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02 家族からの尋問

「さて、あなたを悠司と仮に認めたとして質問があるわ。一昨年の6月から今までいったいどこでなにをしてたの?」

 涼ねえはギラりという擬音が聞こえて来そうなほど鋭い視線を俺に向けながら聞いてきた


 まず、俺が立花悠司であることは仮でも認めてもらったようだ。続いては事情説明か。

「話せば長くなるんだがー」

「だったら手短に3行で!」

 今度は美佳ねえが言ってきた。


 どうしたもんか。あの出来事を3行で言うとするならば……


「1.突如剣と魔法の異世界へ召喚された

 2.2年間頑張って魔王を倒し、異世界を救った

 3.女になったが無事に帰ってこれた」


「ユウちゃん。それじゃわかんない。」

 妹の陽菜が呆れながら言い放った。


「ちょっと待て、陽菜!なんだその『ユウちゃん』って!」

「いや、その姿をいくらなんでも『悠にい』って呼べないって。どうみても私よりちっちゃいじゃん!」


 ぐぬぬ

 2年前、当時13歳だった妹はこの2年間で10cm近く背丈が伸び、170cmを超えるまでに育っていた。反対に俺は2年前でも180cmを超えていた身長が今では150cmもない。


 ちなみにこの場で一番背が高いのは美佳ねえの170cm後半。

 二番目が陽菜の170cm+α、三番目が涼ねえの170cm手前。

 最後が俺の下一桁四捨五入ありで150cm。


 だもんで3人とも俺より20cm以上背が高い。さらに今は俺は(勝手に留守にした反省として)リビングで正座中。周りをぐるりと立ったままの3人に囲まれているのでちょっとした威圧感を感じる。

 客観的に見ても170cm前後の日本人女性が150cm未満の少女を詰問しているのはどうだろうな。


「でもさ、ホント小っちゃいよね。うちは両親姉妹揃って高身長一家なのに悠だけ平均以下だもんね」

「ちょっと前まで俺も平均以上だったわい!」

「あ、そうなると実は成長期前って可能性はない?ほら今のユウちゃんってなんだか童顔だし」

「・・・そうね、その可能性はあるわね。性転換があるんですもの。年齢退行位あっても不思議じゃないわ」

 ヤバい。ヤバい予感しかしない。18年間(うち2年は顔も合わせてないけど)この人の弟をやった勘が警鐘を鳴らしていた。


「悠司。服を脱ぎなさい」

「ちくしょう!さすが涼ねえだ!やっぱりろくなこと言わねえ!」

「脱ぐのは下だけでいいわよ」

「下の方が問題だからな!だいたい、何で脱ぐ必要があるんだよ!」

「身体の成長具合を確かめるためよ。女性器に毛が生え始めるのが一般的には10歳前後、生え揃うのが」

「他にもあるだろ!」

「そうね。例えば歯の成長でも診断できるわ。けど、私は歯の生え具合から年齢は測定できないわよ。」

「俺は脱がないからな」

「ここは私達の家。家族しかいないのよ?恥かしがる必要はないわ。」

「そういう問題じゃない!」


 父親が仕事で1年の8割以上は不在、子供は上から順に長女、次女、長男、三女とくれば必然的に家庭内では圧倒的に女性の方が発言力が高い。

 ついでに俺を男とみていないのか、3人とも家ではいささか女性としての恥じらいにかけているところがある。


「美佳、陽菜」

「あいよ」「は~い」

 美佳ねえがタックル気味に突っ込んできた。

「!!」

 2年間切った張ったの世界(いや本当の意味で切った張っただと1年くらいだが)で生きてきた俺は反射的に美佳ねえを投げ飛ばそうとしてしまい、直後に投げ飛ばせば怪我を負わせてしまうと躊躇したことで

簡単に組み敷かれてしまった。

「ひゅ~焦った。悠はなんだかんだ優しいね」

 美佳ねえはインターハイ、春高に出てスポーツの名門私立大に学費無料で進学するくらい運動神経が優れている。……そういやさっき聞いた話だとU23にも選ばれたんだっけ?

 ともかく、そんなスポーツウーマンな姉は俺が投げ飛ばそうとしてしなかったことを察してくれたのだろう。

「だったらその優しい弟にマウントポジション取ってないではやくどけよ」

「あっ可愛い!子供だ!」

 次女にマウントポジションで上半身を固定させられた隙に三女が容赦なく俺の下半身をはいだようだ。スースーする。


「剃っているわけでもなく、天然ね。性器の成長具合からも小学高学年から中学生程度かしら?」


 追い打ちに名前の通り涼しい声色でそう診断する長女。正直泣きたい。


くぅ~


 だが、俺よりも先に腹の虫が鳴いた。


 この鳴き声が良かったらしい。涼ねえからさっきまでの刺々しい雰囲気が薄れた。

「ふふ。イタズラもいったんここでやめましょう。悠司、あなた埃っぽいわよ。先にお風呂にはいりなさい。その間にご飯を作るわ」

「メニューは?」

「春巻き」

 うおぉ!さすが涼ねえ。俺の好物をわかってる!

 ウキウキしながら立ち上がると左右から美佳ねえと陽菜が抱きついてきた。

「お帰り。悠」

「心配したんだよ」

「悪い。心配かけた」

 母を亡くし、父が不在しがちな我が家では姉弟妹の仲は非常に良い。泣きそうなところを無理やり笑顔に変えた美佳ねえと陽菜の顔を見ると不可抗力とはいえ、おのれの迂闊さを悔やまずにはいられない。


 そんな絆を再確認しつつ風呂に向かう前に着替えを取りに行こうとするところに涼ねえが一言


「悠司。いつから性転換したのかは知らないけど、自分の体なのだから下半身もきちんと洗いなさい。病気になるわよ」


 ……いやまあ、恥かしいから確かにあまりさわってなかったけど、異世界じゃ潔癖症一歩手前のキレイ好きで通ってたのよ?

 こっちの世界の衛生感覚を異世界に持ち込めると思ったら大間違いだ。


2018/7/30 改行位置を修正しました。

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