小話 ねつ造戸籍設定を考えよう
現実はこうも適当に国籍は得られないと思います。あくまでお話、ということでご理解願います。
これは時系列で言えば夏以降の話も混ざるが、俺は別途専門機関での精密な遺伝子調査を受け、「立花司の血縁者である」と医学的に証明された。
これに先立ち、表向きは「立花司の隠し子である」という設定が真実味を帯びることとなった。
合わせて俺の設定を他人に聞かれても答えれるようにあれこれねつ造した。
・父さんが15年程前、紛争地域で活動中、現地の女性と一晩を共にした(これは合意の上。コンドームはつけていた。が、質の良くない物で穴でも開いていたのか、みごとなくらい妊娠した。また、若い頃の父はプレイボーイでしょっちゅう現地の女性を抱いていたと父の同僚の証言もあり、無理のない話となった)
・こうして生まれたのがユーリ。
・ただし懐妊に気が付いたのは父が去った後であり、もともと認知してほしいわけでもなかった女性は一人でユーリを育てることにした
・戸籍に関しては「登録すると税金を取られる」ということでユーリは無国籍のまま育つこととなる
・そんな中、女性が紛争に巻き込まれて死亡。残されたユーリは母親から聞いた「タチバナツカサ」なる人物が父親と聞いていたが、どこの誰かは知らず、手掛かりは古びた写真のみ。
・おまけに母親の死亡と餓死寸前まで飢餓のダブルショックで記憶の殆どを失う(母親との思い出のみ覚えている)。
・その後、再び紛争地域に来た父さんが、偶然ユーリと出会い、娘かもという情報をつかんでしまう。
・娘かどうかはさておき(写真は拾っただけかもしれないし)、とりあえず戦災孤児保護の名目でとりあえずユーリを預かることとなった。
・この時、合わせて難民申請もしている。
・さらに言えば親子鑑定も合わせておこなっている。
・親子鑑定の結果、少なくとも立花司とユーリの間に遺伝的類似が認められ、娘であるとされた。
・なので娘として面倒をみようと日本国籍取得を目指すことになる。
・日本で暮らすにあたり、名前も「立花優莉」と改めることとした。
というものである。
年齢についてはもめた。身体的特徴から肉体年齢は11~13歳であると推測できたが、そうなると俺が戸籍上陽菜の妹になってしまう。
「なんで俺がお前の妹なんだよ!」
「いいじゃん。いいじゃん。それよりユウちゃん、これからは私のことは陽ねえって呼ばないとダメだよ!」
「まあ、肉体年齢に合わせると悠は中学生からやり直しなんでしょ?それはちょっとね」
「本当なら今年度高校卒業のはずなのに、今更中学校に通うのは可哀そうね。15歳にすればほぼ通えなかった高校からやり直しができるからそれでいいじゃない。」
今年15歳となると俺は陽菜と同学年になる……
いや、俺は高校1年の6月に異世界に飛ばされ、高校の勉強はほどんとしていない。となるとなまじ陽菜より1歳でも年上とすると独学で高校一年の勉強を全て行う必要が出る・・・
この辺が妥協の点か。
「年は同じでも、私は4月生まれでユウちゃんは12月生まれだからやっぱり私がお姉ちゃんだよね!だから陽ねえだよ!」
「ふざけんな。お前に姉が出来るもんか!」
「できるよ。簡単だもん!」
「「姉をなめんな!」」
姉は簡単という暴言につい美佳ねえと俺が真顔で怒る。
「陽菜。いいかい?お姉ちゃんってのはとっても大変なんだ。下に二人もいる私が言うんだ。間違いない」
「お前は少しは涼ねえがどんだけすごいかちょっとは考えてみろ。姉っていうのがどんだけ妹や弟を守ってきたと思っている!」
「あら?2人とも私を持ち上げてどうしたの?おだてても何も出ないわよ?」
といいつつ、嬉しそうな声色の涼ねえ。まあ実際実質的な家長として中学生当時からずっと家を支えてきた大大黒柱だからな。実際すごい人物だと思う。陽菜はいっつも利益受領者だから姉がどれだけ妹を守っているか知らないのだろう。
こうして盛り上がる俺達を横目に父さんが寂しそうにつぶやいた。
「父です。家族の大黒柱を長女に取られていました。」
仕方ないって。父さんは1年のうち合計2か月も家にいないじゃん。
2018/7/30 改行位置を修正しました。