1 入学式
入学式の日。
診療所に集まったギャングの皆さんに見送られて、学園には保護者としてハンス兄について来て貰った。
まずは入試の時の教室に通され、少しして用意が整ってから学園の広い講堂に入場する事になった。まずは貴族が爵位の順に列を作って進み、続いて平民が試験の結果順に進む事になっている。
平民の先頭で、前の貴族が減って行くのをドキドキと眺めながらササッと髪型と服装を整える。今日はあんちゃんにまた新しく買って貰った、爽やかな水色のワンピースだ。不思議の国のアリスのようで可愛らしい。
間もなく順番が回って来て、拍手に迎えられて講堂内を進む。右側の席に貴族が座り、私は左の平民側の最前列の右端の席に座る。最後の平民が着席して、入学式が始まった。
「推薦入学生七十三名、一般入学生五十名、総勢百二十三名の入学を認めます。異議が無ければ拍手でお答え下さい。…ありがとうございます。ここに第六十四期入学生が認められました。」
推薦入学生=貴族だ。一般入学生は平民。
私達の入学は会場中の拍手によって承認され、続いて学長先生が壇上に上がる。
「今日、みなさんは栄えある入学の日を迎えました。百二十三名の新入生の皆さん、父兄の皆さん、ご入学おめでとうございます。知っての通りこの学園は三代前の国王陛下が創立された由緒正しき学び舎です。皆さんも陛下の名を穢さぬ様、学業に励み日々精進するように。」
あ、陛下の名前と聞いた途端、受験組の平民達が一斉に嘆息した。もちろん私もその一人だ。受験組は皆あのクソ長ったらしい名前に苦心させられたのだと思うと、少し一体感を感じる。
「在校生代表、生徒会会長のフィランダーです。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生を代表して、歓迎の意を表したいと思います。ここからの五年間、悔いのない学園生活を送れるように頑張って下さい。皆さんのご活躍を期待しています。」
在校生代表の挨拶が終わればとうとう私の番だ。呼ばれて壇上に上がって礼をする。ちなみに推薦入学生の代表が先に挨拶してから私だ。場馴れしてないから見劣りしそうで怖いな。…貴族の中で一番爵位の高い家の子が一歩前に出て挨拶を始めた。
「本日、私たちは王立学園の入学式を迎えることとなりました。本日はこのような立派な入学式を行っていただき大変感謝しています。勉学に励むことはもちろん、貴族の子弟が一同に会するこの貴重な機会に社交にも精を出したいと思っております。先生方におかれましては、これから厳しいご指導のほどよろしくお願いします。」
ふぅ…深呼吸して!大丈夫!今は漫然と生きてた前世とは違う。お父様とお母様の子、たくさんの兄弟がいて、期待してくれる大人もいるクオルフだ!ギャング会議ならぬ代表挨拶会議で一緒にたくさん文章を考えて貰ったんだ!その恩に報いる為にもせめて失敗はしないようにしなきゃ!
「同じく新入生代表、クオルフです。私達にはこれから、これまでとはまったく違った日々が待っています。不安もありますがどんな毎日が待っているのだろうと期待もあります。私達の多くは三年で卒業し、他の学校に行く事になりますが、だからといって勉学にも学友との交流にも手を抜くつもりはありません。悔いのない学園生活が送れ、将来に向けて必要な行動が取れるよう自分自身を向上させていきたいと思います。どうか温かく迎え入れて頂けますようお願いいたします。」
良かった…!噛まずにちゃんとセリフ通り言えた!盛大な拍手を貰ってそのまま新入生は退場する。
最初の教室に戻って制服販売が行われた。ちなみに保護者として入学式に参列してくれていたハンス兄も一緒だ。私は特待生特典で制服は無料で支給されるけど、他の人は買う事になるからね。
合格発表の日に貰った、一位の特待生の証の金色のピンバッチを見せて、身長がもっと伸びる事を想定して大体サイズが合うけれど少し大きめの制服を受け取った。胸元にピンバッチを止めたら完成だ。
ちなみに制服は義務として上着は羽織らなければいけないけど、その他は任意購入、任意着用だ。まあ私は毎日着られるほどの量の服を持っていないので必然的に全身制服にはなるけど。
制服は紺色で「ダサい」と教室の中でも評判になっている。平民と言っても役人や医者の子や商人などの富裕層がほとんどだから、上着だけを購入する者が圧倒的に多い。私はそこまでダサいとも思わないし、制服なら毎日服を変えなくて良いから買ったとしても安く済むと思うんだけどね。
ちなみに私がこの日支給して貰った物品はこうだ。
・制服(紺色の夏・冬上着、夏・冬ワンピース、白の靴下。黒に塗装済みの革靴)をそれぞれ二つずつ。
・インク5壺、ペン2本、紙50枚。
文房具に関しては、金銭の支払いが無い分他の生徒より速く制服を貰い終わった後にささっと購買に行って貰って来た。ピンバッチ見ると何も言わなくてもすぐに出してくれるから楽で良いわ〜!
とりあえずここで一旦ハンス兄には帰って貰って、私は午後から寮に入る事になる。ひげ爺にお祝いに貰った鞄に諸々の物をしまって、担ぐ。少し重くてふらついたけど、両手が空くから何かと便利だ。
…ちなみにこれ。鏡代わりに水面に写る姿を見てみたら、思いっ切りランドセルだったのよね、見た目が。
色は地味な革本来の茶色なんだけどね。




