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最弱職の魔法戦士  作者: 悠久ヒロ
第一章
2/25

辛い過去②

 俺は家に帰り包丁を手に持ち黒い上着を着てフードを深くかぶり奴らを探した。


 俺は偶然一人だった奴らの仲間の飯田を見つけた。

「ふ〜んふふ〜ん」

 飯田は呑気に鼻歌を歌っていた。


 俺は背後から近付いたあと足を前に出して転ばせ、殺さない程度に頭にかかと落としを食らわせた。飯田の頭は地面に叩きつけられ鈍い音が耳に走る。


「があッ!! ……っいてええええええ!!!」

 飯田は激痛に悶えながら叫んだ。


「仲間は何処だ。今日優香と一緒にいた男は誰だ」

 俺は飯田の叫びなど気にせず質問した。

「お、お前は……葛西ッ?!」

 飯田は震えながらも体を起こし、立ち上がろうとした。

「なに、すんだよッてめ……!! ひぃっ!!」

 飯田は俺の取り出した包丁を見た途端驚いて更に後ろに下がった。


「や、やめてくれ……!! 殺さないでっ!!」

 飯田は後ろへじりじりと下がり、壁が背中に付いた。俺は怯える飯田の首元に包丁を突きつけた。


「質問に答えろ。今日優香と一緒にいた仲間は誰だ。今何処にいる」

 俺は質問に答えない飯田に苛立ちを感じ、強い口調で問いただした。


「こ、答えれば殺さないでくれるんだな!! ……えっと!! 俺と芝崎と原田だ!! 3人で早乙女と一緒にいたっ!! 芝崎と原田は今駅前のゲーセンに居ると思う!! 話したんだ!! 俺は殺さないでく――」

 俺は飯田の最期の話を最後まで聞くことはなくそいつの首と胴体を切り離した。

 

 俺は一言も「喋ったら殺さない」とは言っていない。


 切り離された頭が地面にベシャッと音を立てて落下した。


「こうしてみると、人間って脆い上に気持ち悪いよな」



 血がべっとりと服や顔に付いていて、このまま奴らのところに向かうのはまずいと思った俺は人気のない公園で血を洗い流し、ゲーセンへと向かった。


そこにはあいつの言う通り、芝崎と原田がいた。

「――おい。あれ葛西じゃね?」


 原田が芝崎にそう耳打ちされ、芝崎はこちらを一瞬見て「そうだな」と言った。


 そしてその後二人は俺の元へ歩み寄ってきた。


「おう。葛西じゃねーか。……ちょっと向こうでお話しようかァ?」

 芝崎達はそう言って俺を人気のない路地裏へと連れていった。

 

 暗く静かな路地裏に響き渡る足音。


 暫く歩くと周囲には足音が響く音しか聞こえない。そしてその足音は止んだ。


「で、お前は愛しの早乙女が暴行されたから仕返しに来たと」

 芝崎が口を開き、隠すこと無く話した。だが、その口調から読み取るに俺を嘲笑っていた。


「くくく……ウケるわ。クールな天才君は、女の子の前だとかっこつけたがるんだねぇ。まあ、俺たちにボコされる覚悟で来たんだろうけ……どッ!!」

 原田が言い終わったと同時に俺の胸元を掴み俺の体を壁に押し当てた。


 そして原田が俺を殴ろうと腕を振りかざした。


 首がとてつもなくがら空きだった為、俺は原田の首を隠していた包丁で斬った。


 そしたらザシュッという、普段は聞くはずのない音が鳴った。

 

 原田の頭は驚いた表情のまま地面に落ち、芝崎の元へ転がっていった。


 芝崎は突然の出来事に何が起こったか分からず呆然と立ち尽くしている。

そして芝崎は恐る恐る目だけを動かし今転がってきた()()を見た。


 原田の頭と目が合うと芝崎は状況を理解したかのようにその場から崩れ落ち、小さな悲鳴を上げた。


「ひ、ひっ……!!」

 俺は原田の体を突き飛ばし、包丁に付いた血を音を立てて振り払うと、血がそこら中に散った。


 そして俺が芝崎を見ると芝崎は恐怖に怯えながら後退りした。

 そして、もたつきながらも芝崎は向こうへ走り出した。


 だが、石に躓き芝崎は盛大に転んだ。


 俺はゆっくりと芝崎へ歩み寄る。


「や、やめてくれ!! 許してくれ!! 俺が悪かった…!! だからッ!!」

 俺は芝崎の腹に包丁を突き刺した。


 そして刺さった包丁を抜くと血飛沫が俺にもかかった。


 芝崎は白目をひん剥いていて瀕死の状態だった。


 俺は止めにまた腹に包丁を突き刺した。そしてまた包丁を抜くと、芝崎は全く動かなくなった。


 俺は包丁を投げ捨て、来ていたコートをゴミ箱の中へ入れ優香のいた廃ビルへ向かった。そして廃ビルの階段を登り、屋上へと通じる扉を開けた。




■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




 扉を開けた瞬間、強い風が吹き抜けた。


 いつの間にか雨は止んでおり雲から月が顔を出していた。


 そこは、遠くにある街並みの灯りが見え、月に近いこともあり満月の月がより一層輝きを増していた。


「何でこうなったんだろうな」

 俺は風に当たりながら悲しげに呟いた。


 優香がここから飛び降りてから既に3時間は経過した。そろそろ人が寝静まる頃だろう。


 先ほどまで雲に覆われていた月は顔を出し、俺を照らすように輝いた。


 まるで「復讐心に囚われ人を殺した罪人はここにいる」とでも言っているようだ。


 結局、俺は生きていても捕まるだろう。


 現場に証拠は死ぬほど残してきてしまったし、俺があいつらに虐められていた。という、確かな動機だってあるしな…。


 クラス全員は思っていただろう。

(こいつ)は、あいつらを殺す」と。

 いや……。優香は思ってなかったかもしれない。


 優香は……優しかったな。こんな俺でも仲良くしてくれた。


 優香や母さんが居たから……居てくれたから、俺は死ぬことなくこの世に留まれたかもしれない。


 今の俺を見たらきっと母さん……泣きながら俺を抱きしめてくれるんだろうな。

「もう、頑張らなくていいよ」って。


 でも、もう無理なんだ。


 母さんが懸命に生きた世界。


 優香が笑っていた世界。


 二人とも



 死んだ。


 懸命に生きても、笑顔で明るく生きても死ぬ理由は良いものでは無かった。


「こんな世界……生きる意味もないよな」


 俺は確かな足取りでビルの端に立った。


「――優香は、ここからどんな思いで飛び降りたんだろう……」

 辛かったんだろうな……俺が……俺が何とかしてやれれば良かったのにっ!!


 俺はフッと自分を笑って何も出来なかった無力な自分を嘲笑った。


 結局俺がいても何もしてやれなかった。


 努力しても報われない。


 物語の最後みたいなハッピーエンドには辿り着かない。


 理不尽に罵倒され、挙句の果てにたった一人の友人まで殺される。


 こんな理不尽な世界…生きている意味はあるのだろうか?


「こんなつまらない世界はもういい」


 そう言って俺は地面から足を離した。
















 




















■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




 俺が目を開けるとそこには見知らぬ天井が映っていた。


 いや 知っている。


 俺はベッドで寝ていた体を起こすと、そこには5年間毎日見続けた風景が映っていた。


 俺の名前はユウ・アルティス。年齢は5歳。


 ――つまり俺は生まれ変わって、たった今前世の記憶を取り戻した…と。


「何だよ それッ……!!」

 俺は体にかけていた布団を拳で叩いた。

 その威力は5歳の少年と同じく、とてつもなく軽いもので更に現実味を増していた。


「っ……!! 頭がっ……」

 前世の記憶の量が多すぎて脳内で処理しきれず頭痛がした。


「――ふぅ……」

 数分経ち痛みが収まり始めた頃、俺は深呼吸をし改めてこの5年間の事を思い出した。


 どちらかと言えば裕福な家庭に生まれ、父、母、俺の三人家族。現在の俺は、明るくて真面目な少年。


 だが、この世界は元の世界とは違う。


 剣と魔法が使える世界だ。


 5歳を迎えると教会で25種類ある内の1つの(ジョブ)を神父から与えられる。その職はその時神父に刻まれる紋章によって、誰がどの(ジョブ)なのか把握することが出来る。


 その職によってその人の人生が決まってしまうのだ。

そして昨日5歳を迎える誕生日だった俺は教会へ行き儀式を行った。でも自分の職が魔法戦士だと判明した。


 魔法戦士とは最弱の(ジョブ)だ。


 例えば魔法使いが【魔100 物0】で剣士が【魔0 物100】だとすると、魔法戦士は【魔50 物50】である。


 50の魔法戦士は100の(ジョブ)には到底勝てない。つまり何にも勝らないという事だ。


 騎士になりたかった俺は、家族に見られないよう自室で泣いていた。


 そして、いつの間にか眠ってしまって現在に至る。と。


 成程……

 

 自分の手の甲を見ると紋章が刻まれていて、確かにそれは魔法戦士の印だった。


 紋章を見ていると、昨日の辛い感情がまた押し寄せてくる。

 

 

「っくそ……」

 俺は歯を食いしばった。


 25分の1だぞ?中々当たらないだろ……


 俺は自ら命を絶ってまで捨てた世界と同じような理不尽な世界に生まれ変わり、前世の記憶を取り戻しまた理不尽な目に合わされているという事に気付かされるのか?


 世界って残酷過ぎるだろ

 


「……もう 分かった」


 そして俺は深く考えた末に、こう決断した。


「俺は、強くなる……大切なものを守るために……そして、最弱の職で最強になってこの理不尽な世界に抗ってやる……っ」


 決して前世での罪を忘れることは出来ないけれど、俺は今度こそ大切なものを守りたい。


「――もう、何も失いたくない」

 

 きっとこれが俺の本心だったのだろう。



 こうして俺は最強への険しい道を歩むことになった。



 

 この物語は、ユウ・アルティスが最強になる為の道を歩んでいく物語である。 

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