることにした。


「ふう……こんなもんかな」

 明日に備えて荷物を詰め終わったあと、俺はある計画を実施することにした。


 それは、ラト教団という組織が存在するのだがその教団が持っている神級の魔術書を手に入れる為にラト教団を潰すことにした。


 本来、神級の魔術書はラト教団の持ち物ではなくミハラ王国の持ち物らしい。


 ラト教団はラトという神を崇める教団で、そのラトを復活させるために神級の魔術書を盗んだと言われている。


 神級の魔術書は、この世界に5冊しかない。その内の1つをラト教団が持っている。


 俺はこの世界にある神級の魔術書を全て手に入れてそれを全て習得する。


 それが、俺が最強になる為の唯一の道だと思っている。


 それにあたって、学園では力を隠すことにする。


 裏の世界の住人に関わるんだ。正体は知られていない方が自由に動き回れるし都合がいい。


 それに人には魔力の波長と言うものがあるらしく、その波長をズラす為に学園では平凡な魔法剣士を演じる。そうすれば、波長で誰が俺なのか分からなくなる。


 それに、教団と戦う時に正体を隠しても、学園で力を隠さず目立って結び付けられて正体がバレても困るしな。


 だから、明日は全力で平凡な魔法剣士にならなくてはならない。力を抑えすぎて不合格になっても困るし、難しい所だ。


 そうだ、後でノアと会う約束してるし、別れついでに相談してみよう。





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




「なるほどね」

 ノアは納得しながら頷いた。


「それで、どれくらいが平均の魔術なのか教えて欲しいんだ」

 俺が頼むとノアは快く頷いてくれた。


「分かった!いいよ。弟子のためさ!」

 誇らしげにノアは胸を叩いた。


 ……いつから俺はノアの弟子になったのだろうか。


 まあいいや

「よろしく。師匠」


「いや今、まあいいや。って軽く受け流したね?!……ま、まあ別に悪い気は……しないけどさ!」

 ……俺はあることを思いそうになったが心の声がだだ漏れなので何も考えないことにした。


 ノアのおかげでいつでも無心になることが出来るようになってしまった。


 こんなものノアと話す時以外いつ使うのだろうか……


「とりあえず見ててくれ……これが平均的な魔術の威力だ。焔槍(フレイムスピア)


 そう言うとノアは的に向かって魔術を撃った。


 ……え?

「これが、平均的な魔術の威力 なのか……?」

 俺が疑問に思えるほど、的に向かっていく魔術の速度は遅く威力もめちゃくちゃ弱かった。


「言っただろう。君は異常なんだ。これが普通なのさ」

 なるほどな……


「とりあえずこれぐらいの威力の魔術を撃てばいいんだな?」

 俺が聞くとノアは頷いた。


 確認のために俺も試しに撃ってみた。

「あぁっ!だめ。強すぎるよ。もっと弱く……!」

 え、ええ……?これでも強いのか……


 俺はもう一度、力を最大限に抑えて魔術を撃ってみた。

「うん!それぐらいだね!」

 ノアにグッチョブサインを貰えた。


 ふーむ。力を抑えるのは難しいな……

「まあ、1時間ぐらいやって行くといいよ」


「そうだな」

 ノアの言う通り俺は1時間練習することにした。


 その時、何度もノアにダメサインを食らってしまったが


「――そろそろ1時間だな」

 俺は大量に破壊された的の前で呟いた。


 破壊したのは俺だけどな……


「そうだね」

 ノアは目を伏せながら続けた。

「……今までお疲れ様。そして有難う。君と一緒に居たお陰で毎日が楽しかったよ」

 そう言うとノアは俺に手を差し出した。


「ああ。こちらこそ有難う。凄く勉強になったし楽しかったよ」

 俺はノアと握手をした。


 ノアは優しい目をしながら俺の手を握り返した。

「……君は強い。全属性を聖級まで覚えて火属性は更に上の王級まで覚えることが出来たからね」

 全部ノアのお陰だけどな。


「まさか、ノアの元で王級まで学べるとは思ってなかったよ。流石学園の教師様だな」

 ノアはクスッと笑った。


 お前が自分で言ってた事だぞ……

「ごめんごめん。最初は僕のことあまり好いてない感じだったのに、今じゃ僕とノリノリになってるから……」


 ノリノリィ????

「まるで俺がノアと同じ脳天気なやつみたいじゃないか」

 俺は掴んでいたノアの手を離した。


「……っえ!!違うのかい?!」

 違うわあ!!!!!


 ったく……


 ノアと居ると調子が狂うなあ。


「いやあ……今夜で君とは当分お別れだね。」

 ノアは遠くを見つめながら寂しそうに言った。


「まあ、どっかでまた会えるだろ。そんな感じするしな」


「そう言ってくれるなんて嬉しいよ」


 俺達は目を合わせて最後に挨拶をした。

「……じゃあ またな。ノア」


「うん。またね」


 俺はノアに別れを告げ自宅に戻った後、寝ることにした。





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




「……ユウ。行ってらっしゃい」

 リアスは玄関前で目に涙を溜めながら言った。


「俺らの子どもさ。絶対大丈夫だ」

 アルクはリアスの肩に手を置いてリアスを慰めた。


「……そうね」

 リアスはそう言って涙を拭いたあと俺の手を掴んだ。

「私達はずっとユウの味方だからね。何かあったらいつでも帰ってくるのよ」


「うん。有難う。母さん」


「いってきます!」


 こうして俺は、生まれ育った地を旅立つこととなった。




■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




 俺は生まれて初めての馬車に乗り込んだ。


 森を突き抜けた方が明らか速いのだが、馬車というものがどういうものなのか気になって乗ることにした。


 後ろを振り返ると、俺の育った街が遠のいていく。


 俺はもっと強くならなければならない。俺の守りたいものを守るために。



「坊ちゃん、魔術学園に通うのかい?」

 俺は馬車を動かしてる髭の生やしたおっちゃんに話しかけられた。


「そうなんですよ。とても緊張して昨日はあまり眠れませんでした」

 俺は笑顔で返した。


 昔はあまり笑うのが得意ではなかったがこの体になってから笑いやすくなった。


 それだけ周りに恵まれている。というのもあるがな。


「魔術学園のテストは大変らしいから、寝不足なら寝ておいた方がいいと思うぞ」


 ……ふむ。馬車に揺られながら寝るというのも有りだな。

「ですね……お言葉に甘えてそうしておきます」


 俺はそういった後、瞼を閉じた。




 俺は罵声を浴びながら目を開けた

「おい!!こらクソガキ起きろよ!!金目のものを置いていけ!!」

 目の前には刃物を持った盗賊のような男がいる。


 刃物には微かに血がついていた。


 奥の方を見ると、腕を抱えながら3人の男に囲まれている髭の生えたおっちゃんが居た。


 ……おっちゃん腕を切られたのか。


「おいガキ。寝ぼけてんじゃねえよ。この状況が理解できないのか?あ?さっさと、金目のものを全て置いてけ!!」

 男はそういった後刃物を喉元に突きつけた。


「……危ないじゃないか」

 俺はそう呟いた後、肘で男を峰打ちした。


 男は音を立てて地面に倒れた。


「……折角気持ちよく寝てたところだったのに」


 俺はそう呟きながら残り3人をどう相手するか考えた。


 あまり人前で力を晒したくない……そうだ。あれを使おう。


 思い立った俺は馬車に座りながら瞼を閉じた。

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