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6 適性検査

しばらく悲しみに暮れていた私だが、ナニーが励ましてくれ、お母様の分もお母さんをしてくれた。

少しずつお母様がいない事に慣れ、落ち着いてきたとき珍しくお父様に呼ばれた。


なんの用だろう?


「お前いくつになった?」


何それ、娘の歳も覚えてないわけ?


「…三歳です、お父様。」


お母様がいなくなったあの時から私はこの人の事、嫌いから憎いになった。今だって、腸は煮えくり返っているし、きっとこれからもこの人に会う度にこんな気持ちになるのだろう。


「なら、そろそろ適性検査だな。来なさい。」


「…何をするのですか?」


何するか分からない男だ。警戒し、精一杯睨んでやる。


「適性検査だ。いいから黙って来なさい。」


少し苛ついている。

さすがにそろそろ殴られるか。行こう。


「これを咥えてしばらくじっとしていなさい。」


そう言って、口に突っ込まれたのは鈍い色の金属の角棒。

頭にはずっしりと重い輪っかが乗せられる。


三十秒ほど経った頃


頭の輪っかがピカッと光って、口の棒には色がつく。

水色と虹色と透明


透明って何言ってんのって思うかもしれないけどほんとに透明。

金属の棒が透き通ってやんの。


で、ちょっとだけ、安心したようにお父様が息を吐いてその棒を何か装置にセットする。頭の奴はまだつけられたままだ。


重い沈黙の支配する中一分ほど経った後、装置から紙が出てきた。何か黒いペンで書かれたそれを、じっと見たお父様は大きな大きなため息を吐いて一言。


「役立たず。」


そう呟いて、くしゃくしゃにした紙を投げつけた。拾って見ると、そこには名前と年齢、そしてギフトが書かれていた。


ギフト 除菌・除去

    水

    小さくして、もとに戻せる


へえ。この装置でギフトが分かるんだ…詳細な情報は載ってないみたいだけど。


次にお父様は、ピカッと光った頭の輪っかを取って機械にセットした。一瞬殴られるのかと思ってビクッとした。

フンッ 鼻で笑われた。


また、一分ほど経って機械から紙が出てきた。


「これは…!なかなかだな。……うむ。

 さすがは俺の娘といったところか。」


びっ、、、、くりしたぁっ!

この男が!自分で私の事を娘だなんて!青天の霹靂かしら。


「ふんっ…俺はハーフエルフだからな。」


目をまん丸くして見つめる私に、お父様は居心地悪そうに言う。

そっか。そういえば、お父様はハーフエルフだった。お母様は胸があるもの。…お母様。またお母様の胸に抱きしめられたい。


「お父様、私すごい?えらいでしょ?もっとほめて。」


…こんな父親でもたまに、そう例えばこんな時には

少しばかり甘えたくなる。期待してしまう。


「ふんっ、だが、グズギフトだけだ。魔力が高いのも俺のおかげ。お前は俺に感謝して大人しくしていればいい。」


「…もういい。」


思わず泣きそうな顔になった。


「…ほら、見ろ。これが今のお前の魔力だ。」


そう言って今度はちゃんと差し出してきた。くしゃくしゃにせずに。ずいぶんとぶっきらぼうではあったが。


その紙には、やはり名前と年齢、そして魔力値が書いてあった。


魔力量    中(上)

親和性    強(上)

濃さ     濃(中)

スキル取得率 高(中)


「お父様、このかっこの中の、上とか中は何?」


「…それは、例えば魔力量や親和性なら中や強でも上の方。

 魔力の濃さや魔法関連のスキルの取得確率なら、濃くて高いなかの中くらい。

 …というように、この適性検査の評価は、九段階に別れている。

 一番低評価は、弱や薄、低の下。

 一番高評価は、強や濃、高の上だ。…分かったか?」


矢継ぎ早の説明に理解しようと、表情を作るのを忘れポカンとしていた私に冷たい視線を浴びせるお父様。


「…はい。分かりました。それでお父様、私の評価はどうですか?」


「…魔力量ならクォーターエルフなら普通だが、子供の内はもっと伸びる。」


少し期待したが、普通の範囲からは外れていないみたい。…残念。

でも、子どもの内はもっと伸びるんなら、すぐに普通のクォーターエルフなんて抜いちゃうよね。楽しみだな。


「嬉しいです。がんばります。」


「…せいぜい、励め。」


そう言って、用は済んだとばかりにつかつかと歩き去ろうとするお父様。こちらも黙って見送ろうと思ったが思い出した。


「あ、ちょっと待って!」


「…言葉が乱れているぞ。」


重々しく立ち止まってくれたお父様は一言余計だ。このくらい見逃せ。


「少々お待ちになって。お父様。…これでいいかしら?」


皮肉を込めて言い返してやると鼻を鳴らされた。お父様の癖なのかもしれない。


「まあいい。それでなんだ?私はお前のお祖父様に結果を知らせて来なくてはならない。」


「え?」


お祖父様なんて初めて聞いた。会った事も無い。正直存在している事に驚いた。隠居でもしているのだろうか。


「…良かったな。まだしばらくはこの屋敷にいられるぞ。この結果なら俺も後妻を娶らずに済むかもしれん。」


私、この結果次第でここを出されてたんだ。お母様みたいに…

お父様の意外な言葉に、つい本音を漏らしてしまった。


「え、だって、お母様を追い出したのはお父様なのに…」


「………やはり恨んでいるか。」


ため息を吐きながら問いかけるお父様にびっくりした。

こんな、私の目を見て語りかけるような人では無かったのに!

どういう事!?これって夢かしら。


「ご、ごめんなさい。」


頭が混乱中で、素直に謝ってしまった。これじゃ恨んでるって言うのと一緒じゃない!


「…やはりか。娘よ、だが、私とて望んでやったわけでは無い。それなりに彼女の事は愛していた。」


そん…な事、にわかに言われても…


「信じられないだろうが、私はお前が女でも別に良かった。

…ただ、我が父上はそれを許されない。私もまた、過去の記憶からついお前たちに辛く当たってしまった。…すまない。」


頭こそ下げないものの、それは心底後悔している様な顔だった。

私はもう、どうすればいいか分からなかった。


お母様を追い出した事も、お母様に辛く当たった事も、怒りに任せて私を殴った事も許せない。


だけど、この小さな男が少しだけ哀れに見えた。


「…分かった。お父様の気持ちは理解した。でも、許せるかどうかは別。…お母様はもう帰ってこない。」


「…すまない。寂しい思いをさせたな。俺の事を憎めばいい。憎んで嫌って恨んで、でも他の者を、憎むなよ。お前は一つも悪くない。」


ツーっと。涙が頬を伝った。

認められた、気がした。

お母様の、お父様に私を愛して欲しいという気持ちが報われた。

…気がした。


無性にお母様に会いたい。

会って伝えたい。

ついに、お父様がデレたよって!

お母様喜ぶだろうな。

笑って、偉いね。凄いね。クオルフは世界一可愛い自慢の娘よ。って、言ってくれたら嬉しいな。


涙がどんどんどんどんどんどん出てきて止まらない。


お父様がハンカチで涙を拭ってくれた。

…お母様が刺繍した薔薇のハンカチだった。

私もほんの少しだけ手伝った…

ほとんどお母様がしている様なモノだったけれど。


使ってくれていた事が無性に嬉しい。

憎いけれど、まだ恨みが消えたわけじゃないけれど、初めてお父様の事を愛してるって思った。





中のゲシュタルト崩壊起こした…


六段階じゃなくて、九段階だった〜!(*_*)

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