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雨後の虹

作者: 文丸

最近見た夢を糸に紡いで、物語を織り上げてみました。

あるところに、女神の姉妹が住んでいました。

姉は美しき女神。

妹は優しき女神。

二人はまだ幼くも、両親から独立して助け合いながら暮らしていました。


時が経つにつれ、姉は虹を司る女神となりました。

生来の美しさに加え、虹を司るようになったその美しさはこの世にある言葉では言い表せない程でした。


しかし、虹の女神を見た人々は、表現できない美しさに戸惑い、苦しんでしまいます。

そこで、妹は人々を祝福し、「感動」という概念を与えました。

祝福を受けた人々は吟遊詩人として、素直には言葉にできない事柄を音楽にのせた言葉で表現するようになりました。

妹は歌の女神となったのです。


虹の女神の美しさは世界に広まり、姉妹の両親も知るところとなりました。

父神は大変喜びましたが、母神はいい顔をしませんでした。

なぜなら、母神は嫉妬深い性格をしていたからです。


自分の娘である虹の女神に自分以上に人々の信仰が集まる事を恐れた彼女は、娘に呪いをかけたのです。


呪いを受けた虹の女神を見た人々は、その醜さに頭の中がかき乱されるような不快感に襲われ、次々と倒れてしまいます。

虹の女神も、そのような光景を嘆き、さめざめと涙を流しては雲を手繰り寄せ姿を隠してしまいました。


歌の女神は優しいだけでなく、とても責任感が強い女神でした。

姉に降りかかった呪いは自分に原因があると感じ、三日三晩考えに考え、自分を慕う鳥達の運んでくる世界中の知恵を使い、以前のような姉と明るい世界を取り戻そうとしました。

しかし、嫉妬の呪いは非常に強く、解くことはできませんでした。


そこで、歌の女神は虹の女神にこう告げたのです。


ーー姉さんは美しくあってください。

  私には歌があります、醜くとも構いません。

  呪いは私が代わりに受けますからーー


その瞬間、虹の女神は元の美しさを取り戻しました。

その隣には醜い半鳥半人の怪物が現れました。


ーーさあ、姉さん、その姿で人々を救ってくださいーー


怪物は力強く羽ばたき、雲を吹き散らします。

長雨に濡れた地上に光が戻り、空には虹が輝きます。

人々は喜び、街は活気を取り戻します。


そんな中、姉にはかなわないまでも、優しく愛らしい妹が姿を消している事に気がついた者は、鳥達と一部の吟遊詩人だけでした。


彼らは妹を想って、雨上がりの寂しさを歌うのです。

歌の女神のその後については、別作品となる予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 虹と雲と姉妹の掛け合いがうまく噛み合ってて、半分読んだあたりから、思わず「なるほど…」としみじみ呟いてしまいました。こういう作品はとても好きだと俺のDNAが言っています。
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