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15 やるせなさ

人死注意です。



次の日は、歴史、算学、外国語、神学になりました。ちゃんと第一希望と第二希望が通った形だね。


まあ今日は特に何も起こらず、昼ご飯を早めに食べ終わって、ナニーに手紙を出しに行く事にした。


ハウスル家の王都邸の門番に、袖の下ならぬチップを渡し、手紙を届けて貰う。誰か分からなくて読んで貰えないと困るから伝言として、「デレさせようの会、会員番号ナンバー1」と伝えてくれるように言っておいた。多分ナニーならこれだけで分かるだろう。


手紙には、今は学園にいる事、元気である事、ナニーやお母様の状況が知りたい事を綴った。


さて、返事を待っている間にもう一度、図書室に行けると良いんだけど。



ちょっとギリギリで診療所に出勤し、いつも通り受付と除菌・除去ギフトがけ、水売りをのんびりしていた所に急患がやって来た。…しかもたくさん。


王都に張り巡らされている地下水道の修繕をしていた作業員が落盤事故に巻き込まれたらしい。


五人ほどは明らかに重症で、一人は息をしていない。他の四人も大量に出血していて、意識の無い者もいる。その他負傷者多数。


ひとまず感染症を防ぐため、全員に除菌・除去ギフトをかけて、一番重症な者から…では無く、次に重症な四人から処置をする。


この状況ではより多くの命を救うための決断をしなきゃならない。既に息をしていない、助かる確率の低い者はどうしても優先順位が低くなってしまう。


その場にいた軽症の患者の手も借りて止血していく。普段はエインさんの判断を仰いでからだが、そんな暇は無い。自己判断で治癒魔法をかける。大丈夫。魔力だけは豊富にあるから。あとはその患者が治癒魔法が逆効果になる病気にかかっていないか祈るだけ。


四人は処置を終えたので、エインさんには軽症者と重症者を診て貰って、私は時間が経ってしまってさらに生存の可能性が下がっただろう患者を、何とか助けられ無いか試みる。


私も大人ほどとは言わないまでも、まあまあ体格も良くなったので出来るだろう。心臓マッサージだ。


胸の真ん中に組んだ腕を置く。肘をまっすぐ伸ばして強く、強く押す!何センチかなんて覚えてないし、確認している暇も無い。とにかく速く動かして、ちゃんと沈ませた手を戻す。


1.2.3.4.5.6.7.8…


ヤバい…これキツイ…!誰かに代わって貰いたいけど、教えてすぐに出来るかな?


チラチラ周りを見ながら考えていると、まるで初めて会ったあの時のようにエインさんが代わってくれた。


「代わるぞ!」


「はいっ!」


はぁ…はぁ…息を整えて、今度は私がエインさんの診ていた患者さんの手当を続ける。


チラッと横目で見たら、エインさんは概念自体が初めてなのにちゃんと心臓マッサージ出来てる。凄いなぁ…


っと、見てる場合じゃない。止血、それから骨折してそうな人には添え木と。


重軽傷者が一段落して、エインさんとまた代わる。エインさんはその間に教えた人工呼吸をしてくれた。


なんとか弱々しくも息を吹き返した患者はしかし、家族が駆け付けてほんの数分で亡くなってしまった。出血が多過ぎたのが原因だと思う。この世界にはまだ輸血の技術は無い、それどころか注射器も開発されてはいないのだ。


さらに意識の無かった重体の患者もまた、数刻後には亡くなってしまった。この患者は家族が居なかったようなので、一人寂しく逝ってしまった遺体の体勢、衣服を整えて、地下水道の工事の元締めであるギャングの人達に引き取って貰う。


最初に亡くなった患者への説明を終え、遺体と共に帰って行く遺族の後ろ姿を見送って、重軽傷者のとりあえずの手当てを落ち着いてやり直す。


入院となった患者も何人かいて、元々診療に来ていた患者も通常通り診察していたら、あっという間に寮の門限の時間を越えてしまっていた。


ギャングの護衛に送られながらトボトボと寮に帰り、寮監に怒られ、事情を聞かれてもスラムでの事なのでどこまで言っても良いか分からず、その尋常でない雰囲気から寮監に早く休むように言われて部屋に戻って来た。


もう夜ご飯の時間も終わっていて、でもお腹はあまり空かない。


「どうしたの!?顔が真っ青よ!どこか具合でも悪いの?」


と、カトレアが心配してくれたけど、それに応じる気力も無くてそのままベッドに倒れ込むようにして寝てしまった。




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