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最弱職の魔法戦士  作者: 悠久ヒロ
第一章
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ノアとの出会い

「……ふぅ。こんなもんかな」

 俺は最近覚えた土魔術で作った人形を眺めながら呟いた。


 作っていたのは俺自身だ。


 ……いやまて。勘違いしないでくれ。これを作ったのには、ちゃんとしたわけがあるんだ。


 それは夜、家を抜け出すためだ。


 布団に毛布を詰め込んだだけだと、いずれバレてしまうかもしれない。


 だから、土魔術を用いて俺をつくり布団に忍び込ませれば良いと考えたんだ。


 リアスの話によると、夜の魔物は朝や昼と比べると格段に強くなっているらしい。

 

 それなら、夜行かなくちゃな!


 今は夕方の16時。この土人形の髪を白くして、服を着させて布団に忍び込ませておこう。それ以外は、押し入れの中に突っ込んで置くか。


「……ふふふ。夜が楽しみだな」


 この時、俺は知りもしなかった。


 扉の隙間からアルクに見られていて「こいつ……何があったんだ」という引いた目で見られていたことを。


 幸いなことに俺自身しか見られていないため、土人形の存在には気づいていない。



(……夕飯前に一緒に稽古でもしようと思ったんだが)

 アルクはそっと扉を閉めた。




■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




「じゃあ、もう寝るね〜」

 夕飯を食べ終えた俺はリアス達にそう伝えた。


「あら。はやいわね」

 と、リアスに不思議そうに見つめられた。因みに今は20時で、リアスの言う通り寝るにはまだ早い時間だ。


「今日、森で土魔術を試してたら魔力を使いすぎちゃって眠いんだ」

「そうなのね。ならゆっくりお休みなさい」

 リアスにそう促され、俺は自室に戻った。


 リアス……ごめん。


 俺は準備を整え窓から抜け出し、夜の街を誰にも見つからないように駆け抜け、街の外まで来た。


「フライ」

 そう唱えると足が地面から離れ、俺は空を飛んだ。


 これは、風魔術を少し工夫したものだ。


 上級までなら全ての属性の魔術を使えるようになったので様々な魔術を組み合せ、オリジナルの魔術を使えるようになったのだ。


 他にもあるから、夜の魔物相手に試してみよう。




■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




「ここまで来ればぶっ放せるだろう」

 俺は比較的、木が少なく街から遠い場所まで来た。


 今からオリジナルの火魔術を使う。


 本来なら、森の中で火魔術を使うべきじゃないんだろうが…場所がここしかないからやむを得ない。


 もし、木に火が燃え移ったら水魔術で消火だ。


「――おっ! あそこにラガーウルフが!」

 少し先の所に魔物がいた。好都合だ。


 やはり、夜だからか昼と比べると夜の方が魔物の魔力が高く、強そうだ。


「ディスペア・フレイム・ランス」

 そう叫ぶと、俺の背後に複数の魔術陣が現れ、そこから焔槍(フレイムスピア)と同じような槍が出てきて、ラガーウルフに向かって行った。


 ラガーウルフは逃げる間もなく、火の槍に串刺しになり消滅した。


「よし、良い感じだな。次は複数の敵に当ててみるか」

 結果は上々だった。1本ずつ敵に当てることができ、一瞬で周囲の敵を倒せてしまうからだ。


 でも、発動までが少し遅い。改良の余地がありそうだ。




 他にもオリジナル魔術はある。

「バースト・クラッシャー」

 対象の足元に魔術陣を出現させ、爆発させる。罠としての応用もできる。威力もまあまあ良い感じだ。


「クラッシュ・バブル」

 指で弧を大きく描くと、シャボン玉のような見た目のものをいくつか出すことが出来る。

 触れると爆発し威力は先程のと比べれば弱いが、全然使える。自分で考えたとはいえ、結構エグイな。


 だって「ん? 何だこれは?」って不思議に思っている内に体のどこかに触れた瞬間爆発するとか、初見殺しにも程があるだろう。


 次は、元々存在する緋炎焔波(フレイムバースト)を少し改良したものだ。


「ブレイズ・レイ」

 指から火のレーザーを出す魔術だ。緋炎焔波(フレイムバースト)とは太さが違う。大根と、ごぼうぐらいだ。


 だがブレイズ・レイは、緋炎焔波(フレイムバースト)と使う魔力量は同じだ。つまり、ブレイズ・レイの方は力が圧縮されているため広範囲ではないが、何もかも貫くことが出来る上に、発動速度がどの魔術よりも速い。


 心臓を狙えば確実に魔物を狩れるな。


 ……今の所はこんなものか。


 今度、他の属性の魔術も色々考えてみよう。

ところで――


「そこに隠れている奴。気付いてるぞ」

 俺は背後にいる奴に声をかけた。


 気配を消しているようだが、わかり易すぎる。


「……いやー 流石にバレているとは思わなかったよ」


 枝を踏む音と共に後ろから男の声がした。


 青い瞳で黒髪を後ろに結び、黒いロングコートを着ている好青年に思えた。


「……おおっ! 好青年に見えるって言ってくれるなんて嬉しいよ」


「……っ?!」


 ……今 俺……声に出していたか?


 ……まさか、相手の心の声が聞こえるとか…

「その通りさ」


 …まじか。


「……それで、俺に何のようなんだ?」

 俺は咳払いをして男に聞いた。


 男は少し悩んだような素振りを見せた。

「……んー。これと言って用はないんだ」

 あっけらかんとした様子で言った。


 ……は?


 用がないのに気配を消してまで俺の背後に居たのか?


「……いや 違うな。話相手が欲しかったんだ」


 ……余計分からん。


 「お前は一体何者なんだ……?」


 男はハッとした様子で胸に手を置いたあと綺麗にお辞儀をした。

「これは失礼。僕の名前は、ノア・D(ディファレント)・アグリ。しがない魔術学園の教師さ。僕のことはノアと呼んでくれ」


 ……教師だったのか。


 確かに言われてみればそんな感じもするな。


「いや〜照れるなぁ。そんなに教師っぽいかい?」


 いや……褒めた訳では無いんだが。


 ノアは照れくさそうに頭をかいていた。


 ……何だか警戒するのが馬鹿らしくなってくる程にふわふわとした奴だった。


 でも、どうして俺の心の声が分かるんだ…?


 俺が心の中で問いかけると、ノアは素直に答えてくれた。

「それはこの魔眼のおかげさ」

 ノアが右目を指さしていた。


 確かに右目にだけ魔力が込められている。


「魔眼っていうのは極少数の魔物が持っている眼で、世界で数少ない代物なんだ。魔眼は1度装着したら、使用者が死ぬまで外れない」


 なるほどな。


 魔眼についても今度調べてみるか。機会があれば手に入れたいしな。


 ノアが突然思い出したように手を叩いた。

「あっ……そういえば、さっき君が使っていた火魔術って君のオリジナルかい?」


「あぁ。そうだ」


 俺はノアの言葉に頷いた。隠す必要も無いだろうし、隠してもバレそうだったからな。


「なーるほどね……。オリジナル魔術を作ってる人なんて初めて見たよ」

 ノアは笑顔の裏でじっくりと俺を観察していた。


 ……そんなに凄いものなのか?


 俺が首を傾げると、ノアは身を乗り出すように言った。

「凄いも何も、魔術を改良して新しい魔術を生み出すなんて並大抵の人にはできないことさ! よほど精密さがないと難しいだろうね。――君、強くなるよ」


 強くなれる。か……そうか 良かった。


 俺が安堵しているとノアは真面目な顔をして言った。

「……君が昔叶えられなかったことも叶えることが出来るよ。――葛西悠宇くん」


「っ?!」


 ノアは驚いた俺を見て悲しそうに目を伏せた。

「すまない。君のことを少し見させてもらった」


「……だから何なんだ?」

 俺は声のトーンがあからさまに下がっているのに気付きながらも苛立ちを隠さずにはいられなかった。


「毎夜ここに来るといい。僕が君に強くなるコツを教えてあげるよ」


「そんなことをしてお前にメリットがあるのか?」


 俺は、明らかにノアにとってメリットがない話に怪しさをかんじた。


「最初に言っただろう? 話し相手が欲しい。って」


 ……そう言えば言っていたな。


「僕の知識や経験を君に分け与えるよ。その代わりに僕の話し相手になって欲しい。それならお互いの利害が一致するだろう?」


 悪い話じゃないな。


 俺が心の中でそう言うと、ノアは胸を撫で下ろした。


「でも、どうしてそんなに話し相手が欲しいんだ? 教師なら、生徒達とコミュニケーションをとることだって出来るだろ?」


 ノアは俺の言葉を聞いた途端、ため息をついた。


 学園の教師としてはあまり上手くいっていないのだろうか?


「……学園の子達は悪い子じゃないんだけれど……少し怖いんだ。心の声が無条件で聞こえてしまうからね」


 …なるほどなぁ…でも、どうして俺なら良いんだ?


「君の周りの空気が好きだからだ。君となら仲良くなれると思ったのさ。」


 ノアは優しい顔をしていた。


 俺の周りの空気?


 以前、優香にも言われた言葉だった。「悠宇くんの周りの空気が好き」と。



「……分かった。明日の夜もここに来るよ」

 俺がそういうとノアは顔を明るくさせた。

「本当かい?! いやあ…君は優しいね…」


 俺はノアの言葉に首を横に振った。

「俺は優しくないよ」


 きっとこの時、俺は馬鹿みたいな顔をしていたんだと思う。ノアが切なそうな表情をしていたからだ。


「そうだ! 君は何時までここに居られるんだい?」

 俺はノアにそう尋ねられ、空を見上げた。まだ0時を回ったばかりだな。


「あと二、三時間は居るつもりだ」

「本当かい?!」

 ノアは嬉しそうにしていた。余程1人で寂しかったのだろう。


「……申し訳ないんだが、1つお願いを聞いてもらえないかな?」

 ノアに尋ねられた俺は「出来ることなら」と、受け入れた。


「僕に向かって魔術を撃ってみてくれないか?」

 ノアは笑顔で俺に提案した。

薄々気付いている方もいらっしゃるかと思いますが、ユウのオリジナル魔術の技名は全てカタガナで、元々存在する魔術の技名は漢字をカタガナ読みをした形となっております。

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