2 寮
寮に入る前に、食堂に移動して学食の説明が行われて、そのままそこでお昼ご飯を食べた。
なんとバイキング形式で取り放題だと言う。しかもかなりの種類があり、量も皆がたくさん食べても十分なほどあり、この間とは打って変わって500エルでこれは安い!と思った。
ハンナ姉の結婚式以来でたらふく食べて満足した所で、新寮生が呼ばれてそのまま学園の敷地内の寮に案内された。
「こちらが男子寮、こちらが女子寮になります。異なる寮には互いに出入り禁止です。不必要に近づく事もしないように。」
男子寮と女子寮はかなり離れていて、それでもなお警備が多い印象を受ける。やはり貴族の子女も預かる寮としては、万が一にも何か起こらないように細心の注意を払わなければいけないのだろう。
ここからは男性寮の寮監と、女性寮の寮監がそれぞれ案内してくれる。玄関から入ってすぐの所がロビーになっていて、布張りの椅子やソファ、ローテーブルなどがいくつか置かれていて、寮生が自由にくつろいでいる。その横に繋がる部屋は自習室になっていた。戻ってさらに進むと、二人部屋の寮室がずらりと並び、階段を上がった二階には個室があるのだと言う。
平民は大抵二人部屋を使うので二階には行かず、先に割り当てられた部屋に入る事になった。
自分の部屋にたどり着き、パッと顔を上げたら同じ扉を見ていた子と目が合った。
「…もしかして、あなたもこの部屋ですか?」
「そうです。これからよろしくお願いしますね。」
「うん!よろしく!」
これから三年間一緒に生活する相手と握手を交わして、ひとまず部屋に入った。
「私はカトレアといいます。医者の家の子で医療学校に進学する為にこの学園に入学しました。」
燃えるような赤髪の凛々しい女の子だ。動くたびに僅かにおさげが揺れる。
「私はクオルフです!家の方針で幼い頃からこの寮のように同年齢の子と共同生活をしていました。今は診療所の医師の助手として学びながら、同じく医療学校に進学する予定です。」
うーん。この説明だと多分孤児院出身だと思われそうだけど、仕方無いか。あんまり嘘ばっかりついてボロが出ても困るし。
「あら…そうなの。学費無料はありがたいわよね。家は兄弟が多いから中々大変で。」
「そうだよね!ほんと助かるわ。」
そう。この子…カトレアもまた、入学試験上位五位以内の特待生なのだ。バッチの色は銀だから、多分二位なのかな?成績順に部屋が割り当てられたのかもしれない。
その後は入試で難しかった問題や、国王の名前についての苦労話や密かな文句で盛り上がった。
寮での夜ご飯の前に校門前で一度ハンス兄と落ち合って、寮の感想や相部屋の子と仲良くやれそうかなどを報告してまた別れた。その際、かなり興奮気味に給食の素晴らしさを語っておいた。
話が終わったら門限を破る前にすぐに寮に戻り、カトレアと共に食事を取った。そんなに食べるの!?と驚かれたけど、人の目を気にしてやめられる程に良い育ち方はしていない。
スラムでは食べられる時に食べるのが基本だと教えてあげたくなっても、面倒な事態を避ける為に出来るだけスラムの住人である事は伏せなければならない。
それがスラムを否定されているようで、少しだけ悲しかった。




