2-6.いざ行かん、初クエストへ!
「さっそくですが、クエストを受注したいのです。」
「待ってました!初クエストですね!
このノルーに任せてくださいませ!」
ノルーさんは背筋をピンと伸ばし、胸を叩いて言った。
ノルーさん、眼福です…。
「とは言っても、ナツさんはたった今冒険者になられたばかりの新米中の新米さんです!
なので受けられるクエストは限られると思いますが…。
ひとまず現段階で紹介できるのはこちらですかね!」
そう言って彼女は一枚の紙を差し出した。
その紙には、『ピルラビットの討伐』と書いてある。
「ギルド認定試験を受けていただいた時の森に、ピルラビットという小型の魔物が生息しています!
このピルラビットが時々近くの村に下りてきては、農作物を食い荒らしてしまうのです。
ナツさんには、奴らを駆除しちゃっていただきたいのですっ!」
「なるほど。
ピルラビットは手強いのですか?」
「いえいえ、そんなことはございません!
冒険者なら誰でも簡単に倒せるレベルですよ!
もっともナツさんは無能力者なので、少し、いやかなり心配は心配なんですが…。」
うむ、ノルーさんにはルシフェルのことを話しておいた方がいいかもしれないな。
いちいち無能力なことを心配してもらうのも悪いし…。
というか、ノルーさんは心底心配してくれてるみたいで、本当に良い人だなぁ。
父母の他にもぼくを想ってくれる人がいるなんて、有難い限りだ。
「分かりました、そのクエストを受けさせてください!」
「待ってましたぁ!
初クエスト、頑張ってくださいね!!」
ノルーさんはウインクをしながら手を振ってぼくを見送ってくれた。
ノルーさん、可愛いなぁ…。
(主人さま。)
(だから心を覗くな!)
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「ふんふ〜ん♪ふふふんふ〜ん♪」
メラサールを出て人の目が少なくなってきたため、ルシフェルは影から出てぼくの横を歩いていた。
「やはりシャバの空気は美味いのぅ!」
「随分ご機嫌だね。」
「街じゃずっと主人さまの影の中じゃからのぅ。
こうして外を歩けるってだけで気分はるんるんじゃ!
ふんふ〜ん♪」
メラサールでは余計な騒ぎになるのを避けるため、ルシフェルにはなるべくぼくの影の中にいてもらっていた。
ぱっと見で魔物と分かるような外見ではないのだが、単純に美人だからというのと、10歳のぼくと妖艶な彼女が並んで歩いているという光景が、傍目から見れば奇異に映るのだ。
あと少しで例の森に着く。
初めてのクエスト、初めての魔物討伐。
緊張とワクワクが交差する不思議な心持ちで、ぼくらはあの地へと足を運んでいた。