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最弱職の魔法戦士  作者: 悠久ヒロ
第一章
3/25

超超超、魔術を学ぶ

 俺はまず、今の内に魔術や剣術に手を出して行こうと思う。


 確か、幼い内に覚えた方が身に付きやすく伸びやすい。ってのを、聞いたことがある。


「……ところで今、何時だろう?」

 俺がおもむろに枕のそばに置いてあった時計に手を伸ばすと、記されていた時刻は


「16時32分……ん? ……えっ」

 俺はこんな時間まで寝てたのかっ?!

 

 まさかの時刻に俺は一瞬困惑した。人間誰しも予想外のことが起こると固まるものだ。


 俺は今日やりたいことを考えながら急いで外着に着替えた。


「昼前だと思ってたんだけどなぁ……」

 今まで寝ていた自分に少し後悔しながらも、着替えを済ませ部屋をでて顔を洗いに行った。


 洗面台に着くと、鏡に映る人が一瞬俺だとわからず驚いてしまった。

「……意外とイケメンなんだな」


 俺の価値観での話だが、元の顔よりは結構イケてると思う。


 髪の毛が白髪で、二重で鼻が高く輪郭も細く、全体的にレベルが高いのが見て取れる。髪の毛が白く、揉み上げが片方長いのと目が赤いのは少し気になるが…髪はこのままでいいか。


「……まあ、この世界ではどうなのかは知らんが、顔のことについて何か言われた覚えはないな。」

 鏡の自分と睨めっこし数秒経ったあと、やっと顔を洗い始めた。


 水が程よい冷たさで気持ちいい。


 顔を洗い終わりタオルで拭いたあと、俺は書物庫へ行った。勿論、この世界の父…アルクに許可を貰った。


 扉を開けると本の匂いが漂ってくる。


 こんな大量の本に囲まれるのは何年ぶりだろう。


「さてと、まずは初級魔術からにするか」

 俺は「初級魔術の書」と書かれている本を取り出した。


「うおっ……重いな」

 この一冊に全ての内容が入ってるから本来ならば少ないはずだが、この体にとっては物凄く重い。


 大きさは、ハリー・○ッターの本ぐらいだ。一番分厚く、大きいヤツな。


 この説明を聞いて分からないやつ。安心してくれ。俺も何言ってるか分からない。



 俺は床に座り込み、本を置きページをペラペラとめくった。

「――火、水、土、風、闇、光、無の七属性か」

 物語やゲームでは基本中の基本である属性が含まれてるな。


 因みに無属性っていうのは、身体強化や敵の弱体化など補助系統を主とする属性らしい。無属性魔術のことを補助魔術という人も居るな。

 

 どうせなら全種類極めたいところだが……いけるかな?

「剣術も極めたいし……まずは補助魔術と闇 うーん」

 闇の魔法か。結構カッコいいけどこの世界では召喚系統でしか使われないからな…。


 うーん……ここは慎重に決めないと…後で困るのは俺だからな。


 悩んでいると後ろから扉の開く音がした。振り返ると、そこにはこの世界での母親……リアスがいた。


「お母さん!」

「ユウ……もう大丈夫なの?」

 リアスは心配そうに俺を見つめている。


「うん! もう大丈夫だよ! うじうじ悩んでても、仕方ないって気付いたから!」

 俺がいつものように笑顔でそう言うとリアスは安心したように微笑んだ。そして俺の方へ歩み寄ってきた。


「何の本読んでるの?」

 リアスの長くさらさらな髪を耳にかけながら、俺の見ていた本を覗き込んだ。


「魔術の本?」

「魔法戦士だから今の内に両方極めたいんだ。だから、まずは魔術にしようと思ったんだけど、無属性魔法と後はどれがいいかなぁ……?」

 首を傾げながら、俺はリアスに初級魔術の本を見せた。


「うーん……そうねぇ」

 リアスは少しの間悩んだ後、手を叩いた。


「そうだ! 火系統の魔法はどう? 爆発系とか放出系とかあるし、剣術に合わせやすいからいいと思うわ!」

 火系統か。確かに剣術と合わせやすいな。剣から魔法も出しやすいしな。……流石リアス 元王国大魔導師なだけはあるな。


 リアスは元々王国に仕えていて、魔術に優れている上に膨大な魔力量の大魔導師だ。その分、魔術は初級、中級、上級、超級、聖級、王級、神級ある内の、超級まで全ての属性の魔術を使える。


 そんなリアスからの助言だ。有難く受け取っておこう。

「確かに火系統の魔術いいね! まずはそれから覚えることにするよ! 有難うお母さん!」

 リアスは優しく微笑んで「いいえ! 頑張ってね!」と言った。


「あ、後! 分からないことがあったらお母さんに聞くこと! あやふやなまま魔術使うのは危ないからね!」

 人差し指を立てながらリアスは言った。


「はーい!」

 俺は満面の笑みで手を挙げながら応えた。

 俺を見たリアスはうんうん。と頷いた後、何かを思い出したかのように手を叩いた。


「お母さんこれから用事があるから出かけるね。あと、まだ魔術は初級以外使っちゃダメよ! 中級以上は危険だからお母さんが見てる前でやること!」


 リアスは「絶対ね!」と言って、俺が頷いたのを確認すると部屋を出ていった。


 ……中級魔術か。今の俺の魔力量だったら2回しか撃てないな。しかも、そこまで威力が高くない魔術。


「まぁ……まだやりたいとは思わないな」

 2ヶ月半ぐらい経ったらやろうかな。

 早くにやって魔力切れ起こして2日も動けないのは辛いからな…。


 魔力というのは、この世界で魔術を使うために必要なエネルギーだ。


 ゲームでよく言う、スキルを使うために消費するMP(マナポイント)SP(スキルポイント)みたいなものだ。


 人も勿論魔力を生まれながらにして持っている。


 だが、その魔力も永遠に使い続けることは出来ない。いずれ尽きてしまう。


 使い尽きてしまうと【魔力欠如(マナブレイク)】状態になってしまい、2日は動けなくなる。だから魔術も無闇に何度も撃つことは出来ない。




「よし、まずは火を2ヶ月半極めるぞ!」

 俺はそう叫んで本をペラペラめくった。そして火の魔術の基本を頭に叩き込んだ。


 この時の俺は、世界の常識をまだ知らなかった。


 本来ならば、この歳で初級魔術を理解し、マスターするには半年以上かかってしまう。


 1ヶ月で火の初級魔術をマスターしてしまい、中級魔術にまで手を出すことが出来てしまった俺はおかしい。

 



■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪





 暖かい日差しが庭中を照らす。風が吹くと木々がさわさわと音を立てる。


 俺は短い髪が風に煽られながら深呼吸をした。手を前にかざし目を瞑りながら火の玉を連想させた。


 そして俺は叫んだ。

炎の玉(ファイヤーボール)!!」

 手から火の玉が飛び出した。


 そのまま秒速10mのスピードで10m先にある木の的に命中し、木の的は消し炭となった。


 その様子を、庭に備え付けてあるベンチに座りながらリアスは呆然とした様子で見ていた。


「……ユウ いつの間に無詠唱を……しかもこの威力」

 リアスは何か凄いものを見たような顔をしていた。


 無詠唱……。そんなにおかしかったか?

 

 本来ならば魔術を発動するためには、長い詠唱というものが必要だ。ファイヤーボールなら「この手に集りし火の結晶よ 目前の敵を打ち砕け いでよ炎の玉(ファイヤーボール)」だ。

そんなの、今から「炎の玉(ファイヤーボール)使いまーす」って言ってるようなものだろ…。


「お母さん。詠唱する人が多いの?」

 少し不思議に思った俺はリアスに尋ねた。


「え、ええ。私は無詠唱だけど、詠唱をする人は8割ぐらいね」

 8割?!割と多いな。


 皆、詠唱してるのか…あんな痛々しい呪文を唱えて……


 それに、戦闘時とか模擬戦とかやるなら無詠唱の方が楽なんじゃ?誰しも無詠唱を覚えたがるはずだ……。それでも詠唱の使い手が多いのは――


「……無詠唱を使えるようになる為には何か条件が必要だった?」

 俺のポロッと出た一言にリアスは真剣な顔をして頷いた。


「……これはお母さんの推測なんだけどね。無詠唱を使えるようになるには、幼い頃からの訓練、使い手の想像力、知識が必要だと思うのよ」

 なるほど。確かに俺は全て備わっているな……。


 幼い頃からの訓練…書物庫にあった大量の魔術知識の本…そして前世での経験(前世での17年間の記憶があるから普通の5歳児とは物事の考え方や捉え方、頭の回転速度も違う。)


「でも、今言った条件は普通の人には難しいのよ」

 ……ああ。そういう事か。


「…知識の詰まってる魔術本は、お母さん達が元々お金が沢山合ったから買えたもので、実際普通の人には手を出すことが出来ない程の値段の物だったり、幼い頃からの訓練を行うには使い手のやる気や覚悟が無いと長くは続かない……あとは、その人の能力次第。って事だよね!お母さん」

 俺はリアスの言いたいことを全て言い切った後、リアスの方を向いて無邪気に笑った。


 リアスは自分が言おうと思っていた事を全て言われたために目を見開いて驚いていたが、ニコッと笑って俺の頭を撫でた。

「凄いわね! お母さんの言いたかったこと全部言っちゃったわ!」


「お母さん!」

 俺は、俺の頭を撫で続けてるリアスを呼んだ。


「ん? なあに?」

 リアスは優しい声色で俺に聞き返した。


「そろそろ中級魔術の練習にも取り組みたい です!」

 撫でていたリアスの手がピタッと止まった。


 ……頼んじゃいけないこと言ったか…?

「んー……まだ早すぎる気がするんだけどなぁ…」

 リアスは腕を組み悩んでいた。


「なら、僕が中級魔術を1回撃つからお母さん見ててよ! それで、良かったら練習させてほしいな!」


「そっか! なら撃って……って、ええええええ?!」


 もう中級魔術使えるほどの知識を貴方は持ってるの?!とでも言わんばかりにリアスは驚いた。


 俺は「練習したい」って言ったんだけどなぁ。

「【焔槍(フレイムスピア)】を使うつもりだよ!……良いかな?」

 リアスは動揺しながらも頷いた。


 庭だし威力は抑え目にしとくか…。

 俺は手を振りかざし「焔槍(フレイムスピア)!!」と叫んだ。


 すると瞬く間に炎の槍が生成され、その槍は秒速100m程の速さで同じく10m先の的に突き刺さり、消し炭となった。

「こんな感じだよ! どうかな? 取り組んでも良い?」


 リアスは「え、ええ……」と現実を受け止めきれないような様子で答えた。


 その後理解したように頷き、俺の方を見た。


「凄いわね。流石に私でも2ヶ月で中級魔術まで使うのは無理だわ しかも、その年齢で……」

 そもそも精神年齢が違うから、リアスの昔と比べても無駄なんだけどなあ……


「……なんなら、超級魔術までやってみる?……なんて」

「うん!! やる!!」

 リアスの冗談交じりの一言に対し大いに賛成した。


 実際初級魔術の分を完璧にし、中級魔術に手を付けて、後4分の1も残ってないレベルだったからな…。


 超級まで覚えたら補助魔術を覚えよう。

 それで、魔術を覚えながら剣術も取り組む…。魔術を覚えるスピードは落ちるけど、取り敢えずちゃんと使いこなせれば良いとしよう。


「……ま、まあいっか。ユウなら魔術をどれぐらい使っていいか。とか分かるものね!」

 無理な条件も呑んでもらえるってことは信頼してもらえてるっていう証拠なんだな。


 そう考えていたらリアスが手を叩いた。

「そうだ! 上級からはお母さんが魔術を教えるわ! そっちの方がユウも分かりやすいし、安全面にも気を使えるからね!」

「うん!」


 こ、子ども一人で魔術は危険だからな。うん。覚えることを承諾してもらっただけ有難く思っておこう。


 

 こうして俺は半年の間に火属性魔法を超級までマスターしてしまった。



「やったね!!! ユウ!!!」

 リアスが俺に飛びついてきた。


 半年で超級までマスターしてしまえるとは思わなかった。


 でも、まだ俺にはやることが残っている。


「お母さん……早速なんだけど――」

「無属性魔術と剣術やりたいの?」

 リアスは少し離れて真面目な顔で俺を見つめている。


 まさか俺の言いたいことが分かってしまうとは…。

「だ、だめ……かな?」

 流石に駄目。とは言われないだろうが…。


「ううん。そうじゃないの」

 リアスは首を振って続けた。


「魔術って言うのはね、覚えたての頃は完璧に覚えたと思っても忘れちゃうものなのよ。だから、週二回火属性魔術を極める特訓をする。って言うなら良いわよ!」

「うん!!! やる!!!」

 俺は笑顔で大きく頷いた。


 俺が今までの努力を無駄にしないように条件を付けてくれるなんて有難い。俺のことをちゃんと考えてくれてるんだな。


「剣術は……お父さんに頼まなくっちゃね! ちょっと待ってて!」

 そういうとリアスはこの世界での俺の父であるアルクを連れて来た。


 アルクは元王国騎士団長で、めちゃくちゃ強い。


 剣術にも魔術と同じように初級から神級まであるのだがアルクはリアスを超え、聖級剣術を使える。


「お、なんだなんだ? もう剣術始めるのか?」


 アルクはそう言ってリアスと一緒に現れ、俺の頭をガシガシと撫でた。


「いやー。お前の成長は超速いなー! なんだ。もう超級まで身につけたのか? まさに超超人だなあ!」

 超超煩いが褒められてるので気にしないことにしよう。


「お父さん! 剣術教えて!」

 俺は満面の笑顔でアルクに言うと、アルクは指を立ててこういった。

「よーし! 分かった! 母さんの言うことをちゃんと聞いて…あ、俺の話も聞くんだぞ! その他もろもろの 約束事守れるなら剣術を教えてやろう!」


 ……端折ったな。

「うん! 勿論!!」


 こうして俺はアルクからの剣術指導とリアスの魔術の教えを両立し続けた。

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